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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第91話

憤怒の朝霧裕樹と、指揮官ブレイブクローン。

――もとい、一条宇宙の脳を使用し造り上げた一条宇宙その物の、ブレイブクローン


「くくくくくくっ……」


その2人の戦いは


「ははははははっ……」


全て、筒抜けとなっていた。


「ひゃーっはっはっはっはぁぁあっ!!


――ブレイブクローンを創り上げ、一条宇宙の脳を盗んだ男

東城太助のもとに。


「……一条宇宙の大脳を埋め込み、人格に手を加え、そして限りなくスペック上で一条宇宙に近づけた最高傑作!」


その映像を見ていた東城太助は、ノイズ混じりのこの映像を見てただひたすらに笑っていた。


「ひゃーーっはははははははははははははははははははははははははははは!!」


一条宇宙の脳を使ったとはいえ、自分の造り上げた作品が大罪と渡り合っている。

その事実に、ひたすらに笑っていた。


腹に風穴をあけられ、四肢をへし折られた久遠光一。

武器の金属棒ごと胸元を切り裂かれ、失神している桐生ナツメ。


上級系譜である2人をたやすく、瀕死に追い込んだ事も要因となっている。


「はぁっ……はぁっ……」


ひとしきり笑い、息を切らすとコップを手に水を飲み干す。


「ふぅっ……必死にあがいてくれ。見せてよ――人間はまだまだ捨てたものじゃない事を」


太助の頬に、一筋の線が描かれた。

その線は、顎に到達すると――しずくとなり床に落ちる。


「教えてよ――マー君を否定したこの世界を生きる人間たちが、本当に生きるに値するかどうかを、ぼくちんに」



「うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

「はぁぁあああああああああああああっっ!!」


頭部を負傷し、本調子の出ない朝霧裕樹

系譜のブレイカーであるため、一条宇宙本来のスペックを引き出せない指揮官ブレイブクローン。


条件的に五分五分。

その状態で、2人はひたすらにぶつかりあっていた。


「…………」


瀕死の重傷を負った光一とナツメの2人を傍らに、宇佐美はただ見守っていた。

かつて正と負の勇者と謳われた者達の戦いを。


――この先、後を継がねばならない戦いを。


ガギィっ!!


剣と拳のぶつかり合い 


自身に、そしてユウに罵倒を浴びせたブレイブクローンと、ユウのぶつかり合い。

そのブレイブクローンの動きは、これまで見たブレイブクローンと違い、自身の記憶にある兄のそれと、完全な意味で符合している。


――あくまで、戦闘時と言う意味で。


「うっ……」

「あっ、光一」


光一が気がつき、宇佐美はそちらに意識を向ける。


「――宇佐美?」

「気がついた?」

「あっ……ああっ、そうか……宇佐美、悪いけど……腕を、とってくれない? ――治療するから」


光一の――へし折られ、構造上あり得ない方向に曲がっている腕をとり、宇佐美は恐る恐るその手を、風穴の空いている光一の腹に当てる。


「――便利な能力ね」

「その分扱いが難しいんだよ――ユウは?」

「あそこ」


金属のぶつかり合う音と、爆音が響き渡る。


手甲と刀、風と炎。

――光一の脳裏にある、正と負の勇者の戦いのBGMと表現出来る、印象深い轟音。


「――こんな形で聞く事になるとは、思わなかったな……もう二度と聞けないと思ってた、宇宙さんとユウのぶつかり合うに、つきもののこの音」


勇気の上級系譜は既に存在しない。

故に、勇気と憤怒――一条宇宙と朝霧裕樹の2人の戦いを、最も間近で見続けた存在は、最早光一ただ1人。


ガギィっ!


ユウの六連2本の二刀流と、指揮官ブレイブクローンの両手の手甲。

ユウの溶岩の腕と、指揮官ブレイブクローンの風の爪。


それらが、ただひたすらにぶつかり合う。


一条宇宙が死に、永遠にかなわなくなった瞬間を再現するかのように。。


「――ねえ、光一。あれ、一体何なの?」

「俺が聞きたいよ……宇佐美にユウも気付いてるだろうけど、あれは完全に宇宙さんの動きその物だ。とても機械的に植え付けられた知識とは思えない」

「――じゃあ、あの兄さんは一体何なの?」

「……宇宙さんの脳を、直接使ってるから――とかしか、俺には予想が出来ない」


その数秒間、轟音だけが響く


「……あたし達、一体何やってるのかな?」

「――何って戦ってる。としか言えないな」

「――戦って戦って、その先に一体何があるのかな? ……あたしには、人が人である事を否定し続けてる、としか思えない」

「人が人である事を否定する――違いない」


宇佐美がうつむいての言葉に、光一は肯定の意を示す。

――過去の自分、今の自分、その両方を否定するかのように。


「第三次世界大戦、世界崩壊の後の世界が、これじゃあな」


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