始動1
祠の奥でもっと思い出に浸っていたかったけど…
何かを思い出したように慌てて目を覚ます。
そしてポケットの奥でナニかを調整し、すぐに祠を後にし丘からもう一度確認してみるも…やはり王都は影も形もなかった。
「はぁ…ないかぁ~」
思わずため息まじりに漏れた。
(まぁ行ってみよう)
そう決心し、王都までは先ほど思いつき試してみたかった事を
実践しながら向かうことにした。
それは…片足の筋力をまず強化し、地面を蹴り、着地する前に逆の足を強化し、また蹴りあげる!
交互にスキップするようにして進むという単純な物なのだ。
まずは大事な一歩目を試してみると…
ミシッと大地が軋むような音を立てながら
勢いよく飛び出す事に成功した!成功したが…
つい癖で、前かがみ過ぎたのか…勢いそのままに地面に突っ込んでしまった。
がしかし!忘れないでほしい!
そう俺は受け身は得意は男だ。攻めるより…受けなのだ。
レベッカちゃんの時も受け身だっただけで、決してビビってた訳じゃない!
そのままコロンッと一回転し…バンッ!と地面を叩くようにし
なんとか受け身はとれたがなかなか全力はスリリングだ。
なので慣れるまでは抑える調節をしながら向かってみたけど…
これは早い!断然早い!馬と同じかそれ以上だ!!
途中何度かコケながらもなんとかたどり着いたのだが愕然とする…
何故かというと、間違いなく王都があった場所なんだが本当に何もないのだ。
残骸すらなく、そこには初めからなにもなかったように草や木が生えていたからだ。
流石にここまで跡形すらないと実感すら湧いてこないので、
王宮の俺が居た部屋のあった場所へ行ってみた。
途中少しでも何かないか探しながら歩いたが……何も見つけられなかった。
俺が過ごした場所も……やっぱり何も見つけられなかった。
はぁ~と、抜けるようにため息をつき力が抜け
その場に倒れこむように大の字で寝そべってみた
筋肉痛だった。
そのまま空を眺めていると……あっという間に日が暮れ夜になった。
星空は昔のままでここは同じ場所なんだなって
急に実感が湧いてきて自然と涙が溢れてきた。
それからそのまま星をみながら、何か色々な事を考えた。
今までの事、リナルドの事、試練の事、あの時言われた通り寄り道しなければ違ったのかな?
それにこれからの事。
ぐるぐると色々な事を考えたけど……やっぱり何も分からなかった。
だからまずは大英雄の言っていた試練を探してみようと思う。
そして、気づいた時には朝でやけに朝日が眩しかったので
つい目を閉じだ。
………
……
…
目覚めるといつの間にか日差しが高かくどうやら寝てしまったみたいだ。
これでも元王子なのに平然と野宿してしまったみたいだ…
でも…これからはそんな事言ってられないか!
考えを改めなおしこれからの事を考えてみるが
『ギュルゥー』
(何にしてもまずは食べ物だな)
今もあるか分からないけどディステネを目指してみることにした。
また同じように大地を蹴り進んで行ったがだいぶ慣れてきたみたいだ!
他にもこの力の使い方がないかと考えながら黙々と進んでいくと…
小さく町が見えてき一気にテンションが爆発し叫んでた。
「ヒャッフーッ!!町だーッ!」
勢いそのままに町に飛び込むとそこは…
以前来た時とはだいぶ違っていたが確かに見た事ある建物もあるのだ!
沢山あるのだ!!!
たったそれだけの事で感動し立ちすくんでいると…
邪魔だったみたいで嫌な顔をされたが…気にしない!
そして酒場を探しながら散策しているとある事に気がついた
それは、やたらと武装している人が多いのに騎士や兵士なら統一感もありそうなのだがバラバラで、そうは見えない。
前はこんなに居なかったのになぁ?
なんだろうなと人混みの中を歩いていると…
後ろから腕の裾を掴まれ、振り返るが…誰もいない
また歩き出すが…すぐ引っ張られ…振り向くが誰もいない
次は歩いてすぐに振り向いてみると…
小さな12.3歳位のピンク色の髪の女の子が袖を掴んでいた。
「あ」
一瞬しまった!という顔をし女の子は…
途中でこけながらも猛スピードで逃げ出していったのだ。
(まぁいいか!とりあえず今は飯と酒だーー!)
無事酒場を発見し席に着き注文を取りに来たので一応確認してみる
「おかしな事聞くけどこれ使える?」
そう言って1000セレネ1銀貨を見せると不思議そうな顔をして答えてくれた。
「ほんと、おかしな事聞きますね?もちろん使えますよ?」
「じゃ、パンとスープ、それにティプルフィッシュの丸ごと揚げ後はぶどう酒も!」
(ふぅ…お金は使えそうだ)
それに見た事ない料理があったから頼んでみたけどどんなのだろう?
多分魚だとは思うかな??
やってきた…やってきたが…でかい…でかすぎる…
そして歯が凄い攻撃的だ…思わず…
「でっかーーーっ」
「兄ちゃんティプルは初めてかい?」
「そうなんだよ!奢るからコッチで色々教えてくれよー」
むしゃむしゃ、むしゃむしゃ頬張っていると…
おっちゃんがやってきてくれたので色々聞いてみる
「で、こいつはなんなんだい?」
「本当に知らないみたいだなー?こいつは海にいるモンスターさ」
そこからおっちゃんはたまに不思議がりながらも色々と教えてくれ、俺にとっては正直信じられない事の方が多かった。
まず特に驚かされたのは……
試練に飛ばされてから100年も経過していた事と、80年前にダンジョンっていうのが各地に現れ近くではモンスターが出てくる事である。
その影響でモンスターを狩る代わりにお金が貰える冒険者制度ってのが作られたらしいが、それについては冒険者ギルドで聞くのがいいそうだ。
「おっちゃんありがとな!今日は一緒にとことん飲もうぜ!」
「かっかっかしょうがねーな!」
なんだか凄く久し振りな気がして嫌な事を忘れる様にぱぁーとやった
やっていた、やっていたが…
途中でおっちゃんは奥さんらしき人に怒られながら連れていかれ…
俺も宿を取り忘れてた事を思い出し、今は急いで探しているのだ。
そして陽も沈み暗がりを1人歩いていると…
小さな影が見えた時フッと意識が遠のきそのまま目を閉じた。
………
……
…
「ティヒヒ、おやおやもうお目覚めかい?」
そんなどこか懐かしい笑い声で目覚めたが…おかしい!おかしい!
気づいた時には何故か…
十字架に磔にされていたのである。
もう1度目を閉じ開けてみても…変わらない!
むしろ足元に巻が焚べられているのだ…
俺は焦った。
「おい!誰だ!こんなイタズラした奴は!先生怒らないから出てきなさい」
指先に炎を灯しながらそいつは言った
「ティヒヒ、おやおやそんなに強気でいいのかい?」
俺はこんな卑怯なやり口には断固屈しない男だ!そう悪には屈しない男だ!
「要求はなんだ、言ってみろ!できるだけ善処するから言ってみなさい!」
すると…朝霧でさっきまでボンヤリとしか姿が見えなかったが…
そいつが段々と近づいてきて姿をみせた!
やはり昨日あったピンクの髪の女の子でそして尋ねてきたのだ
「僕が誰だかわかる?」
「え、リナルドだろ?笑い方で1発じゃん」
「そう僕の名はリナルド!君に復讐する男さ」
「いや女の子じゃん」
「そう僕の名はリナルド!君に復讐する男さ」
「いやだから女の子じゃん」
「そう!僕の」
もういいだろ!と遮るように…
「どっちでもいいけど、もう会えないかと思って凄い落ち込んだんだぞ」
リナルドは少しモジモジしたものの、ビシッとし直し、こう告げる
「試練は乗り越えたって後は帰るだけだって、ずっと待ってたのに、寄り道したろ!」
バレていた
そして素直に…いや言い訳しながら謝った
「ご、ごめんな!で、で、でも、こうして再会出来た訳だしさ?」
「ティヒヒ、遺言はそれで最後かい?」
目がマジだった…そしてリナルドは続けた。
「あの後色々な事があった、あり過ぎた…それでも僕は100年なんとか耐えた。」
そうこいつはずっと色々な負い目も抱えながら待っててくれたんだろう
だからこう言った。
「今度お前がそうなったらその時は俺が待っててやるよ!」
力を使い脱出し頭をポンっと撫でてやる
「うわーーん、ガト兄あの時はごめんよ」
頭を撫でながら優しく抱き寄せ……目を閉じた。