その後3
先ほどまでの死闘を思い出しながらまたまたゆっくりと目を覚ましていく。
未だに一糸まとわぬ姿で服を脱ぎ散らした地点まで1人の空間を楽しむように、スキップをしながら向かう…そう何かに目覚めたようにスキップで向かったのである。
「な、な、何をやってたんじゃーー」
先ほどやってきた扉の方から突然大英雄もといお爺ちゃんの声が響き渡る。
俺はとっさに両手で両胸を押さえながら必死に弁明する
「ち、ち、ち、違うんです!こ、これは、そ、その…一時のテンションに身を任せた結果と、いうか、その、で、で、でも、初めてだったけどちゃんと出来ましたよ!?」
何とか弁明し証を見せてやれば納得してくれるだろう?と思いお爺ちゃんの元に駆け寄り…どうだい?凄いだろ?と言わんばかりに、聖痕の宿る下腹部を強調し見せつけた。
「……………………」
お爺ちゃんはまるで汚物を見るような視線を向け、無言で扉の向こうへ帰って行った。
「せっかく試練突破したのに、なんだよあの態度!」
酷い誤解を与えてしまったと気づいたのは、冷静に服を着ているときの事であった。
どんよりした気持ちを抑え扉を抜け俺も戻ると……思春期に両親にはバレたくない秘密を見つかったかのようなそんな気まずい空気が流れた
切り出したのはお爺ちゃんだ!お母さん知らないわよー?という感じで何事もなかったようにスッと切り出したのである
「ゴホン!先ほどは見事試練を突破し嬉しく思うぞ!!では改めて約束し」
お爺ちゃんの大人の対応が、7年間も遊び回ってた俺の心には余計辛かった。
そしてどこかよそよそしくなっていることに感づいた。
だからお爺ちゃん利権を手放してなるものか!と話を遮ったのである
「ちょっと待って下さい!何か誤解されていませんか?お爺ちゃん」
お爺ちゃんは、先ほどのおぞましい光景を思い出さないように、冷めた目で眉一つ動かさずに言い放つ!
「なんじゃ?人それぞれ性癖はあるだろ?それにわしと、お前は″ただの″先祖と子孫だ」
クソッこのジジイ完全に勘違いしてやがる…なんだよ?性癖って…こっちは聖痕を獲得するために必死だったってのによ!おし!こうなったらとことん話して分からせてやる!!
「だ、か、ら、あれはですね」
3時間程経っただろうか…?
最初のうちは完全に門前払いを食らっていたが、何度も、何度も、根気よく説得を続けたお陰で少しだけ隙を見せたのだ。
俺はそう狙った獲物は逃さない男だ!
ここぞとばかりにお爺ちゃんのウィークポイントを攻め立て、一見鉄壁に見えていた牙城を切り崩したのである!
そして………
「お爺ちゃん!で、結局試練の後に教えてくれる秘密ってなんだったの?」
「そうじゃな教えてやろう」
俺は、お爺ちゃん利権と共にフレンドリーに接するというオプションまで獲得してきたのである!
そしてどこかジジ臭くなった途中で見せた威厳は消え失せ、ただ孫に取り合ってほしいだけの、寂しがり屋の話に耳を傾けた。
「実はな300年前わしと魔王との戦いは、本当の意味では決着がつかなかったんじゃよ」
「というと?」
「いくらやり合ってもお互い倒れず10日以上も場所を変え、ぶつかり合ったんじゃ!が、そのもう何か面倒くさいなーって思い始めた頃とある海上でのことじゃ…物凄い悪しき力を感じ何かの封印が解けかかってるのに気づいたんじゃ!で魔王も察したらしく適当に決着をつけて、2人でこの力を再封印をし、お互い後に生まれてくるであろう中から後継者を選び賭ける事にしたんじゃ!で、最後にジャンケンをしてグーで勝ったし後継者の為に国を作りこの試練の間でずっと待っていたんじゃ!」
何か最後の方のジャンケンの下りはおいておくとしても…そうすると俺は選ばれたことになるのか??
大英雄と大魔王が封印だけしてビビって逃げ出すような相手と戦う為に………
そうか……
「ごめんなさい!他を当たって下さい!じゃそういう事で!」
そそくさと何も聞かなかったかのように、足にしがみつく何かを気にすることなく引きずり歩いて行く
「ちょっ!ちょっ!待てよ!待って!お願い待って!!先っぽ!いあ…話だけでいいからあぁ!!!」
「なんだよー?未だ童貞の俺には荷が重すぎるってー!じゃ!!」
また寂しがり屋のジジイを引きずり歩きだす
そして…ある事に気づく……
出口どこだろう?そもそもここにどうやって来たのかすら分からないのに、分かるはずがないのだ。
立ち止まると出口が分からないのを感づいたのか、引きずられボロ雑巾みたいになったジジイがムクッ!と立ち上がり薄っすら笑みを浮かべ悪魔みたいに取引を持ちかける
「出口が知りたいんだろ?フフッ教えてやってもいいぞ?ただし!わしの話を聞いてくれたらじゃがな?」
俺は大きくため息をつきながら観念したように返事をする
「はぁ~~、で、どうすればいんだよ?」
ボロ雑巾は勝ち誇った表情を一瞬見せ真剣な面持ちでこう告げる
「この先100年、200年、もしかしたらまだまだ封印は大丈夫なのかもしれんが少しずつ異変は起こるだろう…それにもしお前が死ぬような事があれば、わしと同じようにここで後継者を探してほしいのだ。願わくばお前が各地の試練を回り各地の試練を乗り越え、悪しきものを討ち払わん事を祈っとるよ」
言い終えると少し優しい顔を見せ、なんだか本当にお爺ちゃんと話してるような気になりそして
……しばらく考え答えた。
「そうだなぁ…子孫らしくたまにはお爺ちゃんを喜ばせてみるのも悪くないし、今までそんな事出来なかった!だから今回は初めてお爺ちゃんの言うお願い頑張ってみようと思う!それにもう俺は戻っても居場所はないだろうしな」
お爺ちゃんは嬉しいそうな顔を見せた後、不思議そうに衝撃の事実を言い放つ
「帰る場所?あるじゃろ?昔わしの仲間だった賢者が転生してなんだったかな?そうリナルドか!アイツがわしに送ると伝えてくれてたし、ここへ来るのを手伝ってくれたんじゃろ?」
「へ?」
ちょっと待ってくれリナルドが元賢者で送る手伝いをしてくれた??
そういえば親父も何処かで誰かに会ってる!と言ってただけだし、みな昏睡してたけど血なんて流してなかったような…
それに手伝い……確かここには強く力を求めーって!?
「あの野郎!!騙しやがったのかあああ」
お爺ちゃんは昔の事を懐かしそうに思い出し賢者について教えてくれる
「あいつは昔から悪戯好きじゃったしのぅ…転生を重ねるといくら強い力を持った者でも衰え、記憶も剝がれ落ちてくんじゃが…相変わらず悪戯好きだったみたいじゃな」
少しだけお爺ちゃんは寂しそうな表情を見せ、また続けた
「わしもお前に試練を受けさせ力のほとんど使い切ったみたいじゃし、転生して新しく生まれ変わってみるかのぅ」
そんなお爺ちゃんの話を聞いて俺は自然と言葉が出た
「もし、お爺ちゃんが生まれ変わっても安心出来るような世界にしてやらないとな」
伝え終わると、お爺ちゃんの身体から小さな光の玉のような物が溢れ出していき、少しずつ、少しずつ、透けていく、そして最後にこう告げる。
「出口はそこの通路を真っ直ぐ行き、突き当りを左に行けば扉がある。決して寄り道はするなよ?後、帰った先にわしの作った祠があるその奥にわしの使ってた武器が刺さっておるからそれも持っていけ!お前さんを選んでよかったわい」
方向を指差し最後にニコッと笑い消えていった。そして俺は、上を向き、涙を堪えるようにそっと目を閉じた……。