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27話 支店を出すぞ!

 セレス様とヴォルフの話しをしている最中にリアン様もお部屋にやってきた。


「アリス、今回のことは本当に申し訳ありません、私が注意を怠ったばかりにヴォルフ殿に手傷を負わせてしまった。詫びの仕様もないくらいです」


 頭を下げ、恐縮するリアン様の肩にそっと手を置いて安心させるように話しかけた。


「私もヴォルフも大丈夫です。ヴォルフは私の保護者通り越してもはや神的存在なんですから、たかが負傷くらいじゃ何ともなりませんって。私にだって、心強い騎士様達が常に護ってくれるんでしょう?」


 泣きそうになっているリアン様に軽くウィンクしてリラックスさせる。

 リアン様も笑顔で「ヴォルフ殿が戻るまでは必ず」と答えてくれた。


 朝から襲撃への対応でピリピリしていた空気を和らげるために、クロエさんにお茶を淹れてもらう。三人でひと息ついてから、魔石のことや街の様子、その他の出来事などを詳しく聞いた。


 森にあった魔石は真っ赤な色をしていて、異様な輝きを放っていたそうだ。本来、魔力は人間では感じとれないのだが、そこからは何らかの力が溢れているように感じたらしい。

 この力に関しては、森にいた討伐隊の全員が感じとれたようで、魔石研究の一環として調査されることになるとのことだ。


 そしてリアン様が体験したことだが、魔石の塊を神殿に持って行ってから、地下の泉に漬けた途端に色を無くしてしまったのだそうだ。今はバクスター様が引きとって魔力研究の材料になっている。


 バクスター様といえば、ヴォルフが怪我を負った際に、癒しの魔石を大量投入して回復に協力してくれたらしい。表面の傷口を塞ぐだけでも本来の身体に戻るのが格段に速くなると聞いたので、後でお礼を言いに行こう。

 癒しの魔石を作れるのはほんのわずかな人達に限られているので、大量投入など普通は行わないそうだ。重ね重ねバクスター様には感謝せねば。


 熊も狼も、普段王都の森近くではなく、地方領地の外れの辺りに生息している生き物だ。

 それが、タイミングを合わせたように大量発生しているので、何らかの悪意の下に騒ぎが起こされていたのではないか、というのがセレス様の意見だ。

 リアン様も同様な見解らしく、大きく頷いている。


 森から街に移動してきた赤い目の狼の集団は街の人達にかなりの被害を与えたようだ。

 大半が仕事をしている時間だったので、休みの人やおつかいを頼まれた子供達が怪我を負っている。塾に来てる子達も例外ではなく、姿をみせない子が何人もいるらしい。

 これはアニー様情報をフィリップ王子から聞いた。

 塾通いの子供自身が無事でも親や兄弟が怪我をした、という人も多く、手当やら介抱やらで元の街に戻るまでざわつきが絶えないかも知れない。



 数日がたち、襲撃に対する事後処理が終わり、街も少しずつ元の静けさを取り戻しつつあった。

 お店の経営が心配なので、セレス様に窮状を訴えたら、眉間をグリグリしながらしばらく考え込み、最終的に王宮かセレス様宅から通う権利を獲得した。

 付き添いにはリアン様が必ず同行するのが条件だったので、王宮から週に一、二度顔出して確認する程度にした。

 従業員の中のポーターの子が帳簿の扱いを覚えてくれたので、こちらもお任せすることで折り合いがついた。最終管理者はデールさんにお任せだ。子供達ばかりだと不安だからね。


 そんな手続きをして何日か過ぎた頃、お店に私宛ての手紙が一通届いた。

 中身はアドラー領主様からで、簡単にまとめると、アドラー領内に『ライトミール』の支店を出せないかの相談だった。


 おおっ。ついにうちの店も地方領主様に認められた!


「リアン様っ、支店出していいですよねっ。アドラー領のどこに出すかなぁ。楽しみですよね〜」

「アリス、まだ出店できるかわからないのですからね。あまり先走らないように。まずはセレス様に相談しましょう」


 せっかく全面賛同してもらえると思ってたのに、釘を刺されてしまった。ガッカリ顔をして口を尖らせていたら「たぶん大丈夫ですよ」とニッコリ笑って言ってもらえた。

 ちょっとご機嫌になって、王宮に戻る途中で出店について相談する時間をとってもらえるように、セレス様への面会予約をお願いした。


「ふむ、最初に支店の名乗りを上げるのはクロランダかと思ったが、アドラーが動いたか……」


 セレス様に相談するために、というより許可待ちのために執務室にお邪魔している。


「出店するには環境も整っているし、向こうが出資も請け負うとのことらしいが……」


 どうしたんだろう、珍しく判断に迷ってるみたい。特に問題ないみたいなんだけど?

 観光や避暑で使う土地ならばお菓子は軽食やお土産になるし、美容液も売れるはず。

 なぜ渋るのか聞いてみると、


「アドラーは金の動きに敏感なのだ。元々商売が上手いからな。商売で確実に利益を出すが、領民にあまり還元されていない。大半を自分の懐に入れてしまうので、もう少し利益配分を考えるように意見したことがあったのだ」

「つまり欲深いってことですね?」

「平たく言うとそうなる。出資を理由にいずれ無理難題を要求されないかが心配なのでね」

「大丈夫ですよ。無理なことを言われないように後見人様やら騎士様やらが見張っててくれるんでしょう?」


 セレス様とリアン様が顔を見合わせて、苦笑混じりのため息をつきながら、叶わない、というポーズで私に向き直る。

 決まりだね、早速細かい内容を検討しなきゃ。



「はじめまして、私アドラー領内を任されております、モーリス・アドラーと申します」

「はじめまして、アリスです。支店のお話し、ありがとうございます」


 軽く挨拶を済ませ、細かい内容を確認し合った。

 料理人はデールさんとルイライを出す予定。

 王都のお店にはまた少し職人を補充しないといけないかしらね。

 デールさんには支店管理もお願いするつもり。ルイライコンビはもうすぐ成人だから、大人と一緒なら移動でも大丈夫なように親から承諾をもらった。いずれは料理と店管理を二人に任せられるように、今から鍛えてもらうのだ。ポーターは現地で雇うのがいいと決まった。

 お店のフロアはこんな感じで、オーブン二台とキッチン周りはこんな感じ。火の魔石を使うから、魔石屋さんが近くにないと不安だな、と聞いたら大通りに店を配置するから魔石屋もすぐなんですって。


 この支店を軌道に乗せたら、隣にイートインスペースを開きたいのもお話しして、隣の建物も購入して、テーブルと椅子も後から手配してもらえるようにした。


 初期投資に結構値が張るので、心配して聞いてみたら、出資はアドラー側で調整するので、問題ないと言われた。なんて心強いんでしょ!

 ダンディなおじ様だし、ちょっとした息抜きのお話しもウィットに富んで、とても話しやすい。

 もう、私が年頃でモーリス様がもうちょい若かったら、絶対付き合ってると思うよ。惚れちゃうでしょ〜


 だいたい話し終わり、最後に私から、


「支店が完成したら、すぐにお店が開けるように準備しますね。モーリス様のためにも頑張ります」

「ははは、アリス様の張り切りに負けないように、こちらも頑張ります。このモーリスにお任せ下さい」


 いい交わしながら握手した。

 ん? 長い、なかなか離してくれない。

 添えた手をスリスリしてるし……

 握手を見てると、


「ああ、申し訳ございません。美容液も使ってらっしゃるのかと思って。効果を宣伝するためにも感触を確かめておきたかったものですから」

「……そうなんですか。お土産にお持ち帰り下さいませ。お知り合いにも是非試していただかないとね」


 びっくりした。ロリ趣味かと思ったよ。

 営業用に持っていた一本を手渡し、さよならした。早く支店が出来るといいな。


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