騎士の心は更に黒く
そして、カンスケとリミはザッツェディスのいる方向へと走り出した。
ひたすら攻撃を避け続けている所に割り込むつもりだった。
「テメェ……邪魔すんなぁぁぁぁ!」
すると、男は標的をカンスケへと変えてきた。
「……危ない」
「こんな斧の攻撃……余裕だ!」
だが、その攻撃はカンスケには止まって見えた。
「次は……こっちのターンだな」
標的が変わった事を好機としたのか、今度はザッツェディスが攻撃し始めた。
「何っ!?」
左足での回し蹴りが男の後頭部に当たると、男は膝から倒れた。
「これで終わりか?」
カンスケが首に剣を向ける。
その時だった―――――。
「おい、エセヌ!」
「……はい」
何処からか声が聞こえてきた。
そして、二人の召使いのような格好をした人物とチャラチャロスが現れた。
民衆の前に降りてきた彼は、召使いにある命令を下す。
「目の前の男を殺れ、奴は恥というもののない大馬鹿者だ」
「……承知」
すると、二人はカンスケやリミを通り越し、両手に隠し持っていたナイフで男を刺した。
刃は、男の心臓と首の中心に刺さっていた。
「……情けない奴だ。 どこぞの勇者気取りはおろか、ただの住民にしか見えない小娘ごときに手こずる癖に、態度と武器だけは大きかったからな」
彼は二人に、何かを告げて去るようにして消えていった。
「待て!」
「あれは、瞬間移動の魔法かもしれません。 足で追うのは諦めた方が……」
「……そうしようか」




