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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
266/322

第266話「ノムン-3」

「ガアアアァァァ!!」

「化け物だ!化け物が玉座の間に出たぞおおぉぉ!」

 ノムンだった者に理性という物は存在しなかった。

 セレーネたちを喰らおうと襲い掛かるも、攻撃を避けられたノムンだった者は突進の勢いを殺し切れずに玉座の間の外に飛び出るとその場で右腕を振り回す。

 その為にまず犠牲になったのは……、


「なんだこい……ちゃ?」

「あびゃ!?」

「ぎゃあ!?」

 ノムンを助けるべく玉座の間に踏み込もうとしていたノムン親衛隊の隊員たちだった。

 彼らは目の前に居るそれが自分たちの主君であると思わず、勇敢にも剣で切りかかり、弓を射り、槍で突き、魔法を撃ちこもうとしていた。

 だがそれよりも早くノムンだった者の右腕が振るわれ、大半の者は周囲の壁と彼らが身に付けている鎧ごと切り裂かれ、絶命していく。

 そして運よく生き残った者の攻撃が放たれるも、剣や槍の攻撃で受けた傷は傷口から新たな肉が湧き出す事によって塞がっていき、刺さった矢も溢れ出す肉によって抜けていく。

 魔法に至っては、ノムンだった者から放出されている大量の魔力によって、そもそも傷すら与えられなかった。


「正に化け物……ですね」

「陛下……いや、セレーネ。止めるよ。何としてでも」

「言われなくても。だから頼みますよ。リベリオ」

「分かってる」

 獲物を求めて暴れまわるノムンだった者は、セレーネたちの事を気にする様子もなく、右腕を振り回して壁もヒトも関係なく破壊し尽くし、ヒトを殺せたと判断したら左腕で鷲掴みにして口に運んでいく。

 その姿にはヒトらしさという物は欠片も存在せず、ノムンだった者が妖魔よりも悍ましい何かであることを雄弁に語っていた。


「では……生き残りはこちらに来なさい!ノムンは死にました!もうヒト同士の戦は終わりです!!」

 セレーネの言葉にノムン親衛隊の面々に動揺が走る。

 動揺が走っている事を確認した上で、セレーネは続けて言葉を発する。


「後はその化け物を……妖魔よりも悍ましき何かを皆で倒すだけです!だから私に従いなさい!生き残りたいならば!!」

 セレーネの言葉に疑念を抱きつつも、ノムン親衛隊の隊員たちは一人また一人とセレーネの指示に従って動き出す。

 思惑はそれぞれに異なっていたが、この場に居る全員が共通して抱いている想いが一つあった。

 それはこの場でこの化け物を殺さなければ、自分たちが殺されるという事。


「必ずここで仕留めますよ!レイミア!リベリオ!」

「「了解!」」

 セレーネの指示の下、リベリオとレイミアの二人を主体としてノムンだった者の足止めを行い、リリアが負傷者の治療を行って場を繋ぐ。

 そしてこの騒ぎに慌てて駆け付け、セレーネに指示されたソフィアによって城門が開けられ、外から西部連合と東部連盟の兵たちが増援として駆けつけることによって、ようやく状況は均衡を保てるようになる。


「「「ウオオオォォォ!!」」」

「攻撃の手を緩めるな!」

「効かなくてもいい!とにかく撃ち続けろ!!」

 最早西部連合も、東部連盟も、南部同盟も無かった。

 全員が全員、ノムンだった者を倒すべく一致団結し、壁と言う壁が崩され、廃墟同然と言ってもいいマダレム・サクミナミの城の中で奮戦し続けていた。


「クソッタレが!こんだけ攻撃しても鈍りすらしねぇ!」

「諦めるな!とにかく攻め続けるしかない!」

「コイツさえ仕留めれば全部終わりなんだ!やるしかねぇ!!」

 だが、何本もの荒縄を掛け、何百人で引いてもノムンだった者の動きを幾らか抑え込む程度の効力しか与えられず、何百と言う矢を浴びせても平然と立ち続け、それと同じくらいに切りつけ、突いても、ノムンだった者を仕留める事は出来なかった。

 それどころか、ノムンだった者の攻撃によって多くの者が傷を負い、中には治癒の魔法を掛ける間もなく死に至る者や、直接巨大な咢によって噛み砕かれ、食い殺されるものも居た。


「へ、陛下……なんか最初の時よりもデカくなっている気がするんですけど……」

「気がするのではなく、大きくなっているのでしょう」

「うーん、たぶんだけどヒトを食う度に大きくなっているんじゃないかしら」

 そんなノムンだった者の大きさは、変貌した直後は3m程度だったが、数多のヒトを手にかけ、喰らった今では5mを超す大きさになっていた。

 その事実にバトラコイは顔を青くし、セレーネは眉を顰め、自分が原因の一端であることを理解しているソフィアは背中に冷たいものを感じずにはいられなかった。


「このままじゃいけないわね。何か手を考えないと」

「ソフィールさんは効果が明確化しているものだけを使ってください。これ以上想定外が起きたら、本当にどうしようもなくなりますから」

「はい……」

 セレーネに余計な事をするなと言われたソフィアは、若干項垂れつつも懐から取り出そうとしていたとある物を懐に戻すと、『妖魔の剣(ヒンドランス)』を構える。


「では陛下、私も前線に加わります」

「お願いします」

 ソフィアがセレーネの傍から離れ、ノムンだった者に向けて駆け出す。

 また、ソフィアの視界の端では、リベリオもソフィアの支援を行うべく、再びノムンだった者に向けて駆け出していた。


「さあ行くわよ!」

「合わせます!」

「グルアアアァァァ!」

 そしてノムンだった者が、自分に切りかかろうとするソフィアを最も危険な相手だと見定め、リベリオを次に危険な相手だと認識し、二人を引き裂くべく右腕を振りかぶった瞬間だった。


「「「!?」」」

 一人の死神がノムンだった者の背後に現れた。

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