第91話
憤怒の朝霧裕樹と、指揮官ブレイブクローン。
――もとい、一条宇宙の脳を使用し造り上げた一条宇宙その物の、ブレイブクローン
「くくくくくくっ……」
その2人の戦いは
「ははははははっ……」
全て、筒抜けとなっていた。
「ひゃーっはっはっはっはぁぁあっ!!
――ブレイブクローンを創り上げ、一条宇宙の脳を盗んだ男
東城太助のもとに。
「……一条宇宙の大脳を埋め込み、人格に手を加え、そして限りなくスペック上で一条宇宙に近づけた最高傑作!」
その映像を見ていた東城太助は、ノイズ混じりのこの映像を見てただひたすらに笑っていた。
「ひゃーーっはははははははははははははははははははははははははははは!!」
一条宇宙の脳を使ったとはいえ、自分の造り上げた作品が大罪と渡り合っている。
その事実に、ひたすらに笑っていた。
腹に風穴をあけられ、四肢をへし折られた久遠光一。
武器の金属棒ごと胸元を切り裂かれ、失神している桐生ナツメ。
上級系譜である2人をたやすく、瀕死に追い込んだ事も要因となっている。
「はぁっ……はぁっ……」
ひとしきり笑い、息を切らすとコップを手に水を飲み干す。
「ふぅっ……必死にあがいてくれ。見せてよ――人間はまだまだ捨てたものじゃない事を」
太助の頬に、一筋の線が描かれた。
その線は、顎に到達すると――しずくとなり床に落ちる。
「教えてよ――マー君を否定したこの世界を生きる人間たちが、本当に生きるに値するかどうかを、ぼくちんに」
「うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
「はぁぁあああああああああああああっっ!!」
頭部を負傷し、本調子の出ない朝霧裕樹
系譜のブレイカーであるため、一条宇宙本来のスペックを引き出せない指揮官ブレイブクローン。
条件的に五分五分。
その状態で、2人はひたすらにぶつかりあっていた。
「…………」
瀕死の重傷を負った光一とナツメの2人を傍らに、宇佐美はただ見守っていた。
かつて正と負の勇者と謳われた者達の戦いを。
――この先、後を継がねばならない戦いを。
ガギィっ!!
剣と拳のぶつかり合い
自身に、そしてユウに罵倒を浴びせたブレイブクローンと、ユウのぶつかり合い。
そのブレイブクローンの動きは、これまで見たブレイブクローンと違い、自身の記憶にある兄のそれと、完全な意味で符合している。
――あくまで、戦闘時と言う意味で。
「うっ……」
「あっ、光一」
光一が気がつき、宇佐美はそちらに意識を向ける。
「――宇佐美?」
「気がついた?」
「あっ……ああっ、そうか……宇佐美、悪いけど……腕を、とってくれない? ――治療するから」
光一の――へし折られ、構造上あり得ない方向に曲がっている腕をとり、宇佐美は恐る恐るその手を、風穴の空いている光一の腹に当てる。
「――便利な能力ね」
「その分扱いが難しいんだよ――ユウは?」
「あそこ」
金属のぶつかり合う音と、爆音が響き渡る。
手甲と刀、風と炎。
――光一の脳裏にある、正と負の勇者の戦いのBGMと表現出来る、印象深い轟音。
「――こんな形で聞く事になるとは、思わなかったな……もう二度と聞けないと思ってた、宇宙さんとユウのぶつかり合うに、つきもののこの音」
勇気の上級系譜は既に存在しない。
故に、勇気と憤怒――一条宇宙と朝霧裕樹の2人の戦いを、最も間近で見続けた存在は、最早光一ただ1人。
ガギィっ!
ユウの六連2本の二刀流と、指揮官ブレイブクローンの両手の手甲。
ユウの溶岩の腕と、指揮官ブレイブクローンの風の爪。
それらが、ただひたすらにぶつかり合う。
一条宇宙が死に、永遠にかなわなくなった瞬間を再現するかのように。。
「――ねえ、光一。あれ、一体何なの?」
「俺が聞きたいよ……宇佐美にユウも気付いてるだろうけど、あれは完全に宇宙さんの動きその物だ。とても機械的に植え付けられた知識とは思えない」
「――じゃあ、あの兄さんは一体何なの?」
「……宇宙さんの脳を、直接使ってるから――とかしか、俺には予想が出来ない」
その数秒間、轟音だけが響く
「……あたし達、一体何やってるのかな?」
「――何って戦ってる。としか言えないな」
「――戦って戦って、その先に一体何があるのかな? ……あたしには、人が人である事を否定し続けてる、としか思えない」
「人が人である事を否定する――違いない」
宇佐美がうつむいての言葉に、光一は肯定の意を示す。
――過去の自分、今の自分、その両方を否定するかのように。
「第三次世界大戦、世界崩壊の後の世界が、これじゃあな」




