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20話 追加面接と休日の過ごし方

 リックと追加面接の約束をしてからの、安息日が過ぎた次の日になった。いわゆる面接日当日だ。

 私は仕事始まりの鐘の前に店から顔を出してみた。

 今日面接予定の五人のうち、三人は店の前にいた。とりあえず鐘まで待ったが二人は来ていない。つまり、不合格。

 仕事に遅れるなんて論外だからね、せめて初日くらい鐘が鳴る少し前に来るべきだったでしょう、残念。


 残りの三人を順番に面接する。

 一人目はポーター希望。仕事内容を説明して、就業時間と査定の話しをしたら、辞めると言い出した。うちで働くならダラダラできないからね、残念。

 二人目は料理人希望。まずは道具の使い方を覚えて、下準備のお仕事になると説明したら必死そうな目をして「構わない」と言ってきた。やる気があるので試用期間の様子見をしようかな、採用だ。

 三人目はポーター希望。お菓子は食べられないとわかったら帰ると言った。何だよ、お菓子目当てかい、論外じゃ。


 以上で今日の面接終わり。次の安息日が来るまでは、こういう面接が続くのだろうか、ああ、疲れるよう。

 やはり表面だけで判断する人が多いのかな?

 子供達からみたうちの店の印象がこれならば、大人からみた店のイメージはどんなだろう。富豪相手に営業している子供ってうつっちゃうのかなぁ……

 あんまりいい印象が持たれてなさ気な予感に、アリスちゃんの小さなハートがしおれそうですよ。くすん。

新しい商売人っていうのは、既存の商売人からはうとまれる存在だってのはわかってるんだけどね。やっぱり一人でも多くの人に認めて欲しいと思うのは私のエゴだろうか?


 体力的というより精神的疲労が溜まる。モフモフを充電しにヴォルフに抱きつきに行こうっと。


 ひとしきりモフモフタイムを満喫して、お店のみんなに連絡する。来週から新しい料理人が一人増えること。まだ増えると思うが確実なのは、今のところその一人だと伝えた。


 そして、新商品は『チーズタルト』にする、と宣言する。

 タルト生地はクッキーを作り慣れたうちの料理人達にはあっさり出来ると期待している。

 じゃがいもの料理も考えているのだが、片栗粉作りだけにしておいて、時間差で新商品として提示していきたい。

 片栗粉は作りおいても平気だから、新人の作業にしようかな。別メニューで、きな粉が欲しいところだが、今は我慢の時期。場所や人数増やしてから作るとしよう。


 毎日の面接を重ね、安息日が来た。結局明日以降の面接はなくなった。初日に面接予定だった二人が間に合わなかったら失格とか、見た目程楽な仕事でないとの噂が広がり、徐々に面接希望者が減って、最終日には三人の面接で終わった。


 試用までに至った人は全部で六人。料理人見習いが四人、ポーター見習いが二人だ。どの子もやる気はあるみたいなので、本人の努力次第で本採用まで頑張って欲しいものだ。



 久しぶりに予定もなく、ゆっくりとした休日が送れそうだ。朝のうちに身支度を済ませ、街へと出かけてみることにした。

 普段着を何着か購入し、ミラさんのジューススタンドに顔を出す。


「ミラさん、お久しぶりです。なかなかこちらに顔だせなくて。しかもお父さんにはうちのお店の負担をかけて申し訳ありません」

「うちの父は、今が一番楽しいって言ってるわ。やりたい仕事をして若い子を育てて。王宮にいた時よりもやりがいがあるみたくって、目がキラキラしてるのよ」

「キラキラしてるのはお父さんだけじゃないんじゃない? 聞きましたよ。カミュさんとご結婚されるとか」


 私がミラさんに突っ込みを入れると、頰を赤く染めて嬉しそうに答えてくれた。


「まだ具体的に決まった訳じゃないのよ。お父さんったら、あの方を気に入っちゃって、先へ先へと進めたがるの。でもあなたがここに来なかったら、なかった出会いですもの、ありがとう」


 クスクスと笑いながら私に感謝の言葉もくれる。うん、ミラさん可愛い。カミュさんより私が嫁にもらいたい。言ったら考えてくれるかな、ふふふ。


「ところでお母さんの病気は?」

「ええ、残念ながら三年前に亡くなったの。アリスちゃんのお店に行くまではお父さんも病人みたいだったわ。でも新しい目標ができたことで、やっと立ち直ってくれたみたい」

「ごめんなさい。悲しいこと思い出させちゃったかな」

「気にしないで。アリスちゃんには本当に感謝しかないの。今だって売り上げが順調に伸びてるのよ? アリスちゃんやカミュさんが宣伝してくれてるおかげよ」


 ありゃ、ミラさん家も苦労してたのね。これからは今までの分も合わせて幸せになってね。それから世間話しを少しして、さよならした。

 さて、次の目的は、何か商売に繋がるものがないかを探すことだ。


 大通りにはこの国で出回っている大抵のものが揃ってる。布、小物、食品など。見てるだけでも楽しいので、時間を潰すにはもってこいだ。

 各領地のアンテナショップみたいなところもあるから、特産品もわかるようになっている。この間アルから借りた本にもいろいろ書いてあったな。後で残りを読んでおこう。


 そう言えば、クロランダではブドウが採れたんだ。天然酵母が作れるかな。あれって雑菌が入るとすぐダメになったはずだけど。挑戦してみる価値はあるかしらね。

 近くにオリーブとかないかな、オリーブオイルあれば、料理の幅も広がるし、美容液も作れる。美容液なら絶対売れる!


 結果、街の散策で見つけたオリーブオイルとはちみつを購入。美容液作りを一度試してみよう。配合を考えながら暇つぶしに楽しもう。



「ヴォルフ〜。一緒にゴロゴロして〜」


 家に戻ってヴォルフに甘えながら、残りの時間はアルから貸してもらっていた本をじっくり読むことにした。


 私の前にこちら側に来た記憶持ちさんは、今から六代前の王の時代に存在したようだ。

 今のゼフュール王レオナルドは代替わりして間もないので、実質五代前のお話しになるみたい。



 『記憶持ち』は最初、エイキム領の花畑の近くの村に現れている。

 若い男の人で、鍛治の仕事をこの国に伝え、後に奥さんとなる人をゴードンの領地から迎えた。晩年はゴードンで 一緒に過ごしている。

 お酒が好きな人だったらしく、酒造りにも力を入れている。クロランダには酒造りの為に訪れ、ブドウ作りからワインの醸造まで、かなりの年月を費やしておこなっていたようだ。

 この人が生きていた最後の年に、王都の神殿で神託を受けてクロモント山に登ったと書いている。

 その後の記録がないことから、おそらくクロモント山で最期を迎えたのだろう。

 次の年から、彼に所縁のある土地の側にユリに似た花が群生するようになり、国中の人々の知るところとなった。


 親花についても記述があり、こう書かれている。 

 残された奥さんの夢に出てきた彼は「神殿の地下に湧く泉のほとりに三輪の花が咲くので輝き始めたら群生地に持っていくこと。群生地に持って行くとそこに咲いている花が変化するので、その変化した花を王へ献上すること。王や他の者の独占欲を感知しなければ毎年奇跡をもたらす花になること」以上のことを伝えたと言う。独占欲は人間の気から悪い波動を出すようで、親花の魔力に影響するらしい。


 その時代の王は、この夢の言葉通り変化した花を王都へ持ち帰った後、国民へと分配するような現在の配布方法を確立したらしい。

 一度、花を独り占めした領主がいたが、次の一年は花が咲かず、非難と責任の重さから自殺に追い込まれたとのこと。

 以来、花護衛隊が結成され、現在まで続く行事となっている。



 へぇ……この記憶持ちさんもアクティブな人生を生きていたようだね。

 私もいつか神託を受けてクロモント山に登るのだろうか。

 でも、神託受けて山登ったら死んじゃうんだよね。こりゃ神託こないでって言っといた方がいいのかねぇ。


 いろいろ思うところがあったが、例えいつ神託を受けようが、アリスの人生を全力で生きる、と決めたことに変わりない。

 自分ができることをやって、周りのみんなを笑顔にできれば満足のいく人生だったと言えるはず……と思いたい。


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