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ソフィアズカーニバル  作者: 栗木下
第2章:三竦みの妖魔
108/322

第108話「滅び-2」

「ボソッ……(全員、準備は良いわね)」

 数日後。

 私、シェルナーシュ、トーコ、サブカの四人はマダレム・エーネミの地下水路の一角、壁一枚挟んだ先に、秘密の地下通路が存在している場所にやって来ていた。


「ボソッ……(じゃあ、いきましょうか)」

「ボソッ……(分かった)」

 私は壁の向こうと、その周囲にヒトが居ない事を確認すると、ペルノッタの知識からシェルナーシュが新たに習得した魔法を展開する。

 そして展開が無事に終わったことを確認した所で、私が全力でハルバードを振るう事によって、破壊の規模に反して異常に静かな音と共に、レンガの壁を破壊。

 と同時に、私が開けた穴からサブカとトーコが地下通路の中に突入する。


「敵影なし」

「こっちも大丈夫だよ。誰かが近づいてくる気配もないね」

 サブカとトーコから敵が居ない事を聞いた私とシェルナーシュも地下通路へと上がる。

 うん、確かに私の感知範囲に見えるヒトの姿はない。


「それでどっちだ?」

「こっちよ」

 敵の姿が無い事を確認した私たちは、壁の穴を放置して、目的の物がある方向……『闇の刃』の魔石加工場に向かって駆けだす。

 さて、ここらでそろそろ私が何をしているのか、シェルナーシュが使った魔法が何なのかについて語ってしまおう。


「魔石の加工場か……俺たちだけでいけるものなのか?」

「いけるわ。ペルノッタが居なくなった事によって、警備は厳しくなっているでしょうけど、中の警備を厳しくする意味はないもの」

「つまり出入り口に詰めているヒトさえどうにか出来れば……」

「後はどうとでもなるわ」

 まず私たちが魔石の加工場に向かう理由。

 それは私たちがマダレム・エーネミにやってきた本来の理由である、暗視の魔法を『闇の刃』から奪うと言うのもあるが、それ以上に私たちが造り出そうとしているアレの為に、未加工の魔石が大量に必要になるという理由がある。

 勿論、未加工の魔石が欲しいだけなら、ベノマー河に住んでいる魚の妖魔(サハギン)を狩ると言う手もあったが……私たちも妖魔であるし、同族を狩るような手はそれ以外に手が無い状況でもなければ使いたくないと言うのが本音である。

 と言うわけで、『闇の刃』の弱体化と収集効率の良さと言う点から考えて、今回私たちは魔石の加工場を襲撃する事に決めたのである。


「しかし、音がしなければこんな物なのか」

「この地下通路は元々秘密の物だもの。頻繁に行き来する方が、面倒事を引き起こす事になるわ」

「だから用事や明らかな異常が無い限りは、誰も居ない方が当たり前で、地下水路の穴もしばらくの間なら気づかれる事はない……か」

 で、この襲撃にあたって、シェルナーシュは新たな魔法を一つ習得、使用している。

 魔法の名前は静寂(サイレンス)

 範囲内から範囲外に向けて発せられる音の大きさを著しく小さくするもので、その効果のほどは私が範囲内から外に向けて全力でネリーとフローライトへの愛を叫んでも、サブカ程に耳が良くなければマトモに内容を聞き取ることが出来なくなるほどである。

 ちなみにシェルナーシュ曰く、この魔法は接着(グルー)の魔法にかなり近い物であるらしいが……あくまでもシェルナーシュの感覚に基づく近さであった為、説明されても私には良く分からなかった。


「と、見えてきたわね」

 やがて私たちの前に木製の大きな扉が一つ見えてくる。

 扉の向こうから漂ってくる気配は?

 複数……ただし、別段何かを特別に警戒するような気配は存在しない。

 順当に考えれば、私たちの予想通り、この先に居る『闇の刃』の人員は私たちの存在に気付いておらず、自分たちに与えられた職務通りに魔石加工場から逃げ出そうとする職人が居ないかを見張っているだけなのだろう。

 そして、他の面々についても、自分が担当している職人の様子を窺っているだけなのだろう。

 あくまでも順当に考えればなので、油断は一切出来ないが。


「じゃっ、全員覚悟はいいわね」

「「「……」」」

 私が地面と水平になるようにハルバードを構えると同時に呟いた言葉に、サブカたちも小さく頷き、事前に考えた通りの位置に着く。


「戦闘……開始!」

 まず初めに、私がハルバードを構えたまま扉に向かって全力で突撃する。


「「「!?」」」

 すると、妖魔の筋力と異常に頑丈なハルバードの力もあって、木製の扉はあっけなく粉砕され、私は扉の先に居た『闇の刃』の魔法使いの胸を貫き、絶命させたところで停止する。

 で、そんな光景が目の前に広がれば、当然他の魔法使いたちの目も私の方に向くことになる。

 だが、そうやって私に注意を向けた事が、彼らにとっては致命傷となった。


「よっ!」

「ふっ!」

「「「!?」」」

 私の突入から一瞬遅れて、トーコとサブカの二人が交差するように部屋の中に突入する。

 そして、突入と同時にそれぞれの得物を一閃、私に向けて魔法を放とうとしていた魔法使いたちを切り伏せる。


「おま……むぐっ!?」

 で、最後に部屋の中に入ってきたシェルナーシュが、叫び声を上げようとした生き残りの魔法使いの口に接着の魔法を使用して叫ばせないようすると、口が開かなくなった彼らを恐慌状態にある間に始末していく。


「さて……」

 部屋の中に立っているのが私だけになったところで、私は部屋の中を見回す。

 どうやら、事前の情報通り、ここは搬入口から持ってきた未加工の魔石を置いておくための場所であるらしく、私たちが入ってきた扉を除くと、扉は一つしかなく、灯りは一切灯っていなかった。

 また、部屋の外からは魔石を加工する音が、絶え間なく鳴り響いており、私たちの存在に気付いた様子は見られなかった。


「手早くやるわよ」

「おう」

「うん」

「分かっている」

 そして私たちは一度頷き合うと、次の部屋へと飛び込んだ。

静寂の魔法は空気同士をくっつけて振動しないようにしている感じです。たぶん

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