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大罪と美徳  作者: 秋雨
第4章 DEUS EX MACHINA
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第68話

「宇宙……宇宙!」

「うっ……お前、眼が……」

「俺よりお前だ! ちょっと待ってろ、今……」

「よせ……わかってる。後悔はない……俺の考え、正しかったんだ」

「ああっ、だから死ぬなよ! ここでお前が死んだら……」

「……なあ、ユウ……頼み、聞いてくれないか?」

「なんだよ?」

「……宇佐美、オーディションに受かったって」

「お前の妹か? ……今話す事かよ?」

「……その祝い、してなくてな……だから……」

「おい、どういうつもりだ!?」

「わかってる……だが、俺が……これを託せるのは、宇佐美だけなんだ」

「……」

「そして、任せられるのも……お前だけだ。任せたぞ……じゃあ、な……親友」


「…………! ――」



謎の災害から、3週間が経過

まるで狙ったかのように各戦場やナワバリを襲い、かなりの数の死傷者、被害を出した災害の元凶は、結局は不明。


しかしどこもかしこも、戦争以前に生活がままならない状態へと陥り、結果的に災害が戦争を止める結果となった。


「よし、次だ!」


それは憤怒のナワバリも例外ではなく、光一はあちこちの復興の指揮をとり……


「それじゃみんな! 次行くよー!」

「「「おーっ!」」」


ナツメは暴走騎兵隊を率い、物資や食糧の搬入。

更に言えば、この度開発された量産型クエイク達も、運搬や残骸処理等に大きく貢献。


更に言えば、フォールダウンを始めとする非合法活動を行う契約者達も、現状被害を受けており動きは取れず。

故に、復興を進めている状態ではあっても、ある意味平穏は訪れていた。



そんな中……


「……やっぱり正義の陣営で、か」


ユウは宇佐美、怜奈を伴い、嫉妬と正義の戦場跡へと、災害の元凶の調査に赴いていた。


「ねえユウ。怜奈さんはわかるけど、あたしはどうして?」

「いえ。ワタクシも本来、この様な事に同行させる様な立場では……」


その当人たちは、困惑していた。


美徳といえど、半人前ですらない宇佐美と、名目上捕虜の立場である怜奈。

憤怒直々の調査に、しかも右腕の上級系譜を差し置いて同行させるなど、組織としてあり得ない故に。


「……本当は怜奈だけ連れてくるつもりだったよ。でも、そうも言ってられない」

「……?」

「真理」

「……? 唐突に何を言うかと思えば、そんな契約者の都市伝説を」

「……」

「……まさか、実在するのですか?」

「する……本当は墓まで持って行きたかったがな」

「あの、ちょっと良い?」


そこで会話においてけぼりの宇佐美が、話に割り込んだ。


「その真理って何?」

「契約者の都市伝説みたいなもんさ。俺達“大罪”とお前ら美徳を超越した究極の契約者、“真理”」

「……その力は世界を滅ぼすとも、機械仕掛デウス・エクスけの・マキナとも呼ばれています。ですが、真理のブレイカーの存在は確認されていないことから、契約者独自の都市伝説として数えられている話です」

「それが、実在するって事!? それじゃこんな所で話すのまずいんじゃ……」

「心配するな。周囲に気配がない事は確認済み」


それも思念の使い方の1つかな?

と思いつつ、宇佐美は大罪達の超日常に唖然とせざるを得なかった。


「ん? でもちょっと待って。そんな都市伝説に数えられるほどの幻の契約者の実在を、どうしてユウが知ってるの?」

「それは……!」


突如、不穏な気配をユウは察知。

そこでユウの影が揺らぎ……


ガキィッ!!


「きゃっ!」

「まさか……!」


そこから、ゴシックロリータのドレスを纏った小柄な少女。

“嫉妬”の契約者、陽炎詠が姿を現した。


「詠!?」

「…………」

『……こんな所で何してる?』


無口な少女の態度に呼応する様に、突如3人の頭の中に声が響く。


「なっ、何これ?」

「落ちついてください、これは詠さんのテレパシーです」

「何って、災害元の調査に来たんだよ。来たばっかだし、もうちょっと……」

『知るか。そっちの、2人してそんな目障りなでかいの見せつけてないで、さっさと帰れ』

「ちょっ……!」

「そんな……」

「2人? でかいの?」


宇佐美と怜奈は、自分達の胸に向かってる詠の視線に気づいて、身体を抱くようにして一歩下がる。

何の話かわからず、ユウは2人を見比べ……


「……」


少し離れて携帯を取り出し、ゲームをやり始めた。


「「「…………(じとーっ)」」」

「…………」

「「「…………(じとーっ)」」」

「…………」

「「「…………(じとーっ)」」」

「…………あの、なんでさっきから皆して、俺の方ジト目で見るの!?」

「「態度がワザとらし過ぎるわよ(ます)」」

「じゃあ俺の前でそんな話題出すなよ! ってか、それならさっさと調査を……!」


ガギィっ!


『目障り……帰れ』

「……やる気かよ?」


宇佐美に向けて突き出した日傘を、ユウが鞘に収まった“焔群”で受け止める。


『気に入らない……何もかもが気に入らない。殺す!』


後ろに飛びのき、地面の自身の影を日傘でコツっと叩く。


『オォオォォォオオオオオオオッ!!』


その影が実体を持ったかのように起き上がり、ユウめがけて襲いかかる。


「ちぃっ! “巨人タイ剛腕タン”!」


影の突き出してくるに向け、ユウはマグマの腕を構築し受け止める。


「詠、一体ここで何があった!? それだけ聞けばさっさと帰る!」

『……今すぐ帰れ! “影士シャドーマン”に潰されたいか!?』

「目的も果たせず帰れるか!」

『……ならそこのデカ乳どもと一緒に死ね!』

「文字通り嫉妬かよ。幾ら大罪、美徳併せて一番背が小さいからって」


ブチっ!


『殺す!!!』

「「……最低 (です)」」

「背がって言ったよな俺!?」


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