第83話
ゴォォォオオオオオオオっ!
「なっ、なんだ!?」
「おっ、おい!」
「うわあああああっ!」
所変わり、会議場の外。
テロの襲撃、巨大なトレーラーが数台、陣形を組み突っ込んできた。
メディア関係が慌てふためく中、ガードの上級系譜達は焦らず戦闘態勢に入る。
まず憤怒の系譜“残虐”の契約者、久遠光一が電流を纏わせたリボルバーを構え――
「一番乗りは、俺だな」
“超電磁砲”を撃ち出し、トレーラーを1台薙ぎ払った。
「ひっく……次は俺だ。“酒神の福音”!」
次は暴食の系譜“泥酔”の契約者、酒井博。
身体を巨大化させ、突っ込んでくるトレーラーを真正面から“片手で”受け止め……
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
それを持ちあげ、ブンと投げ飛ばした。
「美徳側も負けられないな」
執事服を纏った男装少女、慈愛の系譜“敬愛”の契約者、黛蓮華。
ブンっと振りあげたメイスの先端が凍りつき、それを地面にたたきつける
「“水晶の刃”」
地面から氷の刃が隆起し、トレイラ―を貫いた。
「何の、負けてられぬっ!!」
希望の系譜“熱血”の契約者、赤羽竜太
片手剣とハルバードの柄をつなぎ1本にし、炎を纏わせ頭上で振り回す。
槍に纏わせた炎が鳥を模り――
「“鳳凰撃”!」
槍を投げつけ、炎の鳥“鳳凰”がトレイラーに襲いかかり……
爆散させたと同時に、槍が宙を舞い竜太の手元に戻った。
「――一員の身で言うのもなんだけど、上級系譜が2桁揃ってる時点で、どうにもならないのわからないかな?」
「紅葉、油断は禁物」
「さて……どう出る事やら?」
――所変わって。
「うぅっ……」
凪の能力により捕縛されたのは、結局連れてきた高官全員。
更に言えば、ピュアプラントを始めとする正負共同プロジェクト関連を襲った、テロ集団への援助も行っていた。
--正と負の友好を撤回し、戦わせる事を目的として。
「……本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいだわ」
首相はその有様に、頭を下げる。
「……なんで」
「ん?」
「なんで皆、戦いたがるの? ……なんで」
「自分にとって、都合が悪い方向に流れようとしているから――それだけの話」
宇佐美がギリっと歯を食いしばり、爪が食い込み血が垂れる程拳を握りしめつつ呟いた声に、傲慢の契約者がそれに答えた。
「正と負が、手を取り合う事が都合悪いって……」
「――美徳の一角を受け継ぐなら、正負友好をなぜテロを起こしてまで反対するか位考えろ。いつまでも巻き込まれた被害者気どりでは困る」
カチンっ!
「被害者って、そんなつもりはありません! これはあたしが……」
「なら考えろ。ただ叫ぶだけ、掲げるだけなら傍迷惑以外の何物でもない」
「うっ……」
「――朝霧、大事だからと甘やかすな。ここに甘ったれも役立たずもいらん」
「すまない」
話を振られたユウは、頭を下げ謝罪。
白夜はため息をつき――
「まあ良いだろう。なら教えてやる」
そう吐き捨てる様に言い放った。
「――正、あるいは負の契約者を恨む事でしか自分を保てない者にとって、自分を否定される世になってしまうが故」
「……!」
「更に言えば大罪、美徳は同じ大罪、美徳しか殺せない。一般人どもにとっても、我らの力の矛先がどこへ向かうかがわからなくなり、不安が付きまとう――だからこそ否定する。世界崩壊を事が起こった程度にしか認識しないままにな」
「そんな……!」
「――否定するなら問おうか? ならばなぜ、ピュアプラント襲撃は起きた?」
ピュアプラント
世界崩壊で生じた問題の1つ、食糧不足を解決する一大プロジェクト。
動植物性食料生産に大きく貢献し、尚且つ正と負の親善事業としても大きな役割を果たす、世を左右する重大な施設。
「あそこを破壊すればどうなるか、わからないか?」
「――そんなの、食糧不足は解決しないじゃないですか」
「はぁっ……更に言えば、期待を裏切られたと、あちこちで暴動が起きる」
呆れたように溜息をつき、白夜は補足説明。
「まあまあ、そこまでにしておきたまえ大神君。少し休憩にしよう」
「――そうだな」
「あと宇佐美嬢、これは僕からの意見だけど……突きつけられた問題を拒むようなら、力は持たない方がいい」
「え……?」
「わかり易く言えば、そうだな……法律は人を守るための物だが、人を差別し貶める基準にもなる――と言えばわかるだろう? それと同じさ」
昴が仲裁に入り、会談は一時中断。
「…………(ふぅっ)」
その様子を見て、やれやれと言わんばかりにため息をつき、笑う様に口元に手を当てる詠。
宇佐美は顔を赤くして俯き……。
「……ごめんユウ。あたし、恥かかせちゃった」
ユウに謝罪をした。
「いや……場に慣れるだけでいいって言ったのは俺だ。これは俺の責に」
「やめて。甘えちゃいそうだから」
「そう言う所は流石ね。宇佐美も」
「対に甘えてばかりじゃ、美徳の契約者として情けないからね――強いって、色々と大変だなあ」
「じゃあ逃げる?」
「それこそ嫌」
ちらりと、つるしあげられている者たちに目をやり……
「――流石に、恥知らずにだけはなりたくないから」
「賢明ね」
「ありがと――なんだか、ユウに月、怜奈さんと親しくなったことが、すごい奇跡のように思えてきちゃった」
「なら大切になさってください。それを実感できたなら、宇佐美さんはきっと大丈夫です」
「あの子が、2代目勇気の契約者ねえ……宇宙君によく似て、良い子じゃないか」




