曲がりなりにも勇者
「お前、あの泥棒を庇うのか!?」
割って入ってきた女性にも、容赦なく飛び交う怒号。
それでも心を折らさず、女性はこう言った。
「泥棒? そうには見えないけどなぁ……。 とにかく、勇者さんとやらは家に侵入とかはしないでね」
この発言の後、テキトーネが喋り始める。
「この勇者の名前がドウコウと言うのですが、この人はたまに、他種族の考える"人間"というものを逸脱した奇行に走る事があるんです。 ご迷惑をお掛けしてます」
「……おい、待て」
テキトーネと魔法使いの格好をした女性が喋った後、黙っていたドウコウがついにその口を開く。
「盗んだ金はちゃんと棚に戻しただろ、何がいけないんだ?」
しかし、放たれた言葉は、村人を煽るかの言い方だった。
「はあ!?」
案の定、十数人の村人が彼を襲う。
最終的に、彼は殴りに殴られてしまった。
「バカだなぁ……」
「あれほど言ったはずなのですが……」
「クソ……」
殴られてドウコウは、そう呟いた。
そこに、魔法使いらしき女性が近寄り、こう言った。
「ところでさ、魔王を倒すべく旅をしてるんでしょ?」
「そうだが……それがどうかしたのか?」
「ならさぁ、仲間くらい一人はいないとなぁ……」
「誰だよ」
「私の名前? 「テヌキーニョス」というんだけど……」
ふざけているような名前だった。
「テヌキーニョス? 魔法とかは使えるのか?」
「使えるよ、全部じゃないけど」
そこに、テキトーネが割って入ってくる。
「流石に、一人旅では魔王を倒すは無理だと思います。 一人くらい仲間がいないと……」
「……まあ、テキトーネの言う通りだろうな」
「え、いいの? ありがとう!」
こうして、ドウコウはテヌキーニョスを仲間に加える事にした。