怪10
「で、協力してくれるの?」
ひとしきり、涙を流すアメリアに付き合ってくれた花子に問われて、アメリアは考え込んだ。
立場上、アメリアは自分の意志で勝手なことをしてはならない。常に公爵である父のお伺いを立ててその命令通りに動くべきだ。
だけど。
これまでずっと命令通りにしてきた。それで、得られたものは何もないではないか。
どうせ、もうアメリアは使い物にならないのだ。何も出来ることはない。この世界に、もうアメリアは必要とされない。アメリアに残された未来など、修道院へ送られるか、誰かの後妻にされるかだ。
だったら、それまでの間ぐらい、アメリアの好きにしてもいいのではないか。
これまでは、家のため、王太子のため、国のため、民のためにしか生きてこなかった。それはアメリアの義務であって、アメリアの意志ではなかった。いわば、強制されたものであったそれらと、花子のお願いはまったく違う。
花子は、アメリアに「やれ」ではなく「してほしい」と頼んでいる。アメリアに、選ばせてくれている。
(こんなわたくしにも、出来ることがあるのなら……)
アメリアは涙を拭った。
(わたくしを頼ってくださった花子さんのお役に立ちたい。花子さんが無事に日本のトイレへ帰れるように)
アメリアは決意を固めた。
「わかりました。わたくし、花子さんが日本のトイレへ帰るために、協力しますわ。ーーそして、わたくしもあなたと一緒に日本へ行く!」
「ほんと?」
花子はぱあっと顔を輝かせた。
「やったー! ありがとう!」
「と、言いましても、わたくしが役に立てるのでしょうか? 捕まえる、と言っても、わたくしの腕力では……」
「あ、安心して。力仕事させようって訳じゃないのよ。ただ、あたしの仲間達って基本的に人を驚かせるのがアイデンティティだからさぁ。あんたには彼らをおびき寄せる餌になってもらいたいのよ」
花子が言うには、都市伝説の主達の活動時間は主に黄昏時。花子のように学園に出没する者も多く、十代の少年少女を狙うことが多いらしい。
「餌……つまり、わたくしは囮役という訳ですね」
アメリアは拳を握りしめて力強く宣言した。
「お任せください! 立派に囮になってみせますわ!」




