内輪衝突
このあとも、二人の戦いは続いた。
しかし、突然キイに異変が―――――
「火が……出ない!?」
魔力を使い果たしていたのだ。
しかし、それはあくまでも建前。
キイは、"あの魔法"を唱える事ができたのだ。
「もう終わりかな?」
テヌキーニョスの安堵も、一瞬だけのものだった。
「ポア!」
「えっ?」
そう、「ポア」である。
100年以上前に誕生したこの魔法は、影響のおぞましさから魔法使いの間では"最悪の魔法"と呼ばれ、警戒されている。
成功してしまうと、唱えた者の半径10m以内の生命が全て消滅してしまうのだ。
土や石も生命とされているため、唱えた後は大きな穴が出来る。
が―――――
この魔法を唱える事に失敗したキイは、突然倒れる。
「大丈夫なのかな……?」
相手だったテヌキーニョスも、キイのもとへ。
すると―――――
「どういう事なの……?」
血によるものではないが、キイの体は真っ赤になっていた。
「あ……ああ……」
さらに、まともに言葉を発する事ができなくなっていた。
タラタラは、それを許さなかった。
「つまらない理由で負けやがって……貴様にはここで死んで貰おう」
「……!」
キイは抵抗しようとするが、手足に力が入っていないせいで無意味。
「えっ、ええ……?」
横にいたテヌキーニョスも、驚く事しかできない。
「無様な姿のままで死……」
タラタラも、剣でキイの胸を刺そうとしていた。
その時だった―――――
「やめて、タラタラ!」
仲間の一人であるソオが、突然タラタラを止めようとする。
「貴様もここで死にたいのか?」
「使い物にならなくなったら殺せ、と言った覚えは無い!」
ナニイルテまでも、タラタラを止めようとする。
「馬鹿な……。 貴様等の頭は、その程度の構造だったというのか!?」
最終的に、タラタラはキイを殺す事ができなかった。
戦いはテヌキーニョスの勝ちという事になった。
ドウコウは、タラタラにある事を聞いた。
「ところで、この町の住民を皆殺しにした理由は何だったんだ?」
「答えなければならないという誓約だったな……。 仕方ない、教えてやろう」
偉そうな態度で、タラタラは虐殺の動機を語った。
「魔力を浴していた我は、どうやって魔力を得られるか探していた」
「そして、我は人を殺せば魔力を得られるだろうと思い、前々から気に入らなかったルーレット町に来た」
「気に入らなかった……?」
「我に対する態度が軽率的だったのだ」
「まず、我は火を着けた弓矢で町の男を殺した」
タラタラの話の途中、ドウコウはある事を思い出した。
「……いや、待て。 前に聞いた話と違うぞ」
それは、カキクケンコ壁穴洞窟の最深部にいた女騎士、パピプペフォルスの話だった。
『どうやら魔法騎士とやらになりたかったらしいが、魔力を得るためと言って小さな村を焼け野原にしていたな』
『そのくせ、住民の性別で殺す方法が違っていた』
「話の途中だ、静かにしろ!」
「いや、前にパピプペフォルスから、似たような事を聞いたと思って……」
「パピプペフォルス……? 貴様、あの愚かな騎士擬きからこの事を聞いていたというのか?」
「騎士擬きも何も、あいつもお前の仲間だったんだろ?」
「何故それを今……」
「自分からそう言っていたぞ。 本当かどうか聞きたいなら、カキクケンコ壁穴洞窟にいるから聞いてこい」
「貴様……!」
「それで、話は?」
「ふざけるのも大概にしろ、貴様め!」
タラタラは言い残し、ルーレット町から去る。
「」
ソオとナニイルテはキイを背負い、タラタラを追いかける。
すると、倒れていた女性が立ち上がり、こう言った。
「……ありがとうございました」
「あの後、タラタラは町の家屋等に火を着けて去っていきました」
立ち上がった女性の口からは、タラタラの殺人について話した。
「なぜ、倒れていたのですか?」
テキトーネは、倒れていた理由を聞く。
「死んだフリのつもりでした。 そういう風に見せておかないと、殺されると思ったので……。 心配させてしまってすみません」
「別に構いません、死んでいなくて何よりです」
死んだフリだったようだ。
その後、ドウコウ達もルーレット町を去った。
魔王城を目指して。




