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大罪と美徳  作者: 秋雨
第4章 DEUS EX MACHINA
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第75話

「ふぅーっ」


宇佐美と怜奈の2人

美徳の2人と相対していると言うのに、シバは葉巻を吹かし煙を吐き出す。


「……余裕ですね」

「真理と真理の戦い、どんなもんか予想もつかねえが、ただ言える事は始まっちまえば誰一人介入できねえのは確か――ならちとカッコつかないが、足止め出来りゃオレの勝ちだ」

「せこいですね。大罪の1人ともあろう人が」

「目的は履き違えるもんじゃねえ、果たすもんだ……大体、そう言う奴等粛清しようって奴が、履き違えてどうする? ――だからこそ、手は抜かねえ」


シバが葉巻を携帯灰皿に押しつけ、そのまましまう。


「折角だ。大罪との命のやりとり、ここでかみしめな! “サンドピラー”」


砂の巨腕を地面にたたきつけ、砂は地面に散らばり……


「“水帯”」


怜奈が宇佐美の足場に水の帯を展開し、流れを起こし引き寄せる。

と同時に、宇佐美の居た場所に砂の柱が地面を突き破り、姿を現した。。


水の帯をあっと言う間に蒸発させて。


「……!」

「宇佐美さん、下がっていてください」

「なんだ、やる気かよ? オレとアンタの能力、相性で言えば」

「相性が全てではないでしょう? ……“ミズチ”!」


怜奈が長刀を振るい、刃先に水を纏わせ……水のヘビを模り、シバへと襲いかかった。


「無駄だ。“枯渇の手”」


シバの右腕が異様な熱気を纏い始め、氷のヘビに触れた途端に蒸発、


「オレは万物に渇きを与える。お前の能力じゃオレには勝てねえ」

「そうとも限りませんよ? ……“氷縛”」


蒸発すると同時に、水蒸気がシバに纏わりつき氷となって束縛。


「確かに、水で貴方に勝つ事は不可能。ならば他の手段を用います」

「成程な……! うおぉっ!」


まとわりついた氷に砂を纏わせ、熱気を発しとかしてしまう。


「枯渇能力の元は、砂に込めた強力な熱。砂漠では勝ち目はありませんが、この場に水分がある以上、冷やしてしまえば問題はありません」

「別に枯渇だけが能じゃねえ。“砂漠デザート処女メイデン”」


シバの砂が右腕に集中し……バラの花の様な結晶の腕となった。


「砂漠のバラをご存知かな? ある種の化合物が、バラの花の形に結晶化したもの……これはそれを能力で再現したものだ」

「あんなことまで……」

「ボーっとしてる暇はあるのか?」

「っ!」


シバの挑発で、宇佐美はぐっと拳を握りしめ、構えをとり怜奈と並ぶ


「……ユウ」



その少し離れた場所。


「……人とは何か」


傲慢、そして正義のブレイカーを着け、胸元には複数契約中継演算装置“ブレイクハート”が、きらりと輝いている。


「欲望、不正解――理性、これも不正解」


ザッ……!


「今の世と同じ……理性も欲望も、等しく釣り合わねば人は人となりえない。なぜなら理性と欲望は表裏一体。究極の理性とは究極の欲望であり、究極の欲望は究極の理性となりえる」


ザッ……!」


「――それこそが真理」


ふと顔を向けた先。


息を切らし、意識も朦朧とし、足取りもおぼつかない。

しかし眼だけは、しっかりと自身をとらえ、纏う雰囲気は臨戦体制そのもの。


「……」


2人は相対する。


片方は、ぐっと拳を握りしめ空間を破り取る。

片方は、背から噴き出す様に自身の何倍もの大きさの、炎の翼を創り上げる。


ポタッ……ポタッ……!


白夜を蝕むのは、肉体の損傷

にぎりしめた拳からは血が垂れ、地面に滴り落ちる。


「……てろ……さみ」

「……?」

「……くそ……く……まも……る」


ユウを蝕むのは、自我の損傷。

言葉もおぼつかず、ただひたすらに白夜に向け、敵意を放つ。


「来い、朝霧裕樹――我らの罪深さ、そして世界が背負うべき痛み、共に語り合おう。その身、その命を賭して」



ゴゴゴゴゴっ!!


「っ!」

「まさか……!」

「どうやら、始まったらしいな」


ビキビキビキビキビキッ!! ドゴォオオオッ!!


「宇佐美さん!」

「捕まって!」

「くっ! “サンドの道(ロード!)”」


宇佐美が風で空へと飛び、シバが砂を固め足場を創り難を逃れる。

地面は割れ、それに沿う様に炎が走っていた。


「……こりゃ、予想以上だな。世界を壊す力がぶつかるって、甘く見過ぎてたか」

「ユウ……!」

「朝霧さん……!」




「おっ、おい! 一体何が起こってるんだよ!?」

「さっきより、なんかすごくなってないか!?」

「何が起こってんだよ!? この世界、一体どうなっちまうんだ!?」

「わからねえ……え? おい、なんかこっち来るぞ!?

「なっ! うっ、嘘だろ!?」

「逃げろ! 早く逃げるんだ!!」

「うっ、うわああああああああっ!!」



「……!」

「宇佐美さん?」

「何……今の? なにか、たくさんの断末魔が突然、耳に飛び込んできた様な」

「落ちついて。深呼吸をして、ワタクシの指示に従って……」

「――さて、何万人生き残るか?」


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