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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
244/322

第244話「準備-6」

「ソフィール・グロディウス。只今戻りました。陛下」

「久しぶりですね。ソフィール」

 さて、ウィズとレイミアの二人にペリドットの事を紹介した後、私はペリドット一人を自分の部屋に残し、セレーネの執務室にて帰還の報告を行っていた。


「それで、暗殺者に襲われたとの事ですが、傷などは?」

「まったく負っていませんので、どうかご安心を」

「そうですか。それは良かったです」

 で、そうなると当然の事ではあるが、忠実なる烏の魔法によって調べた各地の戦況報告だけでなく、小屋での作業中にペリドットたちに襲われた件についても話す事になる。

 まあ、この部屋には私の正体を知っているセレーネとリベリオだけでなく、私の正体を知らないバトラコイや侍女の類なども居るので、暗殺者に襲われたから返り討ちにした、暗殺者の組織は壊滅していた、壊滅には恐らくはリッシブルーが関与している、と言った事しかこの場では話せないが。

 そうしてその辺りの事を話したところ……


「リッシブルー……またあの男ですか……」

「ええ、またあの男です。まあ、今回私を狙った件については下部組織の暴走に近いようですが」

「だとしてもあの男が危険な存在である事には変わりないでしょう。部下からの報告が確かなら、今も各方面への工作を行っているようですし」

「陛下。落ち着いてくださいませ」

「すみません。そうですね。此処で感情のままに動けば、それこそ敵の思うつぼでしたね」

 セレーネはリッシブルーに対して明らかな負の感情を向けつつ、そう言葉を発した。

 なので、私はセレーネの事を諌める。

 実際、下手な英雄よりもリッシブルーが厄介なのは確かであり、私だけでなくセレーネも同様の評価を下している。

 だがしかし、だからこそ落ち着いて対応しなければ、足元をすくわれかねない。

 アレはそう言うタイプの敵である。


「しかしソフィール。これだけは言わせて下さい。私はあの男を早々に始末するべきではないかと考えています。それこそ琥珀蠍の魔石に嫌われるような方法を用いてでも。放置すれば、こちらの被害をいたずらに大きくしかねません」

 セレーネは私の事を若干睨み付けるようにしつつ、リッシブルーを汚い手段を用いてでも始末するように言ってくる。

 なお、琥珀蠍の魔石に嫌われるような方法と言っているが……サブカはたぶん方法よりも動機と対象の方を気にするので、リッシブルー相手に何をしても琥珀蠍の魔石がセレーネを拒絶することはないだろう。


「そうですね。確かにあの男を放置し続けるのは危険でしょう。ですが、まだその時ではありません。そして、不要な手出しは控えるべきです」

 そして私はそんなセレーネの要求を拒絶した。

 私の反応にリベリオとバトラコイの二人はとても驚いているが、セレーネは至極落ち着いている。

 それどころか、私が何を考えているのかを読み取ろうと、思索を重ねている。

 私は理由を説明しない。

 求められない限りは答えを言うべきではないからだ。


「今が時ではないというのは、リッシブルーがノムンが最も信を置くヒトだからですね」

「ええそうです」

「では時が来れば、貴方の手でリッシブルーは討ち取るのですね」

「必ずや討ち取りましょう」

「分かりました。ではソフィール、貴方の言葉を信用して、今は防衛に徹しましょう」

 どうやらセレーネは私が何を考えているのかを察してくれたらしい。

 実際今はまだ少しリッシブルーを始末するには早いのだ。

 セレーネが強く望むのなら始末するが、出来ればもう少し後に……替えを見つける時間を与えない所で消したい所なのである。


「それと、そう言う事ならばリッシブルーがこちらに対して行ってくるであろう妨害工作の予想とその対処法をまとめて、私に提出するように。貴方が防衛を望む以上は、その計画書ぐらいは提出してもらわなければ、周りが納得しないでしょうし」

「……御意に」

 なお、セレーネは出会った当初に比べて各段に強かなヒトになったようである。

 まあ、ペリドットの訓練にはちょうどいいか。


「さてそれでは私は……」

「ああそれと、貴方にはもう一つ訊く事が有りました」

「何ですか?陛下」

「小屋での作業によって、貴方が造りたいと思っていた物は造れましたか?」

「勿論、造れましたとも」

 私はセレーネの言葉に腰に挿してある『妖魔の剣(ヒンドランス)』に片手を添える。

 傍目には今まで私が挿していた剣と変わらないが、魔力を見る事が出来るリベリオには私の剣がまったくの別物になっているのが分かった事だろう。

 そしてそのリベリオがセレーネに羊皮紙の切れ端のようなものを渡しているので、セレーネも『妖魔の剣』の存在には気づいたはずである。


「今は私の魔法で誰も手出しできない場所に保管、封印してあります」

 加えて私のこの言葉で、同じような物を別に私が造っていることにも二人は気づいたはずである。


「機会が無ければそのまま破棄することになりますが、お見せする時が来れば、必ずや陛下のお力になる事でしょう」

「そうですか。期待しています」

「では、失礼させていただきます」

 そうして私はセレーネの執務室を後にしたのだった。

 詳しい事は……まあ、セレーネたちが暇な時にでも忠実なる蛇を向かわせて、話しておくとしよう。

地味にリベリオがセレーネ付きの文官に昇進してます。


10/06誤字訂正

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