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亡国からの冒険者(無)  作者: 圭作
第1章 レベッカ
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その後4

 俺はその場の空気に流され無駄にカッコつけすぎた事に

 早くも後悔しながら目を覚ます。


 重たい足取りで出口に向かいながら、そういえば色々あり過ぎて死闘の果てに宿ったこの聖痕(スティグマ)の事も全然聞けなかったなぁ…実感も湧かないしもっと詳しく聞いていればよかったかぁ……でもリナルドなら何か知ってるかもしれないし八つ裂きにした後にでも聞いてみるか!


 そうこう考えてるうちに突き当りまで到着し俺は再びどうするべきか悩む事になる。


 何故かというと…左に間違いなく扉があるのだけど、悩ましい事に右にも扉があるのだ。


 覗いて帰るくらいなら問題ないんだろうが、こんな怪しい空間で果たして出入り出来るんだろうか?それにお爺ちゃん(故)は寄り道をするなって言ってたけど……



 (開けてみるくらいならいいよな!)



 軽い気持ちで扉の前まで移動し試練の間と同じように引っ張ってみるが、全然ビクともしない…まさか押した勢いのまま入っちゃうなんてないよな?でも怖いしゆっくり押してみるか…


 そう俺は慎重な男!そんな凡ミスはしない男だ!!


 ゆっくり…ゆっくり……お?やっぱり押すのが正解みたいだな…。

 そしてすこーし、すこーしだけ、隙間が出来た!が、途端に扉が一気に開き俺の叫び声と一緒に悲しくも吸い込まれていったのだ。



 吸い込まれた事に気づきすぐさま扉を確認するが、今度は扉自体が無くなっていたのだ…お爺ちゃん(故)助けてよ!!何となく想ってみたが…駄目らしい


 仕方ないので少し周り見渡すとそこは装飾された柱が奥に向け一定間隔ごとに広がっていたのだ。


 しかし、これだけ広いと扉を探すのは相当大変だろう…

 でも中間地点から探さなくていいだけマシかと言い聞かせ扉を探索していく

 すると……



 「え~~~~い」


 可愛らしい声と……


 「マリアージュ!お前は魔力だけは人一倍ある癖に魔法の才能がまるで無い!だから魔槍使いになるしかないのだ!分かったかッ!!」


 「はい!大魔王様!」


 え、こんなところに、あの大魔王が!?

 もう少し近寄り柱に隠れ…そっと様子を伺ってみた。

 すると…おじさんが、女の子に背後からぴったりくっつくと腰を掴みながら


 「大魔王じゃない!コーチと呼べと言ったはずだ!!何度言えばわかるんだ?お前は!!!それになんだその腰は?もっとこうだろ!!?」


 「はい!コーチ!」


 大魔王?の激しい口調とは裏腹に、アイツ完全に身体触りたいだけだろ…顔がにやけまくってんじゃねーか!ちくしょー!!羨ましい!!!!

 しかもあの女の子、黄金色の髪に、おっとりした目元!何よりあの豊満な胸!なんだあの胸は……素晴らしい!


 「でも、魔族なんだろうな…」


 そんな言葉がぽつりと漏れてしまった。


 だがそれには訳がある!この世界の魔族とは、基本的に普通の人よりすこーし魔力が高い程度な癖に魔族以外は劣等種だ!だから敵なんだ!!って南西の下弦島に引きこもっている種族だからだ。


 でもせめて、大魔王(エロオヤジ)の暴挙は止めなければ!!

 それ一心の思いで食ってかかる



 「おい、大魔王(エロジジイ)!いつまでやらしい顔して触ってんだ!羨ましいぞ!!」



 ( あっ、本音言っちゃった)



 思った瞬間に意識がとぎれた…



 ………

 ……

 …



 俺はほんのりとする甘い香りと、頭の後ろでぷにぷにっと柔らかい感触で目を覚まそうとしたが……


 (待てよ?も、もしかして?この感触は…おっ、おっ、おっぱっ)


 と思いながら目を覚ましすぐさま振り返ると…膝丈くらいの布地からすらっと伸びる足が見えた。

 少し残念に思ったがすぐさま


 (この状況はチャンスだ!)


 思いのままにそのまま腰に手を回して甘えるように抱きついた。


 「キャアァ」


 小さく可愛らしい声が漏れる…





 「おい小僧」


 そう、大魔王(エロジジイ)を完全に忘れていたのである。


 だがしかし!


 俺は今までの経験で、こういう時はどうすればいいか身体が覚えていたのである!


 そう、それは流れるような動きで、かつ見惚れられるようなそんな滑らかな動きで…



 俺は直ぐさまDOGEZAしたのである。



 余りにも自然な動作だったのか、大魔王も反応に困り、ごにょごょしていた。

 そう俺は隙をつくのは得意な男だ!

 ここぞとばかりに何事もなかったかのように、ぬけぬけと言い放つ!!


 「大魔王様、この度はお初にお目にかかれて光栄でございます。私の名はガトラス!大英雄の意志を受け継ぐ者で御座います。」


 お爺ちゃんの七光りパワーを全面に打ち出し…大魔王の様子を伺うと……

 どこかを指差しながらこう告げる


 「おー!それでか…軽く放ったが普通の人間ならその一撃で死ぬはずなのに、おかしいと思っておったのだ」


 俺は指差した方に視線を移すと、頑丈そうな作りの柱の一本が折れて崩れていたのが見え、口をあわあわさせながら一瞬で 背筋が凍りつき顔が青ざめる。


 そして…なぜ耐えられたのか?と疑問に思い理由を知ってそうな大魔王にこう尋ねた


 「なぜ私が耐えられたのかは分かりませんが、大魔王様は何かご存知なのですか?」


 少し不思議そう面持ちで答えてくれた


 「大英雄(アイツ)からその聖痕(スティグマ)について聞いていないのか?」

 「はい…色々な事がありましたので……それにもう大英雄様は力を使い切り旅立たれたもので…」


 大英雄がもうどこにもいない事には流石に面食らっていたが、突然大笑いしだし俺が首をかしげていると理由を喋りだした。


 「いや、スマンスマン…余りにも大英雄(アイツ)らしいと思ってな!事あるごとに「おい大魔王!俺は鎧の中までガチムチなんだぜ?」と自慢するように言ってきたのに、自分の大事な後継者には伝えていないのだから…ついついな」


 うわぁ…。なんかお爺ちゃんもとい脳筋の好感度が自分の中でだだ下がりし遠くを見つめながら(俺の涙返せよ)なんて思っていると…脳筋とは違い出来る大魔王様が聖痕(スティグマ)について教えてくれた。


 「そもそも聖痕(スティグマ)は産まれながらに宿せば基本的な能力について理解して産まれてくるのだが、後から宿す場合は試練で教えてもらうか自分で文献等で調べるなどしてたどり着くんだが特別に教えてやろう」


 「なぜお前は、先ほど余の一撃に耐えれたと思う?」


 さっきの話から身体が頑丈になるのは、なんとなく察したけどそれだけとは思えないし…分からないから聞いたのに勿体ぶりやがって!この大魔王(エロジジイ)!そこで……

 (もっともらしいことを言って最悪戻れたらリナルドに聞こう)

 投げやりになりながらも答えてみた。


 「聖痕が関係しているのは分かりますが、何分全く実感なく試す機会も無かった為に検討もつきません。無能な私にどうかご教示頂けませんか?」

 「フハハハハハハッ人間の分際でなかなかいい心構えでないか、見ろマリアージュ、これが人間だ」


 大魔王は調子に乗った。


 そのまま偉そうに、うむうむと1人頷きながら続け、お前も人間ジャネーカ!!ってツッコミを入れたくなったが、グッと堪え耳を傾けた


 「その聖痕の名はヘラクレスといって耐久力を大幅に上げてくれ更に剛勇無双とかいう自分の特定の筋力を数倍以上にもしてくれるスキルまである能力だ。

余の子孫であるマリアージュにいつか試練を受けさせようとも考えていた聖痕の1つだな」


 俺は予想以上に凄そうな力に、自然とグッと拳を握りしめ力が入る

 そしてマリアージュさんに視線を送ると…微笑みを浮かべ首を小さく振り


 「まだわたくしには、早いと思ってましたのでどうぞお気になさらず」


 俺は僅かに揺れる胸を敏感に察知し、すかさずチラ見して魔族なのに見下さない口調に少し戸惑いながらも感心していた。


 そして急に、大魔王が深くため息をついた


 「はぁ……こいつはな、お前と同じように余の後継者なんだが…複数の神々に愛されすぎて聖痕は宿せ無かったけども、魔力そして素質も十分で魔法こそ苦手だが、このスタイルよ!

 後はこの優しすぎる性格がダメだ!だからこうして鍛え直してた訳なんだが…」


 聖痕は俺と似たような理由で宿せ無かったのか…でも魔力が高くて魔法が苦手ってどうなんだ?魔力は産まれながらの才能により伸び代が全然違うらしいし、マリアージュさんは凄い才能なんだろう……特にスタイルが


 (後はそうだ、帰り道についても聞いてみるか)


 「そうだったのですか…これはお邪魔をしてしまい申し訳ありませんでした。恥ずかしながら迷ってしまい、宜しければ帰り道をお教えして頂けませんか?」

 「大英雄(アイツ)の後継者だ!特別に送ってやろう!!下手に迷うと時の流れが速すぎて元の時代には帰れなくなるからな…で、どこに送って欲しいんだ?」

 「南東にある上弦の島の、もしご存知なら大英雄の作った祠にお願いしたいのですが…」


 そう答えると…


 「いいだろう!以前余に祠の自慢話をしてきたからな!!場所は知っておる。では送るぞ」

「え、ちょ」


 心の準備も出来ないままに、足元に魔法陣が浮かび上がり…直ぐ様ピカッと輝きあまりの眩しさに目を閉じた。



 ………

 ……

 …



 照りつける太陽の日差し……乾いた大地と自然の香りを感じ戻って来たんだと実感し目を開ける。

 すると幼い頃リナルドと遊んだ王都を一望できる見慣れた丘に立っていた。




 懐かしの王都を確認しようと眺めると



 そこには…そう何もなかった。



 何も。



 俺はそっと再び目を閉じた。








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