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8話 王都探索

 神殿に生活の拠点を移してから数日がたった。

 巫女様みたいなことするのかと思ったのだが、現在は預かりの身ということなので、普段は朝の掃除とお祈りだけ済ませたら自由行動できるらしい。


 しかし、この自由行動がクセ者だ。

 ほぼ軟禁状態で敷地内から出ることができない。無理矢理外出しようとした時には、神官や巫女が自分達が罰せられるからと泣いて縋られた。

 国王の勅命とのことなので、神官達がどうこうできる問題ではない。

 あまり迷惑をかけるのも悪いので数日我慢した。


 しかし、私も本当の自由が欲しい。こんな軟禁生活を長く続けるなんてできない。

 待遇改善を図るべく、ゼフュール王に嘆願書を書いて神殿長にお渡しした。


 これで少しは考えてくれるはず。

 何せあの王様、ヴォルフと話しをしたあと、なぜか私にまで対外的な不満や国王としての悩みごとを相談してきたのだ。

 全くヴォルフに相談してる姿なんて、待てを言い渡されてる犬みたいにみえるんだよ、人間と犬、いや、狼が逆転してるんだけどね。

 ヴォルフと話しをしてるのが王様ばかりだな、と思って聞いたら、直系にしか使えない技なんだそうだ。しかもこの心話ってヤツは私のヴォルフに大量の魔力を消費させるらしい。おいおい、そんなに負担を強いるなんて聞いてないから。ヴォルフも適当にあしらっておけばいいのに、親身になって話してるみたいだよ。本当に人がいい、違うな、狼がいいんだから。


 二日ばかりいろんな話しを聞いたりアドバイスしているうちに、私とヴォルフ、すっかり茶飲み仲間認定されてしまいましたよ。


 こんな繋がりもできたので、多少の便宜を図ってもらえるかな、と。


 何日か間を置いて、私が外出できる許可がおりた、と神殿長から伝えられた。

 一人でも出歩けるようになるには、本来、護りのペンダントが必要だと言うことだが、まだそれに相当する魔石が準備できていないということで、当分の間、アルが私の外出に同行するのだそうだ。


 ……私ってそんなに要重要人物なんかな……


 次の日、朝のお祈りが終わって少しした頃アルがやってきた。街の男の子達がよく着ている服に身を包んでる。

 仏頂面を隠しもせずに、私に町娘風の服一式を手渡し「着替えろ」と言ってきた。


 軽く首を傾けながらアルを見遣ると、

「全く……オレは使いっ走りか。こんな扱い初めてだぞ。とりあえずセレス叔父上が戻るまでは魔石の準備が間に合わないからオレが同行する。とんだとばっちりだ……」


 とブツブツと言われた。


「街出たいんだろ? 案内してやるから早く。行きたい所考えとけよ?」

「うん! 待ってて!」


 急いで着替えてアルの前でくるりと回ってみた。


「どう?」

「……悪くない……」

「素直に可愛い、って言って!」


 ちょっと横向いて目元が赤くなるあたり、可愛いよね。

 ふっふっふっ。前人生と合わせても完全にお姉さんな私が目一杯いじってやろう。



 どこに行きたいかと言われたが、見たこともない場所だし検討もつかない。真っ先にルークとヴォルフに会いたかったが、セレスティアル様が不在の屋敷に伺うのも良くないと考えて、アルお勧めスポットに案内してもらうことにした。


「ここが一番の大通り?」

「そうだ、結構いろんな店があるだろ?」

「そうだね。でも出入りしている人があまり居ないみたい」

「うむ。この国の活性化が今一番の悩みどこなのだ」


 確かに全体的に活気があまり感じられないのだ。ふ〜む。お金が不足してる訳でも無さ気だから、目新しい商品か何かあれば変わりそうなんだが……

 ……あとで考えてみよう。要は切っ掛けだよね。とりあえず情報収集から。


「まずは情報収集と言ったら酒場でしょう!」


 元気な声で手を上げたら思いっきりおでこを小突かれた……何故


「何を考えてるんだお前は。オレ達で入れる訳ないだろうが」


 おでこをさすりながら、「やっぱダメか」と呟いた。憧れなんだけどなぁ。西部劇みたいに扉をバーンと開けて入るヤツ。

 も少し大きくなったら実行だ。頭のメモ帳に書いとこ。


 しばらく歩いてから、果物屋さんに併設のジューススタンドでジュースを買ってもらって小休憩をとる。

 ……私お金持ってなかった……


「ねぇアル、私にもお金稼ぐ方法あるかな?」

「お前には国から保護費が出るはずだから、稼がなくても平気だろ?」

「えーー。働かざる者食うべからず、だよ。何かお仕事しなきゃ」

「うーん……そう言われてもなぁ。叔父上が戻られたら相談しようぜ。父上はヤメとけ、当てにならない」


 しかし使えるお金がないと動きが制限されるなぁ、と思ってたら、後で王宮から少しばかり融通できないか話しをしてもらうことになった。ありがとアル、面倒かけるね。


 大通りから一本外れると、あまり歳のいってない子供達がグループを作って話してたりするのがみえた。この年代の子達の話しも興味があったので、そっちに行こうとしたら、アルに肩を掴まれた。


「やめとけ。余所者はあまり受け入れない連中が多いからな」

「あの子達、日中は何やってるのかな?」

「小遣い稼ぎの配達や荷運び、ゴミ出しや子守とかかな」

「ふーん。ある程度大きくなったら?」

「大半は親や知り合いの職業を引き継ぐ。職人なら職人、商人なら商人」

「新しいこと始めるならどうすればいい?」

「職人ギルドや商人ギルドに事業登録すればやれるだろ。店開いて売ってるもの登録して、ギルドに金納めて会合に参加すれば立派な商人だ」

「そっか、わかった。私、商人になるよ」


 阿呆、と軽く小突かれる。ここ何年も新しい商売は見た事がないという。成人ならまだしも、年端もいかない、しかも女の子は絶対に受け入れられない、と言われた。


 確かに。

 商売は大人のものっていう固定観念あるよね。

 まぁ、私が表立ってやらなくても成り立つだろうし、その時がくれば協力者が増えてるだろう。いや、増やさねば。

 まずは街に馴染まないとね。

 しばらく大通りの入りやすい店探して情報収集かしら。


 そんなことを考えながら街の散策が続き、中央広場の噴水前で座りながら往き交う人を観察したりして、久しぶりに外の空気を満喫した。


「ん!」


 アルが無言で何かを握って差し出してきた。軽く顎に手をあて、覗き込んだら、徐に手のひらを上にして開いて見せた。

 中にはとても可愛いブローチが載っていた。


「うわぁ、かっわいい。どうしたの、これ?」

「やる」

「へっ?」

「母上が女の子には何かプレゼントするものだと言ったからな、それだけだぞ!」


 ちょっと照れてそっぽを向きながら手だけだしてるアルに、私も笑みがこぼれる。


 有難くいただいておこう。「付けて」と言ったらまた小突かれた。痛たたた……


 すぐ先にある小高い丘にも連れて行ってもらった。日が傾きかけてきたので、そろそろ帰る準備をしていたら、アルが手招きして私を呼ぶ。

 何事かと思い、そこまで行くと、柵ギリギリの高台のところから街並みが一望できるようになっていた。


「きゃあ、すっごく素敵。きれいだねぇ」

「ここが一番のお勧めだ」


 夕陽を受けて遠くまできれいに映える。

 感慨深気にしばらく眺めてると、


「この風景を護るのが王族だとセレス叔父上に言われた。私は兄上と共により街を大きく発展させたいと考えている」


 頰を上気させ、目をキラキラさせるアルがすごく眩しくみえる。男の子の夢とロマンを感じるよ。

 アルも上に立つ者として、結構考えて生きているんだね。昔の私の傍観者のような人生とは真逆の考えに、思わず感動してしまう。

 私もこの国に縁づいた身として、微力ながら協力していこうかな、と思いながら帰途に着いた。



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