プロローグ
ある日、一人の女性が針仕事をしていた。
大きな黒壇の窓枠のある薄暗い部屋。
小さなテーブルとイスだけの殺風景な部屋に、
黒いローブで身を包んだ女性が座っている。
「あら、雪だわ。」
女性が窓の外をみようと、体を起こすと右手に激痛が走った。
「・・・切ってしまったわ。」
指先から出たばかりの鮮血は、鮮やかな朱色。
「綺麗ね。」
女性は、しばらく自身の指先を眺めていた。
やがて手に持った裁縫道具をテーブルに置き、黒壇の窓に近づいた。
女性はお腹に手を回し、歌うように語りかける。
「この雪のように白く、
この血のように赤く、
この窓枠のように真っ黒な子供でありますように。」
女性が優しくお腹を撫でる姿は、まるで聖母そのもの。
「あたしの可愛い子供、エリザベット。どうか、あなたの人生に幸あらんことを。」
その年の雪解け、とある国の侯爵家に容貌の優れた娘が誕生する。
彼女の母が願った通り、
雪のように白い肌、血のように赤い頬や唇、黒檀の窓枠の木のように黒い髪を持つ娘。
人々はその姿から、御伽噺に出てくる「白雪姫」ようだと、口々に褒め称えていた。
彼女の名前は、エリザベット・ロチュス・トランティニャン。
トランティニャン侯爵家の一人娘。
やがて、彼女のもとには、7人の小人と白馬に乗った王子様が現れる。
これは、とある小さな国のお話。
初投稿です。緊張しますね。