最終話・平和を懸けた戦い
最終的に、ドウコウ達は魔王・ナントカカントカヌスの下へと辿り着いた。
悪魔の角や翼が生えており、肌は薄紫色。
筋肉は割れているが、とても魔王の姿には見えない。
ナントカカントカヌスはドウコウの姿をにらむ。
「貴様が勇者か……」
ドウコウも、右手に持った剣をナントカカントカヌスに向ける。
「そうだ。 この剣には、国の平和が懸かっているんだ!」
「威勢の良い……。 しかし、此処で消えて貰おう!」
ナントカカントカヌスは、ドウコウ達に向けて強大な魔法を唱えようとする。
テヌキーニョスは魔法で妨害しようと考えた。
「そうはさせない! 鉄玉!」
魔法によって生成された、大小様々な鉄の球が、ナントカカントカヌスに襲い掛かる。
「今だよ、ドウコウ!」
「はああああ!」
この間に、ドウコウが剣でナントカカントカヌスを切りつける。
だが、まるで効いていないようだった。
「人間風情が、この程度で我を苦しめられると思っていたか?」
「嘘でしょ……?」
「感覚はあったのに……」
「小賢しい、こうしてくれる!」
ナントカカントカヌスは降りかかる球を魔力で浮かせ、それをドウコウ達の方向へと飛ばした。
「あれは、力操……?」
「ぐっ!」
予想外だった鉄球の攻撃は、ドウコウにとっては厳しい一撃となった。
「かかってこい、愚かな勇者の名を騙りし者よ」
ナントカカントカヌスは、自分の玉座に座る。
「今よ、ドウコウ!」
これを好機と見たのか、サボテンノはドウコウに黒い本を投げ渡す。
「ああ!」
ドウコウは本を左手で受けとる。
「時間稼ぎは俺がやる、ドウコウは本の内容を確かめろ!」
ジャマクセーノが、剣でナントカカントカヌスと戦い始める。
その間にドウコウは、黒い本の内容を確かめる。
すると、とんでもない発見をした。
「……これ、まさか……」
「どうしましたか?」
テキトーネが、ドウコウに寄ってくる。
「本の最後に、ナントカカントカヌスって……」
「えっ?」
その本は、ナントカカントカヌスが書いたノートだったのだ。
一方で、ジャマクセーノは苦戦していた。
「おい、ドウコウ! 本を魔王に!」
「分かってる。 それにこれは……既に言われていたことだ!」
<その本をナントカカントカヌス様の前でかざすと……いえ、なんでもありません>
ドウコウは突然何かを思い出すと、ナントカカントカヌスの前に走り出した。
「これ以上はさせんぞ!」
叫んで威圧してくる中、ドウコウは右手の剣を本に持ち変え、本をかざした。
「ナントカカントカヌス、これを見るがいい!」
「そ、それは! 我の暗黒の記憶……!」
「その記憶は、全てここに詰まっている!」
ドウコウに幼き頃に書いた本を見つけられたナントカカントカヌスは、両手を頭に抱え込んだ。
「ク……クソが……!」
左足から、ナントカカントカヌスの身体が消え始める。
「地獄でこの本でも読んでいる事だ!」
「き……貴様アアアアア!!」
叫びながら、ナントカカントカヌスの身体は消滅した。
「やりましたね……」
「長かったなぁ……」
「……そうだな」
「これで……旅も終わるのね……」
消滅後、ドウコウの仲間達はそう言った。
その後、魔王城は崩れ去り、ランダム国には平和が訪れた。
4人と1体は、その後は地元でのんびりと暮らした。
清掃係などと言って働かされていた人間も、自分達の故郷に戻った。
ルーレット町には活気が戻り、モザイク塔は見渡しの良い観光名所となった。
キイとソオはルーレット町に引っ越し、パピプペフォルスは壁穴洞窟を埋めて自分の家を作った。
ザジズゼはウンタラ城の門番となった。
タラタラはあの戦いの後に腕を怪我したが、ある山の中で暮らす事にしたらしい。
そして、幼き頃のある人物は、そのドウコウ達の旅の話を聞き、新たな何かに目覚めたのだった。
完
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長かった。
ここまで72ページ、苦痛以外の何者でもなかった。
そろそろ掃除を……といきたい所だが、まだ6冊もノートは残っていた。
そのノートを見た俺は、笑いながら「†聖なる書†Ⅱ ドウコウが紡ぐ伝説」を手に取った。
「フッハハ! まだあるのかよ……。 ふざけんな、当時の俺!」
Ⅰと比べると少し分厚く見えるノートを、俺は読み進める。
†聖なる書†Ⅱ ドウコウが紡ぐ伝説編に続く―――――




