第92話
ブレイブクローン、ブレイブトレース。
そして、四凶を模した4身体の巨大合成獣。
「…………」
「…………」
それぞれ傲慢、強欲、暴食、怠惰のナワバリに現れ、契約者、一般人問わず喰い荒し、今はそれぞれの大罪と対峙し……睨みあいとなっていた。
それは、傲慢のナワバリでも行われており――
「……」
睨みあいの最中、巨大合成獣の雰囲気から、白夜は推測する。
合成獣は、基本的に創られた存在、
如何にライオン、虎と言った肉食動物とて、最初からそうであったわけではない。
――狩りを覚え、そして徐々に経験を積む事で、肉食動物としての立ち位置を確立させる。
それは合成獣とて例外ではない。
食用、愛玩用の場合は必要ないが、戦闘用としての場合はそうはいかない以上、合成獣使い達による様々な手法が模索、実験をした上で――先人と言える存在を創り上げたにすぎない。
――だからこそ、この睨みあいは通常を考えればあり得ない。
更に言えば、巨大合成獣のこの立ち振る舞いは、明らかに自分との力量を見抜き、そこから導き出す最良の手段を模索する物。
しかし、これほどの巨大合成獣が、これほどの経験を積む事自体が明らかに不自然な事。
機械的な知識――にしては、明らかな違和感を感じる。
「……」
考察が終了後、その沈黙の均衡は崩された。
それは、攻撃でも牽制でもフェイントでもなく――
白夜が睨みあいの最中で、よそ見をする事で。
『!』
睨みあいをしていたコントンは、明らかな激高を表に出し白夜に襲い掛かる。
「――プライドを持っている、か」
眼前に迫る、人の血肉臭が残る牙。
それが――
ガチっ!!
「!?」
カラ振りをした。
ガチっと歯がかち合う音が響くと同時に、コントンは飛びのき白夜から距離をとる。
「…………」
白夜は動いていない。
「ぐるるるるるっ!」
コントンは再度飛びかかろうと、唸り声をあげながら身体を沈め白夜を見据え――。
「ウォオォオオオオオオオオオオオオッ!!!」
いざ飛びかかる――と思いきや、周囲の建造物今でびりびりと響くほどの大音量で吠えた。
それと同時に、コントンは前足を振り上げ、白夜に向けた振り下ろし――。
「――良い攻めだ」
空振りした次の瞬間、コントンの眼前に白夜の姿があった。
――4メートルはある大剣を振り始める体制で。
ドゴオッ!!
「!?」
コントンのこめかみに、大剣のみねうちがブチ込まれた。
衝撃でコントンはひっくり返り、痛みにのた打ち回る間に、白夜は着地。
「……」
白夜は痛みにのたうちまわるコントンに、ゆっくりと歩み寄る。
「ぐあるぅああっ!!」
ある程度まで近づくと、急にコントンが口を開き白夜に喰らいつこうとする。
「――やはり機械的ではなく、明らかに経験を積み重ねた本物」
しかし今度は牙を掴み、力でコントンの顎の力に勝る事を示し、押していた。
「――本当にテロリストの物なのか?」
不自然に完成度が高過ぎるシロモノ。
故に白夜は、ある予感に似た物を確信していた。
「――予定を書き換える必要が出来た」
――薄らと、口元に笑みを浮かべながら。
――時はさかのぼり
『うわああああああああっ!』
『ぎゃああああああああっ!』
四凶の巨大合成獣による、大罪のナワバリ襲撃。
「ふはははははははっ! 見ろ、負の家畜どもが喰い散らかされてやがる!」
監視用の小型カメラから送られてくる映像を前に、心底楽しそうな笑い声が幾つも響き渡る。
『……楽しそうだね』
「おおっ、ドクター東城。よくやってくれた、君のおかげで
『なあに、僕は北郷様の意思を受け継ぐためにやったまで』
「ああっ、お前の様な部下を持てて、北郷さんは幸せだろうよ」
『そう言ってくれると嬉しいな――では』
ブツッ!
「え!?」
『――もうお前らに用はない』
「これは何の真似だ!?」
『何の? ――決まっているさ』
「ぐるるるるるるるるるっ!」
「え!?」
『正輝の正義は世界に否定された……これはまだ良い。善だ悪だと言った所で、所詮敗者こそが悪で、勝者こそが正義なのだ!』
「何を言って……?」
『敗者に未来はない――しかし奪われた未来を、貴様らの様な欲望を自重も出来ん身勝手だらけのゴミどもに、我が物顔で喰い散らかされ、口惜しくない訳がない!! ――だからこそ僕は、僕の未来を奪った世界に……』
グジュッ……!
『うっ、うわあああああああああっ!』
『ぎゃあああああああああっ!!』
「抗議しているだけさ――省みろとも、同情しろとも言わない……でも、僕達から意味を奪っておきながら、無意味な物で終わろうとするなと――うっ……うぅぅっ……ぐすっ……うぅぅうううああああああああああああぁぁあぁああああ!!」




