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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
195/322

第195話「ロシーマス-9」

「味わうがいいっ!彼のシチータ王に勝るとも劣らぬ我が疾風の剣技を!」

 ロシーマスが爆発したかのような勢いで土煙を巻き上げつつ、こちらに向かって勢いよく突撃を仕掛けてくる。

 なるほど確かに速い。

 シチータにも劣らないというのも過言ではないだろう。


「死……何っ!?」

「温いわねぇ」

 尤も、最盛期のシチータではなく、私が最後に戦った毒で弱った頃のシチータの速さと比較しての話だが。


「ぬおおおおっ!」

「はいはいっと」

『さて、リベリオ。英雄の倒し方その一。相手の情報を調べ上げなさい』

 一撃目を容易く防がれたロシーマスは、私の事を殺すべく両手の剣を激しく振るう。

 が、その動きは直線的でただ速いだけ。

 重さも無ければ、破壊力も無く、最盛期のシチータを知っている私にとっては当たれば怖いが、防ぎ、避けるのは大して難しくない攻撃でしかなかった。


『調べ上げる?』

『相手がどういう武器や魔法を使うのかは勿論の事、性格、癖、交友関係に出自、その他諸々調べるだけ調べなさい。まず相手の情報を揃えなければ、策の練りようがないもの』

 そうやってリベリオとの会話に思考を割きつつも、私はロシーマスの攻撃をいなすと同時に観察をする。

 なるほど確かに良く鍛えられてはいるのだろう。

 が、今まで自らの速さに付いてこれるものが居なかったせいか、その動きは正直で、本人としてはフェイントを織り交ぜているつもりだろうが、私の目にはバレバレである。


「このっ……」

「あらっ」

 と、ロシーマスが僅かに距離を取ったところで、凄まじい速さで移動することによってその姿を眩ませた。

 なので、私はハルバードから左手を離すと、そのまま自分の背後に向けて裏拳を放つ。

 すると……


「ぐごっ!?」

 私の予想通り、左手の拳に何か堅い物が当たり、その下に有るものを撃ち砕くような感触がする。


「こんな柔腕に殴られて吹き飛ぶだなんて、想像以上に軽いのね」

「がっ、ぐっ、がはっ!?」

 そしてその直後に、ロシーマスが地面の上を何度も跳ねながら転がっていき、左上腕を抑えながら蹲る姿が私の視界に入ってくる。


『英雄の倒し方その二。情報に基づいて、相手の思考力、判断力を可能な限り削ります』

「ぐっ……馬鹿な……」

 何が起きたのかは言うまでもない。

 ロシーマスが私の背後に回り込んで切りつけようとしたら、私の裏拳が当たって吹き飛ばされただけだ。

 今の動きは中々に速かったが……ロシーマス自身の感覚が速さに追いつけていないのだろう。

 私の事を見るロシーマスの目が微妙に有り得ない物を見るようなものに変わっている。

 と言うわけで……


『削る……』

『ええそうよ。だから……』

「ふふふっ、夜のお仕事が忙しくて昼の訓練が疎かになっているのかしらね。夜のお仕事は相当激しいものでしょうしねぇ」

「き、貴様あああぁぁぁ!!」

 煽る。

 恐怖ではなく怒りを。

 勇敢さを蛮勇に変えるように、理性ではなく感情で動くように、澄んだ目を曇らせように、諌める声を雑音とするように。


「死ねええぇぇ!!」

「あはははは!遅い!温い!つまらない!こんなのが七天将軍二の座だなんてノムンも見る目が無いのねぇ!」

 煽る。

 相手の根幹を揺さぶり、退く事が出来ぬように、貶め、穢し、辱める。

 正しき賛辞を隠し、ヒトとして間違えた嗜虐の心、侮蔑の心、余裕に満ちた心だけを顔に出す。


「このっ!このっ!このをおぉぉ!!」

『こうして平常な心を削られ、勝負を急ぎ、勝つことに焦る者の行動は読みやすい。今までよりも遥かにね』

『……』

 ロシーマスの動きは最初と比べて、明らかに鋭さと速さを増していた。

 だが、速さと鋭さが増すのに合わせてその動きは単調となり、私がロシーマスの攻撃を凌ぐのに費やす動きは先程よりも小さく、少なくなっていく。

 それこそロシーマスから見て、私は身動きを殆どしていないかのように。


「この化け物がっ!ならば……」

『さて、英雄の倒し方その三』

 焦ったロシーマスは、碌な隙も生じていないのに、私から距離を取って、構えを取る。

 昨日見せた竜巻を放つ構えを。

 なるほど確かにあの竜巻ならば、当たれば私でも死は免れないだろう。

 だがしかしだ。


「これでっ……」

『焦った英雄は形勢を逆転させるべく大技を撃とうとするわ』

 その竜巻を放つ前の溜め。

 それこそが私が待っていたものである。


『その時の英雄は不安に思いつつも、一瞬安堵もするの。これで終わる、これで勝てるってね。だからそう思ったところに撃ち込むのよ』

 と言うわけで私は靴裏と周囲の地中に仕込んだ魔石を発動。


「えっ?」

「「「!?」」」

『!?』

『不可避にして致命的な一撃をね』

 使役魔法によって周囲の土を改めて操作し、ロシーマスの足元に私が伸ばした腕の先で水平にハルバードを持って一周した程度の大きさを持つ穴を出現させる。


「なっ……」

 ロシーマスが私十人分ほどの深さを持つ穴の中に落ちていく。

 と同時に、私は懐にしまっておいた魔石の一つを左手で軽く放り投げ、穴の上に到達した所で魔法を発動。


重い石(ヘビィストーン)

 穴の上に穴の直径と同じぐらいの大きさを持った特別な岩……鉄や鉛と言った重い金属を多く含む岩が出現する。


『以上、英雄の倒し方でした。まっ、自分が嵌められないためにも覚えておきなさいな』

 岩は自然の理に従って穴の中に落ちていく。


『……。はい』

 速度を増し、破壊力を増し、その下にあるもの全てを撃ち砕く鎚となって。


「敵将、七天将軍二の座ロシーマス」

 そう、当然の話であるが、打ち砕かれるものには、岩よりも先に穴の中に落ちたものも含まれる。


「討ち取ったり」

 そして、何か固い物が押し潰され、弾け飛ぶような音が、大地の底から地上の戦場へと響き渡った。

     正にロ歯-(改行)

mase!


あ、はい。名前はこれがやりたかっただけです。

現実のロシーマスに関わりのある皆様すみません。


08/19誤字訂正

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