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大罪と美徳  作者: 秋雨
第5章 肯定する者、否定する者
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第77話

“審判の日“


そう呼ばれる世界崩壊から、8ヶ月が経過。

世界は殆どの命が死に絶え、人間社会機能も大半が損なわれる事となった。


世界の崩壊により充満していた狂気は四散。

結果として、世界の崩壊が乱世の幕引きとなってしまった。


――真理の契約者の力。

そう密かにささやかれつつ、世は一切の例外許さぬ大きな変化を強いられる事となる。



その大きな要因が、大罪・美徳和平調停


これ以上の戦争は、最早人類という種の存続の危機しか招かない。

傲慢が提唱し、現状を考えればやむおえないと大罪・美徳両陣営は納得し、調印締結。


ただし、乱世を経ての世界の崩壊ともあり、心身ともに疲弊しきった世の人々の反応は、大半が反対。

契約者一般人問わず、敵対者を排除すべきと抗議が殺到。


しかし大罪・美徳を頂点に据え、全てが動いていた世界。

人任せにし、世の責任を押しつけ続けたツケか、それ以上の建設的な意見は出ることなく、なし崩し的に可決される事に。


その後は、第三次世界大戦と同様、大罪・美徳を中心とした契約者を主体に世の復興に尽力する事となった



その中で憤怒、勇気、慈愛、色欲。

元々正と負の調和を望んでいた故に、経過自体に納得はいかない部分はある物の、承認。


この4人――正確には、3つの組織が主体となり、正と負の調和事業を進めて行くこととなる。



「その一環として、色欲と慈愛の共同事業がこちら“ピュア・プラント”です」

「色欲の植物、慈愛の水の技術を使用した、植物性食料生産場として建造された事業で、稼働すれば“審判の日”以降懸念され続けていた問題の1つ、食糧不足解決への大きな要因となること間違いなしだそうです」

「また、ここでは食用しょくよう合成獣キメラの食糧栽培も予定されてますので、まさに動物植物両方の食糧の質と自給率向上を成せる、まさに一石二鳥。落ちつけば美容食の開発にも手掛けるそうなので、アタシ達の美容で一石三鳥かな?」

「ですですー。みやちゃんかんげきですー!」


ピュアプラント稼働一週間前。

組織を持たない宇佐美は、ナツメの護衛を着けた上で、ラッキークローバーの仲間と共に広報に勤しんでいた。


『許可証ノ提示ヲオ願イシマス』

「はい」

『承認シマシタ』

「B-7ってどっち?」


完成間近と言う事もあり、あちこちで忙しく設備の搬入が行われ、研究者も駆けまわっている。

世の問題を解決する地盤と称されている故に、誰も彼もが真剣そのもので、傍から見ている宇佐美達にもそれが肌で実感できるほど。


「光一、開場式の準備は?」

「段取りも警備プランももう立ててある。で、人員の方は大丈夫だって調べもついた。」

「こちらでも、研究者から設備運搬、清掃員に至るまであらゆるスタッフの巣城や思想について、徹底的に調査した――今度こそ、怜奈様のお顔に泥を塗る様な事には、絶対にさせない」

「蓮華ちゃん……ありがとう。ごめんなさい、何もできなくて」

「いえ、怜奈様がお気になさることではありません! ――私達が浅はかだった、所為なのです」


そんな中で、開場式のやりとりをしている4人を見つけた。

憤怒の契約者、朝霧裕樹とその系譜、残虐の契約者、久遠光一。

慈愛の契約者、水鏡怜奈とその系譜、敬愛の契約者、黛蓮華。


「あっ、ユ……朝霧さん達! すみません。ちょっと良いですか?」



――数分後


「――ご苦労さん」

「ユウ達こそ。大変そうじゃない?」

「まあな……」


ある程度復興したとはいえ、所詮は急ごしらえ。


世界が受けた傷は浅くはなく、世の生活は安定していないどころか、程遠くなる一方。

このテレビにしろ、難民キャンプ同様の仮設住宅の立ち並ぶ中の、共同スペースに1つ置かれている物にしか映らない程。


それでも、ピュアプラントへの期待度は高く、今か今かと待ちわびる声は少なくはない。


「何としても、成功させないとな」

「うん。内容は内容だけど、結果として正と負が共同事業、なんて事が実現しようとしてるんだから、複雑ではあっても嬉しい」

「――だな」


特に宇佐美とユウにとっては、内容が内容とはいえ、正と負の友好の実現。

それに対して、世の誰よりも思い入れが深い分、この事業への期待は最も強かった。


「あたしも組織持ってたら――」

「よせよ。俺達と違って組織持ってない分、宇佐美だけに出来る事もあるんだ。広報とか、慰安コンサートとかな」

「それなら任せて」

「そうだ、なら頼みたい事がわっ!」

「「「「「「……このパターンは」」」」」」


ユウ、宇佐美、歩美、さやか、京、ナツメは、光一の居た方を見ると……


「むーっ!!」


毎度おなじみの、月の胸に顔を埋める形で抱きしめられてる光一の姿があった。


「……相変わらずですね、月さんも」

「――下品な物だ」

「いや、あれは光一責めるのは酷だと思うんだが」


苦笑する怜奈と、呆れたように溜息をつく蓮華。


「……なんだか、ずいぶん遠くへ来た気がするなあ」


そんな様子を見て、宇佐美はポツリとそう呟いた。


「そうかな?」

「うん……もうすぐ1年になるけど、ユウと出会った事からここまでになるなんて、思わなかったなあ」


色欲との出会い、ナワバリ奪還戦、慈愛との戦争、そして光一の付き添いでの仕事。

そして乱世の襲来に、世界の崩壊。


「――なんだか、色々と懐かしい」

「だろうな。なんかわかる」

「ユウも? だよね――世界が壊れた時はどうなるかって思ったけど、漸くここまでになれたんだから、きっとこれからも大丈夫……だよね?」

「大丈夫さ。そうじゃなかったら、そうすればいい」

「うん。契約者でも一般人でも、出来る事があるならきっと何とかなるって、そう信じて」


宇佐美が手を差し出す。

手の甲を上に、広げた形を見て……。


全員が、その手に手を合わせる。


「がんばろ!」

「「「「「「おーっ!」」」」」」


気持ち新たに、全員はそれぞれに歩を進め始めた。



「――光一。例の件、どこまでつかめた?」

「――ダメだ、全然。なあユウ」

「――わかってるよ」

「――なら、頼む」



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