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大罪と美徳  作者: 秋雨
第4章 DEUS EX MACHINA
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間話 異空間にて

奇妙な文様のみが広がる空間。

何もなく、誰も存在せず、ただひたすらに無だけが広がるその中で……


「…………」


手足を投げだす様に広げ、空間の流れを漂うかのように1人の男が眠っていた。


ゆっくりと目を開け――


「……人とは命、命とは力、力こそが全て――人は自身を理解し、理を理解し、それを受け止める器を持つべく成長し、考え、強くあらねばならない」


正義のブレイカーと、複数契約の要となる中継演算装置“ブレイクハート”。

その2つを握りしめ、もう一度眼を閉じる。


「さもなくば、目先の勝手な決めつけで否定し、与えられた権利を過信……いや、勘違いをした、獣以下の存在になり下がる」

「――それは我に対する批判か?」


白夜が首を動かした先。


水晶の様な塊に磔にされ、右腕を治されあらゆる延命措置を施された、前正義の契約者。

北郷正輝が忌々しげに白夜を睨みつけていた。


「無粋だな。折角の一時に茶々を入れるとは」

「こんな場所でそんな事するお前の神経を疑う!」

「静かだろう? ……物を思うには、余分なものが何もない空間が最適。私は自身を見失わぬよう自問自答を行い、自身を見つめ直すことを日課としている」

「……傲慢らしからぬ勤勉な態度だな」

「嫉妬、暴食、怠惰、強欲、色欲……そして、憤怒。その中でも私が司る傲慢こそが、他の欲望すら呑みこむ最強の欲望」


白夜はゆっくりと、白い結晶のペンダント“ブレイクハート”を首にかける。


「手に入れて当たり前」


それに続くよう、ゆっくりと“正義のブレイカー”を着ける。


「成しえて当たり前」


傲慢と正義のブレイカー、そしてブレイクハートが起動し……


「そして、到達出来て当たり前……」


ブチブチブチブチっ!! ブシュっ!!


白夜の肉体に亀裂が入ると同時に、空間が乱れ、破れ、壊れ……

先ほどまでの光景が、あっと言う間に別物へと変貌してしまう。


「これこそが傲慢の真理――真なる欲望は、他の大罪の追随をも許さない」


それだけを言うと、白夜は“ブレイクハート”と“正義”のブレイカーを外し、しまう。

右腕がズタズタとなり、血が滴り落ちて行く有様を気にも留めず。


「……成程。確かにこれ以上の傲慢などあり得ない程傲慢だ。だからこそ我の正義を否定するか?」

「バカを言え。自身の正義の為、そして守るべき物の為に全力を尽くし、自らを危険にさらす事を厭わない姿勢に対し、否定などしない……間違わない人間などどこにもいない以上、評価が出来る部分があるのなら肯定すべきだ」

「それが我を生かす理由か? ――ふざけるな! 貴様のそんなふざけた考えで、我が悪の施しで生きながらえるだと!? 屈辱だ!!」


ギリっと、忌々しげに歯を食いしばる。


白夜を殺せば、この空間がどうなるか等わからない事等、正輝にとって問題ではない。

しかしそれ以前に契約者としての力を失った以上、白夜を殺す以前にこの拘束を破るすべもない。


自身の力の源である正義のブレイカーは、今や白夜の手の内。


「世を憂い、自身の見出した正義を信じ、その先に平穏があると信じて邁進し続けた……違うか?」

「……それがなんだ?」

「素晴らしい事じゃないか……見ろ」


『うおおおおおおおおおおおっ!』

『殺せ殺せ殺せ殺せ!!』

『くたばれ負の契約者ども!!』

『死んでたまるか!!』


そこへ割り込んでくる、あり得ない筈の他者の声。


正輝が見た先は、先ほどの白夜の力で出来た空間の裂け目。

その先では、正の契約者と負の契約者が戦う……いや、殺し合う光景。


「時代に翻弄され、考える事を放棄し、人としての尊厳さえも捨て去る者達……その中で、揺るがぬ信念を持ち、傷つく事を恐れず邁進したお前をなぜ貶せる?」

「…………」

「何が契約者社会……我らの功績より生まれる利益おこぼれに預かろうと、我先に群がる羽虫どもの末路としては、実にお似合いの時代だ」


1人、また1人と力尽き倒れて行く光景。

白夜はそれとは別に、契約者が一般人に襲いかかり、殺戮を行う光景に目を向け……


「――教えてやらねばならん」


空間の裂け目から、次々と響いてくる人々の嘆きと断末魔。

それを意に介する様子も見せず、淡々と……


「“弱さは罪”。目の前の現実に抗えん弱者どもに、許される権利などあってはならないと」


そうつげ、空間の裂け目に飛び込んで行った。


「……我は、とんでもない存在を、対にしていたのか?」


その様子に、北郷正輝はただ唖然とするしか出来ず……


ただ1人、支配者を失った影響か。

空間が裂け目の目立つ物から、元の奇妙な文様の広がる空間へと戻って行った。


「…………弱さは罪」


その言葉が、偉く正輝の琴線にひっかかったまま。

ただ悪戯に時は過ぎて行った。


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