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大罪と美徳  作者: 秋雨
第5章 肯定する者、否定する者
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第84話

「では、食糧問題については?」

「ピュアプラントの生産自体は、問題なく進んでます。ただやはり、テロの妨害で集荷自体が遅れていますが」

「こちらも同じですね。小生のナワバリでも、ビオトープの設備に細工しようとした輩がいまして」

「折角引いた路線や海運ルートも、全部テロでダメにされちゃったからね。ボクのナワバリの鉄道会社、大打撃だって嘆いてたよ」


月、我夢、アスカの報告は、主に食料自給とその運送について。


現状、世界崩壊に伴い生じた問題は、ある程度機能を回復しても山積みとなっていた。

食糧不足、住居や環境の問題に、交通経路の不備や、乱世や世界崩壊における孤児や、四肢を失った者の問題。


特に四肢を失った者や、孤児等。

これらをテロ組織が組み込み、テロの構成員としての教育を施したり、不満を煽ってサイボーグとし尖兵としたり。


時間がたてばたつほど、問題は膨れあがりより大きな問題となっていた。


「めんどくせえ……討伐隊も、敵が無人機ばっかでろくに成果は上がってない」

「…………」

『こちらは酷い物。孤児の子供に土木作業ロボットの操縦を教えて、暴れまわらせていた』

「連中の主戦力はサイボーグ。ならばどこか、大規模な拠点はある筈だとワシは睨むが?」


公人、詠、王牙の報告は、テロ討伐に関する物。


テロ組織の主な主張は、正負友好の撤回。

事実、テロの構成員は乱世、あるいは世界崩壊時い四肢を失ったサイボーグや、孤児となった者達である。


「――0%」

「え?」

「サイボーグ技師など、現状フリーからお抱えまで幾らでも居る。増して政府上層部にすらテロの支援者が居た。サイボーグ技師に手引きをしている者がいる――90%だ」


凪の言葉で、全員が顔をしかめる。


「それは厄介ですね。誰もがテロ支援者の可能性があり、どこで情報が漏れているかわからない事になります。そうなると、ピュアプラントの支援者も怪しく思えてきますね」

「だったら地道に調査するしかないな――それも、確実に信用できる奴で」

「――でもそれより、各地の守備はどうするんですか?」

「量産型クエイク回すしかないだろ」


怜奈、ユウの発言の後での、宇佐美の発言にはユウが答えた。


現状、量産できる系譜クラスの戦力は、憤怒の量産型クエイク。

そして暴食のドラゴンしか存在していない。


しかしドラゴンは、暴食の合成獣使いでしか未だ扱いきれないため、各地に配備するには危険過ぎる。


「ならば、暴食と私のナワバリ以外に配備すべきだな」

「――良いんですか?」

「甘く見るな。この私が手塩にかけ育てた精鋭たち、この程度で音を上げる弱卒など1人たりとも存在しない」

「――そうなの?」

「――ああ。傲慢は系譜が最も多い事と、所属契約者の質が高いことで有名なんだよ。その代わり規律は1番厳しくて、結果出せない奴や一般人への乱暴や悪行を行った奴は、生きてる事が奇跡の様な罰を受けるらしいけど……まあ、そう言う事ならそうさせて貰うよ。ただし――わかってるな?」


提供された技術は、あくまで所有権は提供側にある。

提供側に無断で手を加え、悪用し、損壊した場合は協定違反となり、大罪、美徳を全て敵に回す事になる。


「それでは、会議は終了だね。僕は外のうるさいのを駆逐して来るよ」

「では、解散」


昴が出て行き、白夜の号令で会議は終了。


「なんか、思ったよりスムーズに進んだね。大罪と美徳だから、もっと殺伐とした空気想定してたけど」

「立場は金とかコネでどうにかなるけど、ブレイカーの場合そう言うの通用しない。たかが物欲や私怨、金でしか物事判断出来んゴミが大罪になる様じゃ、世は終わってる」

「――欲望って言っても、色々あるのね」

「あるだろ普通。そう言うのを知って、考えてこその頂点だ――教えるの遅くはなったが」

「それはいいよ。それより外、大丈夫かな?」

「俺たちの側近が雁首そろえてんだし、死傷者なんて出る訳ないだろ。それに美徳が1人出た時点で、こっちの勝ちは決定事項」

「――系譜かあ。兄さんの側近って、今どうしてるのかな?」

「大半はあの騒ぎで死んだか、フォールダウンになったかだ――上級系譜は、同盟組む前に光一が殺しちまったからなあ」

「――自分で探して育てろってことね」



所変わって――


「――どんだけ来んだよ」


上級系譜達の前には、土木作業用ロボットやドリルが着けられた装甲車。

そして腕が殺傷性の武器や銃器、あるいはドリルにチェーンソーと様々な武器をとりつけられた、サイボーグ達。


「兵器は全部無人機で、尚且つ戦闘用ではありません。恐らく、どこかの土木作業場から盗んだものですね」

「数が揃うと、流石にきついね。ねえ旦那様、十八番の“超電磁砲レールガン”でかるーく薙ぎ払ってよ」

「旦那様呼ぶな。おーい、広範囲攻撃出来る奴は来て――」


「下がっていたまえ」


光一の声を遮ると当時に、一筋の光が走り――作業用ロボットを撃ち抜き、そのまま真っ二つに引き裂いた。


「御苦労、会議は無事終了した。後は僕に任せて、君達はゆっくりと休んでいたまえ」


知識の契約者、天草昴。

背まで伸びた長髪を風にたなびかせ、ゆっくりと上級系譜達の前の出るとメガネの位置を直す。


「出たな、ゴミどもに魂を売った恥さらしが!」

「良いかい? ここでは世の重大問題の解決策を話し合う、とても重要な話し合いが行われているんだ――わかったかい? 坊やたち」

「ぼっ……!」


いきなりの罵倒を意にも介さず、昴は優しく笑みを浮かべ“子供に”諭すかのような丁寧に言葉を選び、説明を始める。


「何が重要な話し合いだ! 俺達を蔑ろに、自分たちの都合のいい事ばっか……」

「世は今大変な事になってるんだ。世界崩壊に伴い、ごはんもおうちも何もかもが足りない。それをどうにかする話し合いをしているんだ」

「ガキ扱いしてんじゃねえ!」

「だからね――遊びたいなら、余所で遊びたまえ。僕達は君達と違い、暇じゃないんだ」

「……!(ブチブチっ!) ぶっ殺せ!!」

「――なら、仕方ないね……“ジョワユーズ”!」


キレて襲いかかってくる一団を前に、昴は光の剣を展開。

それを横なぎに構え――


「“ロンギヌス”」


踏み込むと同時に光の剣が伸び、幾多もの首が宙に舞い――

ボトボトと地面に落ち、転がると同時に一団の首を失った胴体が地面に倒れ伏した。


それに怯んだサイボーグ部隊の、一瞬の戸惑いを見た昴は――


「“シューティングスター”」


両手の全ての指に光を集中させ、10筋のレーザーでサイボーグ10体を撃ち抜く。


「――“ライト・ベロシティ”」


次は作業用ロボットで最も大きい物に向けて手をかざし、掌から光を放つ。

その光が作業用ロボットの目の前を照らした瞬間――


バキャアっ!


光を伝いテレポートした昴が、光を纏わせた回し蹴りを放ち、斬り裂いた。

足を振り抜いた体勢で腕をクロスさせ、その両手に光を纏わせ――


「“クルセイダー”」


地面に着地すると同時に腕を開くようにふり、その動作に合わせる様に腕を包む光が伸び、その周囲の作業ロボットを真っ二つに。

残骸がガシャガシャと音を立てて崩れる中――


「知識の契約者は最速の契約者――これは苦しみなき死だ」


スーツの乱れを直しながら、ゆっくりと上級系譜の前に姿を現した。


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