表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第4章:蛇の蜷局囲う蛇
188/322

第188話「ロシーマス-2」

「以上が報告となります」

「ご苦労様。いやー、まさか北部三都市との交渉に赴いたら、西部連合全体の粛清が出来るとは思わなかったわぁ」

 マダレム・セイメに帰ってきた私は、ウィズから私が居ない間に起きた事の報告を受け取っていた。


「まったくです。父上から突然書状が届いたことはともかく、まさか西部連合の誰が南部同盟と繋がっているかなどと言う特大の爆弾を押し付けられるとは思いませんでしたよ」

「ふふふふふ。でもウィズ?」

「ご安心を、南部同盟と繋がっていると言うだけで、粛清の対象にするようなことはしませんでした。全員が全員好きで繋がっていたわけでもなければ、西部連合を裏切っていたわけでもありませんからね。それに、処分のし過ぎで、余計な怨みを買うのもよく有りませんしね」

「よろしい」

 実を言えば、今回の件はウィズに課している私の跡を継ぐための勉強として活用していたの。

 が、どうやらウィズは私が求める結果をきっちり出してくれたらしい。

 うーん、義理とは言え、息子の成長が感じられるのは嬉しいものである。


「それよりも父上。今回の件がどういう事か分かっていますか?」

「分かっているから安心しなさい」

 ただ懸念事項もある。

 それは今回の策を立案し、実行役に指示を出した存在……七天将軍の一人、諜報を専門とする男、リッシブルーとその配下たちだ。

 彼らについては私の手元にもそれほど多くの情報はない。

 今回の黒装束たちから得られた情報にしても、彼らがリッシブルーの配下の一人を責任者とした末端の実行部隊である事や、彼らが今までにどういう活動を行い、どこに拠点を持っているか、彼らの組織がどのような構造になっているかぐらいである。

 その組織構造は……うーん、『闇の刃』の懲罰部隊が一番近いか。

 末端の構成員は一緒に行動する仲間と直上の指示役しか知らず、直上の指示役もごく限られた範囲しか構成員を知らないという厄介な形態である。

 で、彼らの何が問題かと言えば……


「今回の策は私がどういう風に動くかをよく考えた上で、綿密に計画された策だった。つまり、私を消すのも目的の一つだったという事でしょう」

 彼らが私の思考を読んでいると言う点が問題なのだ。


「そうです。それで……」

 そう、私が北部三都市との交渉に赴くまでは良い、それは今回処分した連中を利用して、命令を出せばいいのだから。

 問題は私が北部三都市を無視して、シムロ・ヌークセンに居るリリアの元に向かう事を読まれていた点だ。

 あの時は深く考えなかったが、これは私の思考と手口をよく知り、どう動くかを読まなければ、打てない一手のはずである。

 これは色々と裏で策を練るタイプの私にとっては相当に拙い事である。


「何もしないわ」

「はっ?」

 が、そうと分かっても、私が彼らに対して何かをする事はない。

 今はまだその時ではないからだ。


「何もしないと言ったの。リッシブルーとその部下たちについては、一先ず放置するわ」

「いいの……ですか?」

「ええ、それで構わないわ。だって……」

 何故か。

 相手の諜報組織の全容が把握できていないというのが最大の理由ではあるが、彼らを潰すメリットよりもデメリットの方が現状では大きいと言うのもある。

 そう、迂闊に潰そうとすれば、生き残った者が組織を再建してしまう。

 そして、生き残った者がある程度優れた者であれば、再建された組織は潰された反省から、以前の組織よりも強固で強力なものになるだろう。

 しかも今回の場合は、各種事情からノムンと言う強力な最高権力者を残さざるを得ない。

 とまあ、ここまで分かっているのだから……まあ、現時点では組織の全容を把握するにとどめ、潰したい時に潰せるように、利用したい時に利用できるように、準備を整えておくのが限度である。

 で、その辺りの事をウィズに話したところ。


「やはり私は精進不足ですね。難敵であるからこそ潰さないでおくと言う手もあるのですか」

 と、目を輝かせながら言って来たのだった。

 まあ、難敵は早くに潰すというのも間違いではないし、普通はそうするべきだと私も思うけどね。


「ま、諜報と政治関係についてはここまでにしておきましょうか。そろそろ暇そうにしてきているし」

「え、あ……そうですね。では、セレーネ様とリベリオの教育具合についての話をしますね」

 さて、リッシブルーについてはこのぐらいにしておくとして、ある意味ではリッシブルーやノムンよりも更に厄介で重要な問題についてである。

 それはセレーネとリベリオの教育。

 私が北部三都市の方に赴く前に、ウィズ、ティーヤコーチ、シェルナーシュの三人に任せたわけだが……さてどうなったのだろうか?


「まず基本的な読み書きと四則演算につきましては、お二人ともほぼマスターされました。どうやらシスターの教育が良かったようです」

「ふむふむ」

「魔法については……」

 ウィズの視線が部屋の椅子の一つで暇そうにしていたシェルナーシュに向けられる。


「魔法については基本的な知識は既に教えた。今はリベリオについては例の魔法の制御訓練。セレーネについてはどのような魔法が世の中にあるのかと言う話をしている」

「なるほど。確かにそれは教えておいて損はないわね」

 どうやらセレーネもリベリオも、私の想像以上に頑張っているらしい。

 これは良い傾向と言えるだろう。


「それで魔法以外についてですが……」

 後は……彼女たちが他に何を学びたいと思い、それについてウィズたちがどうしたかである。

この時点でお察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、口に出してはいけませんよ。ええ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ