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大罪と美徳  作者: 秋雨
第4章 DEUS EX MACHINA
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第69話

嫉妬の契約者、陽炎詠

ゴシックロリータのドレスを愛用し、化粧を嗜みフリルをあしらった日傘を愛用する等、可愛らしい人形のような少女。


その外見に反し、性格は大罪で最も好戦的で嫉妬深く、執念深い事で有名で……


「…………(ぎりっ)」


ギンッと射抜くようにユウを睨みつけ、口元からは歯軋りの音が響く。

詠の“影士シャドーマン”と、ユウの“巨人タイ剛腕タン”がぶつかり、力負けし始めている故に。


「…………」


詠がそっと宇佐美達の方に視線を向け、日傘を広げくるくるとまわし始める。


『オォォォオオオオオッ!!』

『ギイィィィイイイイッ!!』


その動きに沿う様に、その傘の縁に呻き声の様な物をあげる何かが集まって行く。


「なっ、何あれ!?」

「……気を付けてください、宇佐美さん」

「え?」


宇佐美が疑問符を浮かべる横で、怜奈は長刀を構え水を纏い始める。


「…………」


回したままコツっと先を地面に突き立て、その何かは地面へと沈んで行った。


ボコボコッ!


「え?」


その次の瞬間、あちこちの地面が盛り上がり、そこから……


『オォォオオオオオオオッ!!』

『ウゥゥゥウゥウウウウッ!!』

「ひぃっ!」

『“デス奴隷スレイヴ”……その胸と顔切り刻んで、仲間入り』


人が……否。

正義の侵略、あるいは正義と嫉妬の戦争の際に死んだ民間人や契約者の死骸が、一斉に這い出てきた。


「よそ見してんじゃねえぞ!!」


無論ユウとて、それを黙って見る訳もなく。

影士シャドーマン”を押し返した溶岩の腕が、詠に向け襲いかかる。


「…………」


ザンッ!


「っ!?」


……その寸前、ユウの足もとまで伸びた詠の影が、ユウの胸を斬り裂いた。


「…………」


詠はハァッとため息をつき、ふるふると首を横に振る。

そうしてる間に影はユウの身体を包み、そのまま締めつけ始め……。


ブシュっ!


影に締めつけられた個所から、斬られたかのように出血し始める。


「舐めんじゃねえ!!」


拘束されている腕を、出血するのに構わず無理やり動かし背の“六連”を抜き……。


「“迦具土カグツチ”!!」


両腕にマグマを纏わせ、刀を牙とした溶岩竜を構成し、詠を攻撃。

ユウの拘束を解除し、“影士シャドーマン”を再構成し、盾とする。


「はああああああああああああああああっ!!」


ユウが吠え、影に切り刻まれた傷が塞がって行き……

迦具土カグツチ”が、“影士シャドーマン”を喰らい、一気に詠を喰らう。


「っ!?」


――と思われたその瞬間、“迦具土カグツチ”が逸れてしまう。

ユウが違和感を感じた足を見ると……


『オォォオォオォオオオオッ!』

『アアアァァァアアアアアッ!』


先ほど詠が扱っていた呻き声を上げる何かが、青白い炎を纏いユウの足に絡みついていた。

力が抜けて行く感覚と同時に、じわじわと焼けるような感覚が広がって行く。


「…………」

『“呪縛ゴースト鬼火フレイム”……この戦場で死んだ者達の怨念の炎、憤怒のマグマをも焼きつくす』

「この……」

『……“怨霊ナイトメア呼声シンドローム”』


日傘の先端に、またも怨霊が集まり球体を模って行く。

それがユウめがけて放られ……


「うっ……うぁあああああああああああああっ!!」


それを受けたユウは、膝をつき頭を抑え、苦しみの声を上げ始める。


「そんな……! ユウが、あんな簡単に!?」

『何の勝算もなく、大罪や美徳を一度に3人も相手にすると思った?』

「……!」

『……墓場や戦場跡と言った、死体や死霊の蠢く場での戦いで』


パチンっ! ボコボコボコボコッ!!


『死霊を操る力を持ち、精神系攻撃で契約者随一の妾に勝つ事は不可能』


増援のように地面からゾンビが現れ、宇佐美と怜奈を取り囲む。


「後から後から、キリがない」

『妾の可愛い“デス奴隷スレイヴ”たち。あいつ等を切り刻んで仲間入り……』

「させるか!」


怜奈と宇佐美を取り囲むゾンビ達が、マグマになぎ払われる。


「…………?」


詠が目を向けた先では、息を切らし頭を押さえつつ、右腕をマグマで包んだユウの姿が。


「はぁっ……はぁっ……タイミングが悪かったな。苦しむ覚悟ならとうに出来てんだよ!」

『そう……』


何の感慨もなく、詠は地面にこつっと日傘を突き立てる。

その先に先ほどのゾンビ達が引き寄せられていき、それが……


「へっ……?」

「なっ……!」

「うわあっ……」


ゾンビ達が屍肉と骨にわけられていき、骨は溶ける様に、屍肉は混ざる様に1つになって行き、それが合わさって……


『ゴァアアアアアアッ!!』


骨で模り、屍肉で肉付けされた、ハロウィンのパンプキンとなった。

それが吠えると、詠の影が伸びてそれを胴体とする様に、パンプキンから首や手足が伸び、更に手足には骨が加工されて行く。


『“影骨ボーン死霊王パンプキン”……踏みつぶしてやる!』


以前見た“ヒュぺリオン”以上の体躯で、グワッと足を振り上げユウ達を踏みつぶそうとする。


「“ミズチ”」


怜奈が水のヘビを生み出し、それをせき止め……その間に3人は脱出。


「これは骨だな。骨だけに」

「……随分と余裕ね?」

「いや、丁度コレの出番だし」

「コレ? ……って、大刀って云ってもあれに比べれば爪楊枝じゃない」


ユウは背の、自分程ある大刀を抜き、構える。


「まあ見てな。漸く“斬城剣”の出番だし、派手に行くか」


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