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1.とにかくおっさん誰だよ!?

「おはようございます、勇者様! 起きてください!」

 朝からそんな声が俺の部屋に響く。いや、声の大きさからして、部屋ではなく僕の耳元だな。朝から人の耳元で大声を出すなんて、全く迷惑な奴もいるもんだ。そんなことをゆったりと考えながら、これまたゆったり身体を起こす。


「んんっ……」

「おお、勇者様のお目覚めだぞっ!」

「あと、10分……いや、3時間でいいから…寝かせ…て」

 ぐぅ。せっかく起こしかけた身体は再びベッドへと逆戻り。

 おかしいな、確か今日は休日だったはず……。こんなに早く起こされるなんて夢に違いない。よし寝よう、ぐぅ。


「あ、はい、3時間後ですね……って勇者様、起きてくださいよっ! 夢じゃないですからね!?」

 気持ちよく二度寝を楽しんでいる俺の布団を、ノリツッコミしながら剥ぎ取っていく。

 うぉ、ノリツッコミとは、なかなか高度なテクニックじゃないか。やるな! ぜひとも一度コンビでも組んでみたい。コンビ名は……そうだな、二度寝とか。


「勇者様、心の声漏れてます。漏れてます」

 声に驚いて、バッと身体を勢いよく起こし、隣を見ると、生温かいスマイルで親指を立てているおっさん。俺もそれにならって、ぐっと親指を立てる。

 おっさん……小声でそっと伝えてくる優しさに朝から泣きそうだ。


「では、そろそろ起きてくださいね」

「んー。じゃ、そろそろ起きるとするか」

 感動を分かち合ったおっさんの手を借りて、ベッドから降りる。

 ん? あれ? 何かがおかしい。何かがおかしい。何だろう?

「うわぁああああああ!」

「なっ、何事です!? 勇者様!?」

「え、え!? いや、何で気付かなかったんだ、俺!? お前ら誰ですかぁああ!?」


 あまりにも焦りすぎて、何故か敬語が混じってきた。いや、もうびっくりだよ。びっくりだよ。何がって、自分の脳内補正の性能の良さにびっくりだよ。何で今までこれがさも当たり前の朝、みたいなナチュラル感出してたの?

 え? それとも、いつからこれを日常だと思い込んでいた? くっくっく……ってノリ?


 どうしよう、なんか一周回って頭おかしくなったかもしれない。

 だってさ、だってさ。何、親指立てて感動分かち合ってんだ!? おっさん、知らねぇよ! むしろ、初めて見たよ! 初めましてだよ!


「あのー……勇者、様?」

「やめろっ、勇者様は今何やら考え事のご様子だ」

「……お腹空いてるんじゃないですか?」

 極め付けはこれだよ! 見てください、この見苦しいまでもの景色を。何で俺のベッドの周りを見知らぬおっさんばっかが囲んでるんだよ!? 1人のおっさんしか認識していなかった俺の脳内補正は本当に有能だなぁ!! どうせなら全員巨乳美女にするという脳内補正は出来なかったのかっ……悔やまれる。……まぁとりあえず最後に言った奴、出て来い。


 そして何より1番おかしいのはーー。

「勇者様って誰だよ?」

 確かこの国に、勇者様なんてめんどくさい役職の方は居ないはずなんだけど。


「……はぁあああ!?」

 今度はおっさん集団が驚く番だった。

 いやぁ、揃いも揃って野太い! 渋い! むさ苦しい! そこに痺れる憧れるぅ! とか言おうかなと思ったけど、そこはなんとか踏みとどまった。


「勇者様がご存知ないっ……だと!?」

「何てことだ……早急にお伝えせねば!」

「とりあえず、朝ご飯食べてからにしません?」

 うん、とりあえず最後の奴出て来いよ。どんだけ食い意地張ってんだ。


「勇者様ーーいえ、レイル=ルミエール様。貴方は本日を以って、この国の勇者と成られるのです。」

「巫女様の御告げが、昨日の深夜に出たんです!」

「きっとたくさんお祝いの豪華な食べ物が用意されていますよ……羨ましい」

 そろそろ最後の奴にツッコむのも疲れてきたので誰か代わりに殴ってきて。誰でも良いよ。って! 着目点そこじゃねぇっ!


「勇、者? 俺が……ですか?」

 いやいや、勇者なはずがない。よりにもよって俺が。最終的にエイプリルフールのオチだとか、ドッキリ☆成功だとかいう結末になることを願いたい。


「はい、もちろんですとも。他の誰でもない、レイル=ルミエール様です。」

 いや、俺は信じないぞ! 絶対信じないぞ。俺にはやりたいことがあるんだ。それこそ、声を大にして言いたいくらいに。

「俺は……俺は……寝るのが好きなんだぁあ!」

「では、そこで寝ていてもらっても結構ですよ? とりあえず、勇者様の生存確認がとれたので王宮に向かいますけどーーこのまま行ってもなんら問題ありませんから」

 そう言って、にっこりと微笑むおっさん。

 あぁ。嫌な予感しかしない。おっさんの笑顔とか誰得だよ……。


「せーの、わっしょいわっしょいわっしょい」

 嫌な予感は的中。俺はその後、ベッドの上に乗せられたままの胴上げなるものを体験させられ、再びベッドに沈むこととなった。

 わっしょいって……俺は神輿じゃねぇっ!

ギャグです。

おもしろいとか、ちょっとでもニヤリとしていただけたなら喜びます。

飛び跳ねます。


このテンションの主人公を維持し続けるのが目標です。

テンション高ぇ……。


ちなみにおっさんモブ集3人の3人目は私です。食い意地張ってます。

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