始動2
飲み過ぎた…完全に二日酔いだ…だるい身体に鞭打ちながら目を覚ます。
あの後俺達は朝っぱらから酒場に行き試練であった事や
今までの事をお互い話し合ったのだ。
そしてリナルドはこの80年の事や魔法の知識については殆ど覚えていないらしく、何とか初級魔法が使える程度にまで魔力も落ち込んだらしい
もしかしたら…あいつなら…という根拠のない自信はあったけど
またこうして早くも会えたのだから正直どうでも良かった。
そして……
俺はある事をハッと思い出し今日も酒場に繰り出していた。
そんな日が一週間程続き…
いい加減に思うところがあったのかリナルドが酒場に乗り込んできたのだ。
「ガト兄!いつまで酒場に入り浸ってるのさ!ねぇ試練はどうするの??」
俺はお酒の匂いをプンプンさせ、ぶどう酒片手に…シッ声がデカイぞ!
と言わんばかりに口元に指をあて答えた。
「まぁ落ち着けよ?俺はこう見えても、とある作戦を実行中なんだぞ?」
リナルドは明らかに不審そうな目で尋ねた
「聞こうじゃないか」
「あそこにナンシーちゃんってのがいるだろ?この町の天使と呼ばれてるそうだ」
「それが何なのさ?」
リナルドは何かを察したのか冷たい目で見つめてくるが、気にせず続ける。
「俺がダメ男を演じていればキット1発くらいはや」
バシッと頭を叩かれ遮られリナルドが一言
「バカじゃないの?」
「バカとはなんだ!未だ童貞なんだぞ!」
興奮した俺の声が酒場に哀しくも響いた
そしてリナルドは何かを決心し出て行った。
すると…話を聞いていたのかこの町に来た日に色々教えてくれた、通称ダメなおじさんが話しかけてきた。
「かっかっか、兄ちゃんまだアレなんだって?俺がこの町のいいとこ教えてやるよ」
俺はゴクリと唾を飲み込み…ど、童貞じゃねーし!と誤魔化すように答えた。
「違うよ?違うからね?でもおっちゃんの誘いは断れないよな」
オッチャンもとい兄貴は、それ以上は何も言わず黙ってついてきな?
と言わんばかりに親指で合図し俺はその背中を追いかけ夜道に消えていった。
兄貴の背中について行くと…
薄暗い明かりを灯す怪しげな建物が見えてきた所で…
2つの影がフッ!と現れそれと同時に意識が遠のき目を閉じた。
この感覚……そう人生2度目の磔である。
しかし今回は前回と違いどこか焦げ臭く…周りを見渡すと……
靴を焦がされたオッチャンが泣きながら奥さん謝り…
一瞬目が合ったが情けなく連れられ去っていったのだ。
そして目の前の裁判長はこう告げる
「ティヒヒ、おはよう?早かったね。じゃぁ裁判を始めようか」
「異議あり!」
俺の異議は却下され…
その後こってりと絞られ宿の部屋で
足元を水に浸けながらこれからの事を話し合っていた。
「とりあえずガト兄、お金、今あるお金全部出して!」
「ぜ、全部でありますか!」
「聞こえたでしょ?これからは僕が管理するから出して?」
「はぁ……」
大きくため息をつきしょうがないか…
とワンダーポケットからお金を取り出し差し出した。
が、そう俺はあざとい男!簡単には全額巻き上げられたりしない男なのだ!!
しかしお見通しだったのか指先に炎を灯しチラつかせながら悪魔は言った。
「ティヒヒ、ちょっと調べるからそこに立って?」
「どうぞお納め下さい」
すかさず全額差し出した。
数え終わると、ケッしけてんなーって顔を見これからの事を話しだす
「銀貨10枚に銅貨30枚って、僕のが多いじゃないか!!それにしても2人合わせても銀貨25枚かぁ…」
「まだ結構飲みにいけるな」
ギロッと睨まれしゅんとした。
「何とか東大陸には渡れそうだし…明日寄りたい所があるからそこに寄ったら三日月大陸に行かない?」
この世界は3つの大陸と2つの島からなっており
三日月大陸は上弦島から一番近い大陸なのだ。
東大陸か…もう少しのんびりしていたかったが確か獣人が治める大陸だよな?待てよ…
ムフフフッとヤラシイ顔をしながら答えた。
「そうだな、そうしよう!是非そうしよう」
「ティヒヒ、じゃ明日に備えてもう寝よう」
「おう、おやすみ」
いつものように、別々のベッドでゆっくりそのまま目を閉じた。