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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第90話

白いプロテクターにボディスーツ、そして思念を込めることで伸縮するマント。

両腕には、防御だけでなく攻撃を想定した構造の、二の腕を包むような籠手。


以上が、ブレイブクローンの基本装備。

ベースである一条宇宙の、徒手空拳と風を組み合わせて戦うスタイルに合わせ、設計された事が伺える装備。


「……朝霧裕樹、一条宇佐美、消去」

「っ!」


ガシイッ!!


しかし、目の前のブレイブクローンの装備は、それらの質は量産した物ではなく、完全に特注したとしか思えない様な頑丈さと柔軟さを持ち――

通常のブレイブクローンの装備を斬り裂いたユウの刀、“焔群”のぶつかりあいにもなんなく耐えて見せた。


「――総員下がれ」

「……嘘だろ。全部、宇宙の動きその物?」


ユウとのぶつかり合い後、周囲のブレイブクローン、ブレイブトレースに指示を出し、周囲がその指示に従い後退。

しかしそれに構わず、ユウはひたすらに混乱していた。


ブレイブクローンは、所詮は量産する事前提の劣化コピー。

系譜のブレイカーを持っているとはいえ、付け焼刃の宇宙のデータを使用した所で、本物に追随する様な実力はない。


更に言えば、スペック上は上級系譜クラスといえど、所詮はスペック上。

実戦で言えば、下級系譜を上回っているだけで、実際の上級系譜には多勢対1でしか勝てない程度でしかない。


小組織相手ならそれでいいのだが、大罪に美徳クラスの組織との戦争での使用法は、スペック任せに多勢攻撃を仕掛ける。

その戦法で、正義の軍勢は嫉妬のナワバリの半分を殲滅するに至っている。


「…………!」


しかし、目の前のそれは違う。


装備もさることながら、動きや攻撃の威力。

更には、能力の使い方まで、機械的に植え付けられた物とは思えない程、かつての宇宙のそれと酷似している。


何より決定的な物が、無傷で光一に――上級系譜久遠光一に、致命傷ともいえる傷を負わせ、破った事。


「……よくも」

「え?」

「よくも……殺し……たな」

「っ!」


そう呟かれ、ユウは揺らいだ。

そこを狙い、指揮官ブレイブクローンは両手に風を纏わせ、駆けだす。


「くっ……!」


突き出される腕に、ユウは両腕をマグマで包みガード。


ドゴっ!!


「うっ!?」


しかし来たのは風の腕ではなく、蹴り。

脇腹に突き刺さった左蹴りで、ユウは体勢を崩し――


「――“旋風乱舞”」


蹴りの勢いを利用して身体を回し、正拳突きを顔面に。

そこから流れるような動作で、回し蹴りをユウの背にたたき込み、地に手をついてもう片足で足払い。


宙に浮いたユウの身体をマントで包むように抱え、指揮官ブレイブクローンは飛び上がり……

ユウを脳天から、地面にたたきつけた。


「……」


指揮官ブレイブクローンはユウから離れ、ゆっくりと――


「宇佐美……兄さんに」

「……え?」

「お前を……八つ裂きにさせてくれ」


両手に風が渦巻き、掌に集中すると同時に螺旋を描く爪を模る。

一歩踏み込み、その爪を纏った腕を振り抜くと、螺旋の爪が宇佐美に襲いかかる。


「きゃあっ!」

「ナツメちゃん!?」


それを咄嗟にナツメが割り込み、愛用の金属棒を使い盾を構築。

その盾も紙のように破られ、ナツメの身体が斬り裂かれた。


吹っ飛ばされ、地面にたたきつけられ気絶したナツメに駆け寄り――。


「――邪魔が入ったか」


その言葉で、宇佐美は――


「――なんでこんな事を?」

「……何を、言っている? 俺は、宇佐美を八つ裂きにすると、言った」

「違う……兄さんはこんな事」

「……悪い子は、死になさい」


指揮官ブレイブクローンが、宇佐美に向かって拳を振り上げ……


ガシイッ!


「ユウ!?」


脳天から血を滴り落ちたままのユウが、それを遮った。


「お前か……宇佐美を、たぶらかしたのは……」

「っ!」

「俺を……殺しただけ……じゃ、飽き足おらず……よくも!」


轟音が響くと同時に、周囲に風が巻き起こる。

指揮官ブレイブクローンが手をかざすと同時に、風がその掌に集まり――綺麗な球体に。


「――死ね」


風の球体をユウめがけて放り投げると、球体は破裂。

そこから暴風が巻き起こる――


「させない!」


――前に、宇佐美がけだし風の球体を両手で掴み、抑え込み始める。


「バカ、やめろ! お前じゃ無理だ!!」

「――なら迷わないで!!」

「っ!」

「ユウは、あたしに嘘をついてたの!?」

「――つく訳ない。俺は……俺は」


宇佐美の掌が風でズタズタになり、血が滴り落ちる。

それに構わず、宇佐美は抑え込み――


「なら、あたしがユウを許す」


風の球体は宇佐美に制御され、上空へと放り投げ四散させた。


「宇佐美……兄さんを、裏切るのか……?」

「あたしは兄さんの事、誰よりも大好きで、誰よりも信じてる――兄さんは」


宇佐美は血の滴り落ちる拳を握りしめ、ブレイブクローンに相対する。


「――兄さんは、こんな人じゃない!」

「――宇佐美……俺の言う通りに、ならないと言うなら、殺す」

「兄妹だから――それだけで何もかもが上手く行くなんて、幼稚な人でもない!」

「総員かかれ!」


指示が出され、周囲のブレイブクローン、ブレイブトレース達が一斉に構える。

ブレイブクローンが四肢に風を纏わせ、ブレイブトレース達は内蔵武器を展開し、宇佐美に――


「“迦具土カグツチ”」


襲いかかろうとした瞬間、マグマの竜に薙ぎ払われた。


「ユウ!」

「――すまん、目が覚めた」

「ユウ、貴様!」

「――その先はあの世でだ」


六連を2本抜き、二刀流の構えをとり駆けだすユウ。

両の拳を握りしめ、駆けだす指揮官ブレイブクローン。


「はああああああああああああああああああああああああっ!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


数年の時を経て、正と負の勇者はぶつかり合う。

――偽りの身体、偽りの意思、偽りの正の勇者と。


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