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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第2章:三竦みの妖魔
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第76話「堕落都市-6」

「んん……」

 目を覚ますと、そこはフローライトの居る暗い地下室だった。

 視界の中に居るのは……何処か安心した様子のトーコと、見るからにイラついているように見えるシェルナーシュの二人。

 それと角度の関係で姿こそ見えないが、アブレアの何処か呆れた気配とフローライトの楽しそうにしている気配も感じられる。


「トーコ」

「な、何?ソフィアん」

「何処まで説明したのかしら?」

 私はうつぶせの状態のまま、首だけ動かしてトーコに状況を尋ねる。


「え、えーと、ジャヨケと街の状況については一通り。後、ソフィアんを気絶させた理由についても一応」

「ふむふむ。了解したわ」

 とりあえず外に出た理由である情報収集の結果については、トーコが全員に説明してくれたらしい。

 と言う事は、それだけ時間も経っていると言う事にもなるが……まあ、此処に居る面々で昼夜の別を気にするべきなのはアブレアぐらいだし、そこは大して問題じゃないか。


「で、ソフィア。何故貴様はあんな目立つ真似をしたんだ?」

「目立つ真似?」

「街中で周囲の目も気にせずにネリーとやらの事について語ろうとしたことだ」

「ああその事」

 で、この時点で私は気づく。

 地下室の床と服が一体化していて、体を起こせない事に。

 うん、もしかしなくてもシェルナーシュの接着(グルー)の魔法だろう。


「それは勿論トーコにジャヨケなんかよりもネリーの方が素晴らしい事を……」

「ソ・フィ・ア?」

「ごめんなさい。それだけじゃないです。私の事をマカクソウ狂いだと見せかけて、挙動がマトモすぎるのを誤魔化す意味もありました。無事にいって何よりでしたが、事前にトーコに相談も無くこのような事を行った件につきましては至極反省しています。この通りです。本当にごめんなさい。なにとぞこれ以上の罰は勘弁してくださいお願いします」

 おまけにシェルナーシュが半ば本気でキレかけていた。

 うん、これは拙い。本当に拙い。私がこの体勢の状態でシェルナーシュにキレられたら、何の抵抗も出来やしない。


「はぁ……一応聞いておくが行動の理由の割合は?表、裏の順で答えろ」

「表9割以上に裏1割未満です」

「この駄蛇がぁ!」

「あぶうっ!?」

 シェルナーシュの杖が足元の石を吹き飛ばすかのように振られ、私の頭を勢いよく叩く。

 い、痛い……うっかり本音で答えただけなのに酷い。

 ヒトだったら今ので死にかねないぐらいに痛かった。


「とりあえずやるべき仕事はして、安全の確保を確実にするための行動だったと言う理由が一応あるようだから、これぐらいにしておいてやる」

「はい……」

「それでソフィア。貴方が食べた魔法使いからはどういう情報を得られたの?私たちに教えてちょうだい」

「分かったわフローライト」

 とりあえずこの件についてはもう黙っておこう。

 何を言っても私が不利になるだけだ。

 と言うわけで、地面とくっついてしまっている部分の衣装を引き千切りながら、私は体を起こす。

 なお、今の衣装に着替える際に裸を見られているので、フローライトもアブレアも私が男だと言う事は既に知っており、騒ぎになるようなことはない。

 まあ、フローライトについては着替える前から気づいていたようだが。


「とりあえずそうね……今日食べた魔法使いの記憶で、一つ確定したことはあるわね」

 私は今日食べた魔法使いの記憶を改めて確かめていく。

 そして、そこから得た情報と今までに食べた二人の魔法使いの記憶から得た情報を合わせ、間違いのない情報を定めていく。


「確定した事?具体的には?」

「この都市の勢力図よ」

「勢力図?」

「誰がどのようにこの都市を支配しているかという事か?」

「簡単に言えばそう言う事ね」

 で、その情報の一つに、この都市の勢力図の情報が有った。


「さて、一応、一から順に説明していきましょうか」

 私は適当な羊皮紙をアブレアに用意してもらうと、そこに幾つかの名前を書き出していく。


「まずマダレム・エーネミは実質的に九人のヒトによって支配されているわ」

 羊皮紙に書き出された名前は九つ。

 『闇の刃』の構成員にして、七人の長でもある四人……バルトーロ、ギギラス、グジウェン、ドーラム。

 『闇の刃』ではないが、七人の長である三人……ハーカム、トトウェン、セントロ。

 『闇の刃』の構成員だが、七人の長ではない二人……ペルノッタ、ピータム。


「で、私たちが今居る地下室がある屋敷はドーラムと言う男の物ね」

「その通りです」

「ちなみにドーラムはこの九人の中で一番の老いぼれで、祖父の代から『闇の刃』に居るらしいわ。まったく、とっとと死んでくれればいいのに」

「へー……」

「ふむ」

 表情には出さないが、フローライトの捕捉情報に私は内心で助かったと思っておく。

 奪った記憶ではドーラムが『闇の刃』の古参である事は分かっても、どのくらい前から居たのかまでは分からなかったし。


「まあ、ドーラムについては今は置いておきましょう。今はまず、この九人がどういう関係にあるのかを話させてもらうわ」

「ん?仲が悪いだけじゃないのか?」

「ソフィアんは前にそう言ってたよね」

 シェルナーシュとトーコが私に疑問をぶつけてくるが……まあ、話はそう簡単ではないのだ。


「実はコイツ等は仲が悪いだけじゃないのよ。どうにも共通の目的がある時は協力し合う事もあるようだし、普段は自分の所属する派閥の方針に沿って行動したりと、とんでもなく面倒な状態にあるのよ」

「派閥?」

「なにそれ美味しいの??」

「そ、派閥。コイツ等九人は普段、自分と近しい考えを持っている者同士で徒党を組み、行動しているの。で、その派閥だけど……」

 私は既に頭が明後日の方向に向きそうになっているトーコは無視して、羊皮紙に新たな名前を書き込む。


「この三つになるわ」

 名前の数は三つ。

 その内容は開戦派、決戦派、継戦派である。

スイッチが入ってない駄蛇は優秀

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