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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
212/322

第212話「橋架け-1」

「ソフィール将軍。準備、整いました」

「分かりました。では、作業を開始してください」

 レーヴォル暦一年、春の二の月(二月)

 冬の寒さも薄れてきた頃、各種準備も整ったという事で、私は例の計画……ベノマー河に橋を架ける作戦を始めることにした。


「はっ!」

 作業開始の号令と共に、数隻の河舟がロープの片側を持った状態で、川の流れと妖魔の両方に注意を払いながら渡河を始める。

 まあ、今回の作戦は私の持てるすべての知識と伝手の大半を利用する形で立案、実行されている物なので、警戒している兵士には悪いが、少しでも安全性を確保すると言う事で、実は既にベノマー河のこの辺りに住んでいる妖魔たちにはベノマー河の下流に移動させていたりする。

 下流の住民は大量発生した妖魔によって被害を受けるが……まあ南部同盟の戦力を削る事に繋がるので問題はないだろう。


「ロープの設置、完了いたしました!」

「では第二段階へ」

「了解いたしました!」

 そうこうしている内に河舟は対岸に到達。

 兵士たちは対岸の予め定めてあったポイントに杭を撃ち込むと、引っ張ってきたロープの片側を杭にしっかりと結びつける。

 そしてロープがしっかりと張られたところで、無数の河舟を川の流れに対して平行になるように並べると、河舟と先程張ったロープを結びつけ、河舟同士もある程度の余裕を持たせた上で繋げていく。

 で、最後に河舟の上に木の板を並べて、簡易の橋を造り出す。

 これで大きな資材でも簡単に対岸まで運ぶことが出来るようになるだろう。

 川の流れと風の吹き方によってはかなり揺れるが……まあ、そこは慎重に作業をやってもらしかない。


「資材の運搬と砦の建造開始します!」

 簡易の橋が出来上がったところで、次は対岸に盗賊(南部同盟)と妖魔対策として、簡易の砦を建築する。

 こちらはマダレム・エーネミの城壁を直した時と同じで、まずは木材で簡易の砦を建築し、その後に橋の完成後も関所として兼用出来るような石造りの砦を造る予定である。

 なお、ベノマー河を渡った先は一応東部連盟の領域と言う事になっているため、事前にオリビンさんを通じてマダレム・バヘンと交渉をし、砦の設計図の写しと今後緊急時にマダレム・バヘンの者にも砦を使用する権利などを与えることで、砦の建築を行う許可を貰っている。

 まあ、これぐらいの譲歩は致し方ないと言うか……流石に東部連盟の中でも前線と呼ぶべき位置の都市を運営しているだけあって、マダレム・バヘンの有力者たちは抜け目がなかった。

 ま、彼らとの今後の関係も考えると、むしろこれで良かったのかもしれない。


「網の設置を開始します!」

 さて、砦についてはこれぐらいにしておくとして、橋の建造に話を戻すとしよう。

 実際には既に居ないはずだが、ベノマー河の中には水棲の妖魔が大量に生息している。

 そのため、河の中で作業をするにあたっては、妖魔対策は必須に他ならなかった。

 ではどうやって妖魔に襲われないようにするのか。


「設置完了しました!」

「ルズナーシュ殿」

「言われなくとも。電撃魔法、行使開始!」

「「「はっ!」」」

 ルズナーシュの号令に合わせて、『輝炎の右手』の魔法使いたちが河舟の下の水中に向けて電撃を放つ魔法を放つ。

 するとそれらの魔法は水の中を良く伝わるという特性によって、河舟の下に潜んでいた魚たちと、私の言う事を聞かずに留まっていたらしい魚の妖魔(サハギン)を焼いていき、絶命させる。

 そして、河舟の下の脅威がなくなったところで、河舟のすぐ上流と下流に設置した鉄線を編み込んだ重り付きの網をゆっくりと移動させ、魚も妖魔も居ない空間を河の中で広げていく。


「ソフィール殿」

「ええ、ここからは私の番ね」

 網が所定の位置に移動した所で、私はその場で膝を着き、魔石を間に挟む形で片手を地面に付け、使役魔法を発動して、この辺り一帯の地面を支配下に収める。

 そして魔法が安定した所で川底の地面を操作して、今後網の下を妖魔がすり抜けたりしないように、重りを川底の地面の中へと飲み込んでいく。

 これで、網の中に妖魔が発生したりしなければ、橋の建築中ぐらいは大丈夫だろう。


「すぅ……はぁ……さて、ここからが本番ね」

 問題はここからだ。

 私は一度深呼吸をすると、改めて使役魔法を発動し、意識を集中させる。

 で、十分に集中が高まったところで、地脈を通じてこの場から少し離れた場所の地面にも使役魔法の範囲を広げると、ベノマー河の川底の地面と少し離れた場所の地面を地中で繋げる。


「ふんっ!」

 そして、気合を入れるための一声とともに、繋げた地面を移動させ、少し離れた場所の地面をくぼませつつ、ベノマー河の川底を数か所底上げする。

 川の上にその姿が見え、まるで中洲が出来たかのように見えるほどに。


「「「おおっ!」」」

「「「凄い……」」」

「これがソフィール・グロディウスの魔法か……」

「何と言う力だ……」

「まるで奇跡でも見ているかのようだな……」

「ふぅ……」

 周囲から歓声や感嘆の声が上がる。

 ああうん、うまくいって良かった。

 これで、河の中で石を積むという、危険な作業をしなくて済むだろう。

 まあ、魔法によって無理やり盛り上げた物なので、後で戻す事になるのだが。


「それじゃあセンサト、リベリオ、後はよろしくね」

「はい!」

「ええ、任せておいてください」

 何にしても大量の魔力を使って疲れた。

 と言うわけで、私は後の事をセンサトとリベリオの二人に任せると、自分の屋敷に戻って干し肉を食べることにしたのだった。

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