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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第6話 改訂済

光一と毒島、ユウと公人。

残虐と狡猾、憤怒と怠惰の交戦が繰り広げられている中で……。


「……」


前勇気の契約者であり、今は亡き一条宇宙の立ち位置。

どう考えても、人間が出せる力ではないそれが直撃したと言うのに、平然とは行かなくても普通に戦闘を行っている光景。


そんな一般人の観点から見れば、信じられない光景。


「……これが、兄さんの立っていた領域」


ふと、宇佐美は兄の形見であるペンダント

――彼らが持つ物と同格であり、対に位置する勇気のブレイカーに目を向ける。


「……兄さん」


ふと見れば、先ほど怠惰にやられ倒れている契約者達。

それらは皆、この勇気のブレイカーであるペンダントを狙い、やってきた面々。


“最強”


その証が、今自分の手にある。


「…………」

「……大丈夫だよ、歩美ちゃん」

「……いったい、どうなっちゃうんですか?」


苦楽を共にした仲間が、その光景に震えていた。


「……」


そんな中ただ1人、ユウと呼ばれていた少年の妹だけが、その中で違う世界に居るかのように落ちつき払っている。


「……怖くないの?」


宇佐美はふと、問いかけていた。

同じ“最強”の妹と言う立場か、自分でもすんなりと聞けたと、本人は思った。


「うん。ユウ兄ちゃんに光一兄ちゃん、裕香との約束破った事ないもん」


幼さゆえの楽観……と言うだけではなさそうだった。


「……そっか」


宇佐美はなんとなく、自分に似ていると思った。

もしあそこで戦ってるのが、自分の兄だったら……いや、彼等は自分の兄と対極に位置する存在なら、兄と同等。


そう考えれば、あまり怖くはなくなった。


「……それで、どうしよう? 他の大罪や美徳の人も動いてるんでしょ?」

「? 宇佐美お姉ちゃんにとって、美徳は味方だよ?」

「勝手で単純な話だけど、今契約者は敵だったとはいえ、兄さんと繋がりがあったとわかる貴方達以外を、信用する気になれないの」

「そうなんだ。なら大丈夫だよ、光一お兄ちゃんが手配してたから」

「手配って?」

「ひ・み・つ」


ガキンッ!


「っとと」


ナイフと炭素硬化された腕がぶつかる音で、5人はその方向に目を向ける。


「ふぅっ……」


頬に一筋の傷が走る光一に、わき腹を引っ掻かれた毒島。

配置的に、光一の後ろに少女たちが居るのを見て……。


「チャンスダ! ……うっ、うぐっ……げふっ」


毒島が大きく息を吸い込み、腹を手を当て抉るように力を入れる。

ボンッと腹が膨張し、背をのけぞらせ……


「! まずい!」


光一がリボルバーを握る手に電流を込め、超電磁砲レールガンを構える。


「うぷっ……喰らエ、“猛毒大砲ベノムカノン”!」


毒島が勢いをつける様に上半身を振り、大質量の毒の塊を吐きだした。

その軌道を見極め……


「甘い」


光一は、超電磁砲レールガンを撃ち出した。

オレンジの閃光が直線を描き、その直線が毒の塊を撃ち抜いた。


――その軌道をそらす様に。


「……今の、こいつらごとやる気だったな?」

「用があるのは勇気のブレイカーだけダ。契約者自体は必要じゃなイ」

「だろうな。ま、こっちの目的は達成された以上、お前の主張何ざどうでも良いが」

「はっ?」


ゴォォオオオオオオッ!!


「ン?」

「こっちだ、クエイク!」

「! テメ!」


その場から一歩退くと同時に、轟音が響いた。


砂塵を引き起こしつつ空から現れたのは、鉄の塊を組み合わせて人型にした様な、“武骨”と言う表現が似合うロボット。

軽く見ても4メートル以上はあり、分厚い装甲に加えて成人男性の胴回りはありそうな太い腕と、重量級を思わせる鉄の塊をつなげ、人型にしたようなボディ。


そのロボットは顔を光一に向け――


『Whom I kept waiting.My master!』

「いや、ドンピシャだ。クエイク、すぐにこの場を離れるぞ」

『Yes.My master!』

「させるカ!」


毒島が右手に毒を吐きかけ、それを念動力で剣の様に固め襲いかかる。


「クエイク」

『Yes.My master!』


背の飛行に使うブースターが添加されると同時に、大木を思わせるクエイクの腕が毒島に向けられて突き出される。

その腕が――。


「うワッ!」


発射された。

それを回避すると同時に口が開かれ、レーザーが照射される。


「ちィ!」

「悪いが、ここまでだ!」

「っ!?」


その隙を見逃す光一ではなく、構えたリボルバーに電撃を集め――


「ぐっ――うぉぉおおおおおっ!」


引き金を引くと、衝撃波を引き起こしながら“超電磁砲レールガン”が発射され――毒島彰を、ふっ飛ばした。


「今のウチか――早くクエイクに乗れ!」


そのすきに、光一は宇佐美達に叫びかけた。


「--うっ、うん! 皆、急ごう!」


宇佐美が声をかけ、歩美達3人はあわててクエイクに駆け寄る。


「――なんとかなったか! よし、後は……」

「--めんどくせえ」

「こいつさえ何とかすれば! “巨人タイ剛腕タン”!」


その様子を見て、あと一歩。

それを決めるべく、ユウは溶岩を右腕にまといつきだす。


「--めんどくせえ。逃がしたら、めんどくせえ」


バキンっ!!


「!? しまっ……!」


――が、それは斥力による防壁にはじかれた。

その次の瞬間――頭をつかまれ、地面に全体獣に加え重力強化を施したうえで叩きつけられた。


「ユウ!」

「--めんどくせえ。つぎ、お前たち」

「!?」


公人が手を突き出し、重力場を形成し始めた。


「--クエイク、早く飛べ! ……俺が足止めする!」

「そんな、光一兄ちゃん! --ユウ兄ちゃん!!」


裕香の叫びを聞き――宇佐美は、その姿に自分を重ね合わせた。


兄を失った時、兄が重傷を負った時――いつも思ったこと。

自分に力があれば――その次の瞬間、宇佐美は裕樹のブレイカーを手に取っていた。


――かつて、兄の力となっていたそれを。


「--お願い、応えて」


――そんな願いとは裏腹に、勇気のブレイカーは何の反応も返さない。


「--怖い……だけど、あたしはそれ以上に守りたいの。大事な友達も、目の前の小さな女の子の願いも……だから!」


キィィィイイイ!


「--あたしに、兄さんがふるった力を!」


勇気のブレイカーが、機械的な音を鳴らし始めた次の瞬間――一条宇佐美を中心に、風が巻き起こされた。


「--! 勇気が……起動、した!?」

「--めんどくせえ……それ、困る」


公人が鉄球をとかされ、残った鎖に重力場をまとわせ振り上げ――宇佐美に向けて投げつけた。


「--!」


宇佐美がそれをよけ、風を使い体を浮かせ突進。


「やあっ!」

「!」


公人の反応が遅れ、顔面に宇佐美のひざ蹴りが突き刺さり――


「! いまだ!」


今度こそはと、ユウが溶岩の腕を握り締め、宇佐美が離れたと同時に巨大なパンチを叩き込んだ。


「--助かった、サンキュ! ってことで、ずらかるぞ!」

「え? きゃっ!」


宇佐美を担ぎあげて、ユウはクエイクに向けかけだし――。


「よし、飛べ!」

『Yes.My master!』


飛翔するクエイクに飛び乗り、一路空へと逃げ去った。

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