第76話 エピローグ
その日
「うわあああああああああっ!!」
「ぎゃああああああああっ!!」
幾多もの断末魔と、轟音が世を包み……
幾多もの命がかき消され、呑みこまれていく。
その中心で……
「…………!」
引き裂かれる次元に呼応する様に地面が隆起し……
「…………」
その隆起が、炎の翼によって溶けるように消え去って行く。
声も音も全てはかき消され、ただひたすらそのぶつかり合いを起点に、世界は壊れて行く。
過ぎた欲望は身を滅ぼす。
それを現す様に……
「……」
2人が力を振るう度、世界は壊れ……
2人の心身共に、壊し続けていた。
「はぁっ……はぁっ……」
「くっ……ふぅっ……」
衝突がやみ、2人は息を切らし佇む。
骨は砕け、肉は裂け、血は滴り落ちている、満身創痍の状態で。
「……そら……ごめ……ん」
ユウの右腕に風が集まって行き、燃え上がる。
ユウの身体を上回る大きさのそれは、瞬く間に数百メートルもの大きさの、太陽を連想させる火球へと変貌した。
「おれ……まだ……い……ない……さみ……のや……くが」
朦朧とした目で、白夜へと矛先を向け……
「……まだだ」
それに対する白夜も、寧ろユウより重傷の身体を奮い立たせ……
空間を引き裂き、“凶座相”を発動。
太陽と光がぶつかり……
世界は裂け、人の文明の大半が崩壊する事となった。
その崩壊した世界で初めての動き。
それは……
「いてて……」
「大丈夫ですか、宇佐美さん?」
「ええ……なんとか」
宇佐美と怜奈、そしてシバの無事である。
「こりゃ、予想以上だな……さて」
「「?」」
シバは砂を集中させ、“砂漠の処女を展開。
それを……
バキッ!
「え?」
最も花としての形を取っていた個所をへし折り、地割れへと投げいれ黙祷。
「――意外か?」
呆気にとられていた宇佐美に、シバが問いかける様にそう呟いた。
「……正直」
「良い事教えてやるよ――人は常に罪を犯し、業を背負っている。その事を自覚できるか出来ないか、はたまた自覚しようとしないかで、人か悪人か外道かに分かれる」
「――大罪って、そう言うの好きね」
「生半可な欲望や理性じゃ、大罪や美徳のブレイカーとは決して契約は出来ない。だからこそ強過ぎる欲望、あるいは理性を制御するための美学、あるいは持論を持ってんだ」
「あ、そっか。大罪が好き勝手振る舞えば、戦争が絶え間なく起こってるだろうからね」
「そう言う事。恥や間違いを自覚しようとしない奴ほど、理を悪用したがるものなんだ……っと、ここまでにしよう。ナワバリがどうなってるか気になるし」
「あっ……!」
そこで宇佐美の脳裏に、親しい人たちの顔が次々と浮かんでいく。
「歩美、さやかさん、みやちゃん……大丈夫かな?」
「蓮華ちゃん、皆……」
怜奈も同様で、そわそわし始めた。
「そうと決まりゃ、行くか。お前らの旦那と、オレの同盟相手を保護しに」
「「旦那じゃない(ありません)!」」
「いや、水鏡の姉ちゃんは説得力ないぞ? あんな大胆発言しといて」
「ただあの戦争後、ワタクシの身柄を預けた事を伝えただけです」
「……ごめんなさい、あたしもそうは聞こえなかった」
「――やれやれ」
3人はそんな会話を交わしつつ、一路ユウと白夜の交戦地点へと足を運ぶ。
「……すっげ」
近づくにつれ、幾多もの地割れやクレーター、抉れた地面が酷くなって行く様は、世界に与えた惨劇を物語っていた。
他にもあちこちで焦げくさいにおいと、異様な暑さが鼻と肌を刺激する
「……これが、真理の力」
「まるで、核爆弾を何度も撃ち込みあった様です」
「さて、この辺りが中心か……どうやって探した物か?」
ボコっ!
「……ユウ!?」
「……残念ながら、ハズレだ」
「大神、生きてたか」
地面が盛り上がった場所。
そこから出てきたのは、血だらけで傷だらけの白夜。
「……そんな!」
「――やっぱ生きてたか」
宇佐美の声を遮る声は、そのまま白夜の前に歩み寄る。
「当然だ。貴様もよく生きていた」
「宇宙に追い返されてきた。まだ来るなっつっでえッ!
「ユウ!」
「朝霧さん!」
グギッ!
「あーあ……あの2人に抱きつかれて、しかも水鏡のお姉ちゃんの胸で窒息って、羨ましい筈なのにそうは見えねえ」
「武田、ここからが始まりだ……わかっているな?」
「当然だろ。この先に何が待っていて、どんな物と巡り合い手に入れ、愛でるか……今から楽しみでしょうがねえ――だが、この終焉と始まりが何を意味するか」
「それを決定づけるのは、これからだ――さて、まずは北郷か」
「なんだよ、返すのか?」
「場合によってはな――世には勇者ではなく魔王が、救いではなく破滅が必要とされる事もある」
「違いないな。この破滅でわからんようなら、人は滅亡したほうがいい」
世界崩壊の日。
または、審判の日とも言われるその日。
世界は崩壊した。




