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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
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第194話「ロシーマス-8」

挑発ではありますが、今回だいぶアレな表現がございますので、駄目だと感じられた方はブラバでお願いします。

「西部連合の諸君!貴様等に一つチャンスをやろうではないか!」

 翌朝。

 布陣を終えた私たちの耳に飛び込んできたのは、思いもよらない言葉だった。


「我が名は七天将軍二の座ロシーマス!我こそはと言う勇の者が軟弱なる西部連合の軍勢に居るのであれば、我と一騎打ちを行おうではないか!!」

 それは私たちが望んでいた一騎打ちを持ちかける言葉。

 そして、その言葉を発したのは……馬に乗らず、左の腰に細身の剣を、右の腰に肉厚の短剣を挿した鎧姿の男。

 細く歪められた口元と短くまとめられた緑色に近い髪からは何処となく軽薄な感じが、嗜虐心に満ちた瞳からは、自分の実力に自信を持っている雰囲気も感じられた。

 私は今まで忠実なる(スネーク)(ゴーレム)の魔法越しに見た事が有るだけだが、間違いない、あの男は七天将軍二の座ロシーマス本人である。


「さあ出てくるがいい!それとも西部連合は臆病者の集まりか!?」

「ソフィール将軍……」

「いきなりトップが出てきたのは予定外だったけれど、計画通りに事を進めましょう。まずは出たいヒトから出すわ」

「了解しました」

 センサト経由で私が発した命令によって、一人の男が兵士たちを掻き分け、全員の目が触れる場所にまで出てくる。

 彼は馬に乗っていたが、ロシーマスの前に来ると馬を降り、腰に挿していた剣を抜き、左手に持っていた盾と共に構えた。


「ほう。お前が最初の犠牲者か」

「その大口、今に叩けないようにしてやる」

 そしてロシーマスも、両方の腰に挿していた剣を抜くと、ゆっくりと構える。


「ふはははは!雑魚が!やれるものならやってみろ!」

「!?」

 勝負は……一瞬だった。


「これが七天将軍っすか……」

「いいえ、こんな物ではないわ」

 こちら側の男に先手を譲ったロシーマスは男の剣を左手の短剣で防ぐと、男に動揺する暇も与えないほど速く振るった右手の剣で鎧の隙間を狙い、首を突き刺し、そのまま刎ねる。

 刎ねられた男の顔は、自分の身に何が起きたのかも理解できていない様子だった。

 それは全くもって『疾風』の名に相応しい攻撃だった。


「さ、二人目よ」

「了解」

「……」

 南部同盟の側から歓声が湧き上がり、西部連合の兵士たちに動揺が広がる中、私は二人目の希望者を募り、出す。

 だがその結果は一般の兵士にとっては暗澹(あんたん)たるものだった。


 こちらの二人目は馬に乗ったまま弓を射かけ、矢を避けたロシーマスが近づこうとすれば馬を駆けさせる腹積もりだった。

 だが、ロシーマスは矢を躱すどころか、走る馬に自らの脚で走って追いつき、切り捨てた。


 三人目は火の魔法を使う魔法使いであり、遠距離から一方的に焼き払うつもりだった。

 だが、ロシーマスに向けて放った火は、ロシーマスから放たれた暴風に押し戻され、大きく火勢を増した炎によって逆に焼き尽くされてしまった。


 四人目は槍を使う戦士だったが、最早勝負にもならなかった。

 槍を突き出そうとした瞬間、ロシーマスはその背後に風のような速さでもってまわり込み、切り殺されてしまった。


 正に疾風。

 そして七天将軍と言う南部同盟でノムンに次ぐ軍事の有力者である事を全員に納得させる実力だった。


「ま、私には関係ないけどね」

 尤もだ。


「出るので?」

「もう他に武勲が欲しいって子も居なさそうだしね。そろそろ終わりにしましょう」

 ここまでは私の想定内。

 彼らは死んでも問題はないし、ロシーマスを倒して武勲を得ても良い人材だった。

 そして四人目が死んだ時点で、他の死んでもいい人材は腰砕けになり、一騎打ちに臨もうという気概がある者は居なかった。

 だから想定通りに、計画通りに私が出る。

 死んでもいい人材は居ても、負けていい戦いではないのだから。


「次は貴様か。何と言う名前だ?」

 私はロシーマスの前にまで馬を進めると、ハルバードを右手に持った状態で馬から飛び降りる。

 出来る限り周囲の目を惹くよう、鎧の飾りをはためかせるように大きな動きで。


「西部連合、グロディウス商会会長ソフィール。今回の我が軍の総責任者よ」

「ほう。貴様がそうなのか……」

 私の動きに目を惹かれることも無く、ロシーマスは獲物を見つけたと言わんばかりの表情を向けてくる。

 その表情で私は悟る。

 ああやっぱり今回の戦いは嵌められ、誘い出されていたのか、と。

 まあ、ロシーマスにではなく、その後ろに居るはずのノムンとリッシブルーにだけど。


「我が王ノムンの命により、貴様の首、貰い受けるとしよう」

「お断りよ。私の命はアンタみたいな三下にくれてやれるほど軽いものじゃないわ」

「三下だと?貴様、この俺を三下と言ったのか?」

「ええ言ったわよ。三下の噛ませ犬。アンタなんて、ノムンの下でキャンキャン吠えているだけのクソ犬じゃない。今帰れば見逃してあげるわよ。ノムンのバター犬ちゃん」

「……!?」

 私の挑発にロシーマスは顔を真っ赤にしているが……まあ、フリだろう。

 流石にこの程度の罵りでガチ切れするような奴が七天将軍程の座に収まっていられるとは思えない。

 それよりもだ。


『リベリオ。よーく見ておきなさい。あのシチータと戦い続けてきた妖魔の実力がどれほどのものなのかを、妖魔の天敵であるはずの英雄をどうやって殺すのかをね』

『!?』

 私は使役魔法によってリベリオにだけ聞こえるように語りかける。

 その事にリベリオはかなり驚いているようだが、今回の戦いは是非一瞬たりとも目を逸らさずに見ていてもらいたいのだ。


「き、き、貴様ああぁぁ!俺だけでなく親愛なる陛下までも愚弄するかあぁぁ!!」

「あーあー、躾の足りないバカ犬が煩いわねぇ。いいから早くかかってきなさいよ。しかも何?親愛なるって、親愛じゃなくて性愛の間違いじゃなくて?武器捨ててケツでも出せば、私のこのかったーいハルバードで掘ってあげるわよ」

「殺す!殺すっ!殺すっ!!」

「ふふっ……」

 なにせ対英雄の教材と言うのは非常に貴重なのだから。

強いなぁロシーマス

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