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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
239/322

第239話「準備-1」

 さて、マダレム・シーヤは西部連合に加わった。

 兵、装備、いずれも大した被害も無く、マダレム・シーヤの修復と進軍の準備さえ整えば、南に進軍し、道中の小さめの都市国家を制圧しながらマダレム・サクミナミに向かう事は出来るだろう。

 だが、流石に現在マダレム・シーヤに留まっている西部連合の兵たちとマダレム・シーヤの兵だけでマダレム・サクミナミを落としにかかるのはよくないだろう。

 兵力と言うよりは政治的な問題でだが。


 と言うわけで、今は待ちである。

 具体的にはベノマー河以西に存在する南部同盟の都市国家を、セレーネたちと別行動をとっている西部連合の面々が落とす事。

 それと、マダレム・サクミナミの南は海辺にあるマダレム・シニドノを西部連合の海軍が陥落させる事。

 この二つは絶対に待たなければならない。

 そして、この二つを落とした面々とセレーネたちが合流して、全員でマダレム・サクミナミを落としにかかるというのが、今後の大まかな流れである。


 東部連盟の方は……おおよそ一年前のトリクト橋前の一件時に隙を突かれて取られた二都市を包囲し、マダレム・サクミナミとの間に存在している補給線を分断してくれればそれで十分だろう。

 その補給線が分断されれば、南部同盟の首都であるマダレム・サクミナミは人口と生産能力の関係上、飢えに苦しみ始めることになるのだから。


 勿論、待ちと言っても、セレーネたちには色々とやるべき仕事がある。

 そして私にも仕事がある。

 各地の戦場を忠実なる烏の魔法で上空から観察し、助言や指揮を行うと言う仕事が。

 当然、セレーネは私のこの仕事を重要視している。

 なので他の仕事を回さず、この仕事に集中できるようにしてくれている。

 ただこの仕事……うん、頭は使っても、身体は使わない。

 ぶっちゃけると手持ち無沙汰になってしまうのである。


「警備ご苦労様」

「お気遣いありがとうございます」

 と言うわけで、私はちょっとフロウライトに戻って来ていた。

 目的は二つ。


「じゃっ、ちょっと中に入れさせてもらうわね」

「どうかお気を付けを」

 その内の一つは例のウィズの件について、インダークの樹を問い質す事である。


「ええ、気を付けるわ」

 そうして私はインダークの樹のものとした領域を囲う塀を越え、塀の中に入ったのだった。



--------------



「結構入り込んでる馬鹿が多いのね」

 塀の中は密度の濃い森と化していた。

 ただ、この森が普通の森でない事を示すように、草木の下にはヒトの骨と思しきものが幾つも転がっている。

 まあ、気にする必要はないだろう。

 どうせ何も知らずに踏み込んだ阿呆か、ここに貴重な何かがあると勘違いした愚か者かのどちらかであろうし、この領域に入り込んだヒトは好きにしていいと言うのが私とインダークの樹の間で交わされた契約なのだから。


「さて、久しぶりではあるけれど……挨拶も事情説明も不要みたいね」

 やがて私はインダークの樹の前に辿り着き、少し離れた場所からその全体像を眺める。

 するとインダークの樹は私が来る事が予め分かっていたと言わんばかりに魔力を放ち、私にその場へ座るように誘導してくる。

 なので私もその場で地べたに直接腰を下ろすが、使役魔法によって私が座っている部分の土は支配して、急に何かを仕掛けられても反応できるようにはさせてもらう。


「で、貴方の用件は何かしら?」

 さて、この時点で私はインダークの樹が例のウィズの件に関わっている事を確信すると共に、私を呼び出す為にあの現象を起こしたのだと考えていた。

 そしてその考えは間違っていなかったのだろう。

 インダークの樹から放たれる魔力の性質が微妙に変化し、周囲の草木と地面を少しずつ揺らし始める。


「これは……音?いや、声?」

『9ksdba y0;dxwq5い』

 やがて聞こえてきたのは草木と地面が振動することによって発せられる音。

 いや、何かしらの意図を持って発せられるそれは、音と言うより声と言った方が正しいかもしれない。


『8おお8kt0fx7い い0rskj8おk9 う58えざい いwyzふh9 dkfw85い』

「……」

 ただ……


『qjssk r9いうl』

 音程も音の強弱も、何もかもがおかしいため、私の耳には声として認識できず、雑音としか感じられなかった。


『3dvdざhw dk7えくぉうlは60いnA い4おfせq5r8Aう』

 大切な何かを言おうとしているのは、インダークの樹の様子から何となく分かるのだけれど……うん、これは無理。

 理解できない。

 せめてどういう風に変換しないといけないのかが分からないと、理解のしようがない。

 まあいずれにしてもだ。


「心配しなくても、貴方の害になる様な真似をする気はないわ。そして、貴方の助けを借りる気はない。国と言うものは、ヒトの力によって建てられるべきものなのだから。貴方はそこでただ見守っているだけで構わない。それでもなお力を貸すというのなら、対価は求めないで頂戴」

 今後インダークの樹の力を借りるつもりはない。

 これだけははっきりと言っておくべきだろう。


「じゃあね」

 そうして言うべきことを言った私はこの場を後にしたのだった。

あ、理解できなくても大丈夫です。

きちんと暗号化できているかも怪しいですし。


10/01誤字訂正

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