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大罪と美徳  作者: 秋雨
第5章 肯定する者、否定する者
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第83話

ゴォォォオオオオオオオっ!


「なっ、なんだ!?」

「おっ、おい!」

「うわあああああっ!」


所変わり、会議場の外。

テロの襲撃、巨大なトレーラーが数台、陣形を組み突っ込んできた。


メディア関係が慌てふためく中、ガードの上級系譜達は焦らず戦闘態勢に入る。

まず憤怒の系譜“残虐”の契約者、久遠光一が電流を纏わせたリボルバーを構え――


「一番乗りは、俺だな」


“超電磁砲”を撃ち出し、トレーラーを1台薙ぎ払った。


「ひっく……次は俺だ。“酒神バッカス福音オブ・ゴスペル”!」


次は暴食の系譜“泥酔”の契約者、酒井博。

身体を巨大化させ、突っ込んでくるトレーラーを真正面から“片手で”受け止め……


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


それを持ちあげ、ブンと投げ飛ばした。


「美徳側も負けられないな」


執事服を纏った男装少女、慈愛の系譜“敬愛”の契約者、黛蓮華。

ブンっと振りあげたメイスの先端が凍りつき、それを地面にたたきつける


「“水晶クリスタルブレイド”」


地面から氷の刃が隆起し、トレイラ―を貫いた。


「何の、負けてられぬっ!!」


希望の系譜“熱血”の契約者、赤羽竜太

片手剣とハルバードの柄をつなぎ1本にし、炎を纏わせ頭上で振り回す。


槍に纏わせた炎が鳥を模り――


「“鳳凰撃”!」


槍を投げつけ、炎の鳥“鳳凰”がトレイラーに襲いかかり……

爆散させたと同時に、槍が宙を舞い竜太の手元に戻った。


「――一員の身で言うのもなんだけど、上級系譜が2桁揃ってる時点で、どうにもならないのわからないかな?」

「紅葉、油断は禁物」

「さて……どう出る事やら?」



――所変わって。


「うぅっ……」


凪の能力により捕縛されたのは、結局連れてきた高官全員。

更に言えば、ピュアプラントを始めとする正負共同プロジェクト関連を襲った、テロ集団への援助も行っていた。


--正と負の友好を撤回し、戦わせる事を目的として。


「……本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいだわ」


首相はその有様に、頭を下げる。


「……なんで」

「ん?」

「なんで皆、戦いたがるの? ……なんで」

「自分にとって、都合が悪い方向に流れようとしているから――それだけの話」


宇佐美がギリっと歯を食いしばり、爪が食い込み血が垂れる程拳を握りしめつつ呟いた声に、傲慢の契約者がそれに答えた。


「正と負が、手を取り合う事が都合悪いって……」

「――美徳の一角を受け継ぐなら、正負友好をなぜテロを起こしてまで反対するか位考えろ。いつまでも巻き込まれた被害者気どりでは困る」


カチンっ!


「被害者って、そんなつもりはありません! これはあたしが……」

「なら考えろ。ただ叫ぶだけ、掲げるだけなら傍迷惑以外の何物でもない」

「うっ……」

「――朝霧、大事だからと甘やかすな。ここに甘ったれも役立たずもいらん」

「すまない」


話を振られたユウは、頭を下げ謝罪。

白夜はため息をつき――


「まあ良いだろう。なら教えてやる」


そう吐き捨てる様に言い放った。


「――正、あるいは負の契約者を恨む事でしか自分を保てない者にとって、自分を否定される世になってしまうが故」

「……!」

「更に言えば大罪、美徳は同じ大罪、美徳しか殺せない。一般人どもにとっても、我らの力の矛先がどこへ向かうかがわからなくなり、不安が付きまとう――だからこそ否定する。世界崩壊を事が起こった程度にしか認識しないままにな」

「そんな……!」

「――否定するなら問おうか? ならばなぜ、ピュアプラント襲撃は起きた?」


ピュアプラント


世界崩壊で生じた問題の1つ、食糧不足を解決する一大プロジェクト。

動植物性食料生産に大きく貢献し、尚且つ正と負の親善事業としても大きな役割を果たす、世を左右する重大な施設。


「あそこを破壊すればどうなるか、わからないか?」

「――そんなの、食糧不足は解決しないじゃないですか」

「はぁっ……更に言えば、期待を裏切られたと、あちこちで暴動が起きる」


呆れたように溜息をつき、白夜は補足説明。


「まあまあ、そこまでにしておきたまえ大神君。少し休憩にしよう」

「――そうだな」

「あと宇佐美嬢、これは僕からの意見だけど……突きつけられた問題を拒むようなら、力は持たない方がいい」

「え……?」

「わかり易く言えば、そうだな……法律は人を守るための物だが、人を差別し貶める基準にもなる――と言えばわかるだろう? それと同じさ」


昴が仲裁に入り、会談は一時中断。


「…………(ふぅっ)」


その様子を見て、やれやれと言わんばかりにため息をつき、笑う様に口元に手を当てる詠。

宇佐美は顔を赤くして俯き……。


「……ごめんユウ。あたし、恥かかせちゃった」


ユウに謝罪をした。


「いや……場に慣れるだけでいいって言ったのは俺だ。これは俺の責に」

「やめて。甘えちゃいそうだから」

「そう言う所は流石ね。宇佐美も」

「対に甘えてばかりじゃ、美徳の契約者として情けないからね――強いって、色々と大変だなあ」

「じゃあ逃げる?」

「それこそ嫌」


ちらりと、つるしあげられている者たちに目をやり……


「――流石に、恥知らずにだけはなりたくないから」

「賢明ね」

「ありがと――なんだか、ユウに月、怜奈さんと親しくなったことが、すごい奇跡のように思えてきちゃった」

「なら大切になさってください。それを実感できたなら、宇佐美さんはきっと大丈夫です」


「あの子が、2代目勇気の契約者ねえ……宇宙君によく似て、良い子じゃないか」


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