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大罪と美徳  作者: 秋雨
第5章 肯定する者、否定する者
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第87話


「どうだった?」

「何人かは見つけてわかった事だが……サイボーグ技師との繋がりは、ネット会員やメル友みたいなものらしい」


憤怒のナワバリにて、ユウは調査に赴いた光一の報告を聞いていた。


「つまり、相手の素性は一切知らないと?」

「そう。ただ前金を送られた後に患者を紹介されて、そのまま手術をしただけだってよ。テロを支援してたって自覚どころか、知りもしなかったみたいで。一応、そう言った話が来た場合、即座に通報するようサイボーグ技師には呼びかけてはおいた――が」

「どうした?」

「――“ブレイブクローン”、“ブレイブトレース”の事だ」

「っ!」


正義が乱世を起こしてまで、負の契約者せん滅に踏み切った要素。

それは量産できる上級系譜であり、最強の生体兵器。


「――正義が乱世を起こしてまで開戦に踏み切った理由か。それが何なんだよ?」

「最近になって、元“正義”のナワバリで、その製造工場が見つかった。最も、稼働してた気配があったらしく、既に破壊したらしいが」

「――誰かがブレイブクローン、ブレイブトレースの製造方法、あるいはその物を手に入れたかのような話だな?」

「まだ判明はしてないがな――ただ、スペック上の能力や、嫉妬のナワバリの大半を皆殺しにした功績を考えて、もし最悪の想定が現実になれば……俺も死ぬだろうな」


光一の言葉は、決して否定はできなかった。


ブレイブクローン、ブレイブトレースは、スペック上では上級系譜クラス。

それを量産できるとなれば、数が揃えば大罪や美徳でもなければ対応はできない。


「――量産型クエイクの搬入、配備は終わってる。ただ、ユウも覚悟はしといてくれ」

「……わかった」


光一は去っていくと、ユウは“焔群”を抜き構える。



生きる事を、ただ当たり前の様に享受していた

――それがどんなに厳しく、残酷な事かを実感する事もなく


人間社会の恩恵を、ただ当たり前の様に享受していた。

――それが自分の責任を構築する要素になると、実感する事もなく。


全ての当たり前を、ただ当たり前の様に享受していた。

――それが奇跡の様なものであると、実感する事もなく。


「――自覚すると、これ以上なく思いもんだな。当たり前って」



――所変わり。


「ぎゃはははははっ!」

「おら! 食料よこせ!!」

「今日からここは俺達“真紅の翼”のナワバリだ! ありがたく差し出しやがれ!!」


所は、とある大罪の境に面したナワバリの街。

そこを契約者側のテロリストが占拠し、我が物顔で横行していた。


「今日はめでてえぜ! 漸く俺達にも本拠地が出来たんだ!」

「全くだ! 世界崩壊からこのかた、ろくに飯も食えねえ日が続いたが、それも今日で終わり。何せゴミ人間どもから巻き上げればいいんだからよ!」

「そうそう。奪ってよし、殺してよしのオモチャどもにすぎないんだからよ!」

「違いない! どうせなら女も1人残らず……」


「おい。ここで何をしている?」


テロリストが振り向いた先


「なんだテメエ?」

「帰んな、ここは俺達のナワバリだ」

「ん? なんだ、俺達と同じ量産型じゃねーか。正義の味方ごっこなら余所でやれ」


すっ……!


「え? ぎゃふっ!」

「なっ! 何しやがぐはっ!!


その後、テロリスト達は捕縛され、傲慢のナワバリに存在する契約者用監獄“ヘルオンアース”へと投獄。


「何をしていた? こんな者達に後れをとるなど、恥だ」

「申し訳ありません、白夜様――懲罰は受けます」

「良い心がけだ――レベル2を一週間だ」

「……了解しました」


“ヘルオンアース”は、懲罰房としても利用されている。

刑期こそ短くなっているが、そこを出た者はすべて処罰の過酷さゆえに、ここに来るくらいならと、ブレイカーを放棄する者も少なくはない。


――更に言えば、ここは白夜自身も例外ではなく彼専用の、それも最も過酷な懲罰房も存在する。


「――まさか、カスタムもしていない量産型で、しかも身体強化だけで小組織を壊滅させるだなんて」

「虫を潰す為に足を振り上げる必要はない」

「――それはそうですが。っと、報告です。やはり正義の研究者の1人が、一条宇宙のDNA情報と共に持ちだした様で。こちらが資料になります」


岩崎から手渡された紙の束を受け取り、白夜はぺらりぺらりとめくりながら読み進める。


「東城太助。ブレイブクローン、ブレイブトレースの開発、量産を提案、実行した研究系契約者……大した外道だ。よもや、合成獣人間の開発まで手を伸ばしていたとは」

「彼の知人がその研究を行っている、という情報はつかめましたが。肝心の研究者の居場所はまだわからずで……」

「やめさせろ。そんなものいらん」

「了解しました。彼の行方ですが……正の契約者側のテロリストと接触した可能性は、十分ありますね」

「それだけ分かれば十分だ……岩崎。その情報を開示し、周囲に警戒を呼び掛けろ」

「了解です!」


岩崎が駆けて行き、白夜は量産型ブレイカーの契約を解除し、傲慢のブレイカーと契約。


「人間……自分の欲望を満たす。ただそれだけに執着し、他を省みず、理を足蹴にし、利を貪り、喰い散らかす存在。幸福がどれほど尊き物か、生きると言う事がどれほどの奇跡に恵まれているか、人の世がどれほど大事な物か――それを理解もしない」


契約が終わると、空間を叩き割り引き剥がし始めた。


「ただ人は、弱さゆえにこれを否定する。自分自身の弱さ、汚さから眼をそらす為に……そしてそれは今、テロと言う暴力をもって具現している――明日は勝者の物。いかなる理由があろうとも敗北者や逃げた者など、今も過去も明日も許されてはならない」


その中へ飛び込むと、手足を投げだし楽な体制のまま、空間を漂い始める。


「歴史も未来も、今も過去も全ては勝者の……強者の物。それを足蹴にし、ただ自分の欲望を満たす事しか考えぬ畜生ども――早いうちに気付く事だ。貴様ら弱者どもの未来等、我らのおこぼれにすぎない事を」


何もない空間――その中で白夜は、目を閉じる。


「――再び世界が壊れる可能性が生まれる前に」



「ねえユウ」

「ん?」

「……あたし達がやってる事って、意味あるのかな?」

「んー……じゃあ聞くけど、テロの言い分通して何か変わると思うか?」

「――思えない」

「じゃあ胸張ればいい。今のところ、避難される様な事はないし、これは我儘なんかじゃなくて首相と大罪、美徳の総意なんだから」

「――変えられるかな?」

「変えるんだよ、これから――宇宙がそうしたように、な」

「――うん」

「……大神が何故世界を壊したか――あいつが大雑把に事を進めるとは思えない以上、出来るだけ早く進めたいんだが」


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