〜悪の種はチートで花開く〜#6
銀太とグロムの二人は村の門で足止めされていた。門前には門番が立ち、簡素な槍で門を封じていた。
「おい!開けろよ!前来た時は普通に倒れたじゃないか!」
グロムが少々苛つきながら怒鳴る。しかし、門番は通行証が無ければ通さない、通りたければ通行証を持ってこい、と言うだけだ。
「急に言われても困るんだよ!いつ通行証が必要だって決まったんだ!」
「一ヶ月前だ、とにかくお前らは通せない。さあ、回れ右!」
「一ヶ月前だぁ?他の村や町に通達すら来てないじゃないか!ふざけるなよ!」
グロムはしかめ面をし、その場に座り込んだ。どうやらテコでも動かなさそうだ。
「第一そんな乞食みたいなみすぼらしい奴を連れた人間を入れるわけないだろ」
門番は銀太を指差す。門番には汚れたシャツや破れたズボンから銀太が浮浪者に見えるようだ。
「お前俺の親友の事なんつった!!」
グロムは怒りを露わにし、ファイティングポーズをとった。それに合わせて門番は槍を構える。まさに一触即発だ。
「何をしている?」
騒ぎを聞きつけた老人が門を開け、顔を出した。
「村長、こいつらが通行証が無いのに門を通せとうるさいんです。見るからに怪しい奴らだ」
「誰が怪しいだ!この野郎!」
再び二人は睨み合う。老人はそれを制止しながら言う。
「まあまあ、前に仕事を依頼したグロム殿だったな。ちょうどいい所に来た、入ってくれ」
「いいんです?村長」
「ちょうど人手が必要だった所だ。そちらの少年も入りなさい」
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「門番の無礼をわびよう、何しろ戦時中でな…」
「今は戦争中なんです?」
銀太が聞く。老人は驚いた顔をして答える。
「何を言っているんだ?当たり前じゃないか」
「ああ、こいつ遭難したせいで今の記憶があまり無いんだ、名前くらいしか答えられない。説明してやるよ」
グロムと村長が言うことには、この世界には人間と魔族の二つの種族が互いに文明を起こし、長い間小競り合いを続けていた。
しかし、3年前魔王を名乗る魔物が魔族の四つの国を併合し、連合国家『タクト』として人間の国々に宣戦布告を行なったことで戦乱の世は幕を開ける。
大国になった『タクト』は人間達の領土を蹂躙し、通り道にある小枝を踏み潰すが如く小国を滅ぼしていった。
この国、グスタ王国も攻撃を受け、重要拠点をいくつか制圧されているらしい。
「そんなに殺伐としてたんですね…」
「だから村の警備を強化したんじゃ、今は安全だが、いつ魔族が攻撃してくるかわからん。それに王国軍がまだ到着してないからな、自警団で守らにゃいかん」
「だから人手が必要だって言ったのか」
グロムが言う。
「そうだ、宿と金は出す、王国軍が来るまででいいから自警団に入ってくれないか?」
「いいぜ、ギンタの稽古にちょうどいい。やるよ」
二つ返事でグロムは引き受けた。
「よし、そうと決まれば武具と服買いに行くぞ、ギンタ!ついてこい!!」
「ま、待ってくださいよ!グロムさん!」
グロムは商店が並ぶ通りに駆け出す。それに続いてつまずきそうになりながらギンタがグロムを追いかけた。