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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
259/322

第259話「マダレム・サクミナミ-1」

「おや、ソフィール殿。ようやくですか」

「烏人形はずっと飛ばしていましたけどね」

 私とペリドットがマダレム・サクミナミに着いた頃。

 既に普通の将兵たちはシェルナーシュが城壁に開けた大穴からマダレム・サクミナミの中に侵入を開始し、事前の取り決め通りにリッシブルーが残した可能性のある策や仕掛けに注意を払いつつゆっくりと進んでいるところだった。

 なお、その取り決めと言うのは、基本的に複数人で行動し、建物は必ずすべてを調べ上げ、住民は全員マダレム・サクミナミの外に用意した勾留所に強制的に移動させ、監視すると言う徹底したものである。

 まあ、リッシブルーが私も把握していない何かを残している可能性がある以上は仕方がない。


「と言うわけで、陛下とリベリオ様が御使いサーブ様よりそれぞれ一本ずつ剣を受け賜ったのも知っていますのでご安心を。ペリドット、急ぐわよ」

「はい」

「くっ……」

 ちなみにリッシブルーが既に死んでいる事を知っているのは、私とセレーネに近しい極一部の者だけである。

 死んでいるからと油断して、足元を掬われる者が出て来ても困るしね。

 そうして私は妙な突っかかり方をしてきた馬の骨を言い負かすと、セレーネの元に改めて向かう。


「陛下!」

「ソフィール。来ましたか」

 予定通りセレーネはマダレム・サクミナミの中に入らず、外でリベリオとバトラコイ、それにウィズとレイミア、リリアの五人と親衛隊を周囲に待機させ、天幕の中で待機していた。


「陛下、まずは御使いサーブ様より剣を……それも魔力が込められた特別な剣を受け賜った事に対して、お祝いを申し上げさせていただきます」

「ありがとうございます」

「そしてリベリオ様も御使いサーブ様より剣を受け賜ったとの事。おめでとうございます。リベリオ様」

「は、はいっ!ありがとうございます!」

 で、周囲の何も知らない親衛隊の面々に御使いの件について知っている事、そしてどちらも敬う対象であると見せるべく、私はセレーネとリベリオの二人に祝いの言葉をかける。

 私の立場と声をかけた順番からして、これで暗にこの国の一番はセレーネで、二番はリベリオだと示せただろう。

 何であんなことになったのかと言う事情説明は……ペリドットに言われた事もあるし、別の機会にしておく。

 今はそれどころではないし。

 なお、琥珀蠍の魔石は既にセレーネの手元に返っている。

 だいぶ魔力は失われたが、まだ効果は発揮してくれるだろう。


「さてソフィール。貴方には忠実なる(ガーデン)箱庭(ゴーレム)による支援と共に、もう一つ頼んでおいたことがありましたね。こうしてこの場に貴方がやって来たという事は、そう言う事ですか?」

「はい、陛下のお考え通りです。ノムンが用意しておいたマダレム・サクミナミからの脱出路の内、ゲルディアン将軍の力を利用しないで使えるものは全て封鎖して参りました」

 口ではこう言っているが、実際に封鎖したのは数日前の話である。

 それに実を言えば、七天将軍一の座ゲルディアンが居る限り、脱出路を封鎖した所で大した意味はない。

 そもそもゲルディアンが居れば、待ち伏せされる可能性のある備え付けの脱出路なんて使う必要もないのだから。

 まあ、それでも一応の準備として、各脱出路の出口には、道を埋めるだけでなく、幾つかの仕込みもしてきたが。


「そして、マダレム・サクミナミの中央、ノムンの居る堅牢な城の中へと侵入する準備も整っています」

 さて、今更な話だが、簡単に言ってマダレム・サクミナミは二層構造になっている。

 つまり、外の城壁を抜けた先には市街地があるが、その市街地を抜けた先、マダレム・サクミナミの中心部には周囲を高い城壁に囲まれ、出入り口も外の城壁と同じかそれ以上に堅固な門になっているノムンの屋敷……いや、城がある。

 そのため、普通にマダレム・サクミナミを攻略しようと思えば、まず外でマダレム・サクミナミの軍勢と野戦を行い、続けて城門を突破し、その後に今一般の将兵が行っている市街地戦を行った後、二つ目の城壁を越えて、戦いに備えた構造になっている城内に突入しなければならず、非常に厳しい戦いを強いられることになるのである。

 だが、戦いに時間をかければ、それだけ問題が発生するし、ノムンが後天的英雄として目覚めた今の状況だと、時間が経過すればするほどに何か不測の事態が起きる可能性が高まる事になる。

 そもそも相手の考える通りに進行してやる義理なんてものはない。


「何人連れて行けますか?」

「七人。それが限界ですね」

 と言うわけで、私とセレーネが考えたのは、少数精鋭で地下から城内に侵入し、ノムンとゲルディアンの首を直接狙うと言う戦術である。


「七人……もう少し何とかならなかったのですか?」

「申し訳ありません。陛下。ですが、相手にゲルディアンが居る以上、これが確実につれて行けると私が言える人数です」

 私は自分の背後に中にヒトが入れるサイズの忠実なる(スネーク)(ゴーレム)を、普段よりも丸っこくデフォルメした形で出現させる。

 なお、ゲルディアンが居なければ、市街地から城内にトンネルを繋げて攻め入り、門を奪って大軍で攻め入ると言う手法も使えたが……たらればである。


「分かりました。では、私、リベリオ、バトラコイ、レイミア、ソフィール、リリア、それにペリドットの七人で行きましょう。ウィズは私に代わって全体の指揮を、親衛隊はウィズの護衛をお願いします」

 セレーネの言葉に全員が承服の言葉を返す。

 そしてセレーネから順に土の蛇の中に入り、予定通りに七人全員が入ったところで、私たちは地中を通る形でマダレム・サクミナミの中心へと向かい始めた。

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