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たまたま見つけた俺の黒歴史ノートに、とんでもない話が書かれていた件。  作者: TNネイント
「†聖なる書†Ⅰ 勇者ドウコウの伝説の始まり」編
40/66

内輪衝突

 このあとも、二人の戦いは続いた。

 しかし、突然キイに異変が―――――


「火が……出ない!?」

 魔力を使い果たしていたのだ。

 しかし、それはあくまでも建前。

 キイは、"あの魔法"を唱える事ができたのだ。

「もう終わりかな?」

 テヌキーニョスの安堵(あんど)も、一瞬だけのものだった。

「ポア!」

「えっ?」


 そう、「ポア」である。

 100年以上前に誕生したこの魔法は、影響のおぞましさから魔法使いの間では"最悪の魔法"と呼ばれ、警戒されている。

 成功してしまうと、唱えた者の半径10m以内の生命が全て消滅してしまうのだ。

 土や石も生命とされているため、唱えた後は大きな穴が出来る。

 が―――――

 この魔法を唱える事に失敗したキイは、突然倒れる。


「大丈夫なのかな……?」

 相手だったテヌキーニョスも、キイのもとへ。


 すると―――――

「どういう事なの……?」

 血によるものではないが、キイの体は真っ赤になっていた。

「あ……ああ……」


 さらに、まともに言葉を発する事ができなくなっていた。

 タラタラは、それを許さなかった。

「つまらない理由で負けやがって……貴様にはここで死んで貰おう」

「……!」

 キイは抵抗しようとするが、手足に力が入っていないせいで無意味。


「えっ、ええ……?」

 横にいたテヌキーニョスも、驚く事しかできない。

「無様な姿のままで死……」

 タラタラも、剣でキイの胸を刺そうとしていた。


 その時だった―――――

「やめて、タラタラ!」

 仲間の一人であるソオが、突然タラタラを止めようとする。

「貴様もここで死にたいのか?」

「使い物にならなくなったら殺せ、と言った覚えは無い!」

 ナニイルテまでも、タラタラを止めようとする。

「馬鹿な……。 貴様等の頭は、その程度の構造だったというのか!?」

 最終的に、タラタラはキイを殺す事ができなかった。


 戦いはテヌキーニョスの勝ちという事になった。

 ドウコウは、タラタラにある事を聞いた。

「ところで、この町の住民を皆殺しにした理由は何だったんだ?」

「答えなければならないという誓約(せいやく)だったな……。 仕方ない、教えてやろう」

 偉そうな態度で、タラタラは虐殺の動機を語った。



「魔力を浴していた我は、どうやって魔力を得られるか探していた」

「そして、我は人を殺せば魔力を得られるだろうと思い、前々から気に入らなかったルーレット町に来た」

「気に入らなかった……?」

「我に対する態度が軽率的だったのだ」

「まず、我は火を着けた弓矢で町の男を殺した」

 タラタラの話の途中、ドウコウはある事を思い出した。

「……いや、待て。 前に聞いた話と違うぞ」


 それは、カキクケンコ壁穴洞窟の最深部にいた女騎士、パピプペフォルスの話だった。

『どうやら魔法騎士とやらになりたかったらしいが、魔力を得るためと言って小さな村を焼け野原にしていたな』

『そのくせ、住民の性別で殺す方法が違っていた』

「話の途中だ、静かにしろ!」

「いや、前にパピプペフォルスから、似たような事を聞いたと思って……」

「パピプペフォルス……? 貴様、あの愚かな騎士擬きからこの事を聞いていたというのか?」

「騎士擬きも何も、あいつもお前の仲間だったんだろ?」

「何故それを今……」

「自分からそう言っていたぞ。 本当かどうか聞きたいなら、カキクケンコ壁穴洞窟にいるから聞いてこい」

「貴様……!」

「それで、話は?」

「ふざけるのも大概にしろ、貴様め!」

 タラタラは言い残し、ルーレット町から去る。

「」

 ソオとナニイルテはキイを背負い、タラタラを追いかける。


 すると、倒れていた女性が立ち上がり、こう言った。

「……ありがとうございました」

「あの後、タラタラは町の家屋等に火を着けて去っていきました」

 立ち上がった女性の口からは、タラタラの殺人について話した。


「なぜ、倒れていたのですか?」

 テキトーネは、倒れていた理由を聞く。


「死んだフリのつもりでした。 そういう風に見せておかないと、殺されると思ったので……。 心配させてしまってすみません」

「別に構いません、死んでいなくて何よりです」

 死んだフリだったようだ。

 その後、ドウコウ達もルーレット町を去った。


 魔王城を目指して。

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