〜悪の種はチートで花開く〜#4
満月の下、青年と銀太は焚き火を囲み、先ほど倒した獣を解体し、肉を炙っていた。
「それにしても何してたんだ?俺が助けたからよかったものの…」
「いや、よくわからなくて…」
呆れ顔で青年が聞く。
「なんだよ、記憶が無いってか?名前は分かるよな?」
「な、名前は加羅洲銀太です」
「長いし変わってるな、ギンタでいいや」
青年は肉に刺さった鉄串を外し、かぶりついた。肉汁が溢れ、獣臭いストロングな味が口の中に広がる。調味料をかけなくてもそのまま食べられるような肉だった。
「うめえ!お前も食ってみろ、うめえぞ!」
青年は鉄串を抜き、肉を銀太に差し出す。
「ありがとうございます、ところであなたは…?」
「ああ、名乗り忘れたな。俺はグロムって言うんだ。旅の途中で偶然林道を通ってたらお前が獣に襲われていたのを見つけたんだ」
グロムは肉を頬張りながら話し続ける。
「それにしてもよかったな、オスのブチグマ一頭だけで、繁殖期のブチグマのメスなんかヤバイぜ?お前を見つけた瞬間バラバラに解体するだろうよ」
「ば、バラバラに…」
「まあ安心しろよ、今はまだ繁殖期じゃない。繁殖期は夏だからな、今は春だ」
再びグロムは肉をかじりながら話す。
「今は夜だから無闇に動けないが、明日は近くの村に行こう。朝から歩けば昼過ぎには着くだろう」
「村!あるんですか!?」
「ああ、あるさ。そこで装備一式揃えてやるよ。そんなボロシャツだけでついてこられちゃ奴隷か何かを連れていると勘違いされちまう」
よかった、と銀太は思った。エリバを待つのなら人のいる集落で生活しながら待つ方が安全だ。
「はい!行きます!グロムさんお願いします!」
「よし、決まりだ!最初は俺が見張りをするから早く寝ろよ?一刻で交代だ。それでも疲れはある程度とれるだろ」
「あ、ありがとうございます。それでは先におやすみなさい…」
「おう、早く寝ろよ〜」
銀太は倒木を枕にすると、すうすうと寝息を立てて眠り始めた。
作中に出てきた鉄串は肉塊の中心に火を通す時に使用する道具です。みなさんもキャンプなどのアウトドアでお試ししてみてはどうでしょうか?
次は水木に投稿いたします。