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大罪と美徳  作者: 秋雨
第4章 DEUS EX MACHINA
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第66話

時はさかのぼり……


「後半分か……」


世の犠牲者は、圧倒的に負の方が多かった。

正義の侵攻により、日に日に嫉妬のナワバリは血の海の割合が増し続けている故に。


正義の2つの生体兵器によって。


「“ブレイブクローン”、“ブレイブトレース”を投入しました。此度の戦線も、我らの勝利は確実です」

「御苦労――あの恥さらしも、一応は美徳の一角。役に立つものだな」


“ブレイブクローン”、“ブレイブトレース”

これらは正義で開発した強制学習装置を使用し、前勇気の契約者、一条宇宙のクローンを生体改造し造り上げた、生体兵器。


“ブレイブクローン”

正義の系譜“忠誠”を持たせ、強制学習装置により思念を即席で扱えるようになった、量産上級系譜。

ただし所詮は即席の為、上級系譜に比べると精度は落ちるが、その分を数で補うタイプ。


“ブレイブトレース”

こちらは身体をサイボーグ化し、一条宇宙の戦闘データを強制入力した上で、機械的に一条宇宙の戦いを再現したタイプ


「本当ならば、もう一種加わっている筈だったんですけどね。“ブレイブキメラ”の開発陣からは、当てが外れたとか」

「そうか? ……まあ良い。一刻も早く世の負の契約者達を皆殺しにし、この乱世を終結させるぞ」

「はい!」


北郷正輝にとって、最も優先すべき事は正義。

正義のために命を軽んじ、また負の契約者とその恩恵を受ける者は皆殺しという、苛烈な思想の持ち主。

正の契約者最強であると同時に、契約者で最も殺した人の数が多い男である。


その為に負の契約者からは恐れられ、彼の存在が世の契約者犯罪の、実に8割を抑えているとまで言われている。

また彼の正義は、救われた者や負の契約者の被害者達からは支持されており、この乱世においても彼への支援は止む事はない。


「うわああっ!」

「!?」


そこへ突如、会話をしていた側近が掻き消える様に突如姿を消す。

それと入れ替わるように空間が裂け、1人の男が姿を現す。


「精力的なのは結構だが、前しか見ない悪癖は治っていない様だな」


傲慢の契約者、大神白夜。


「大神!?」

「随分と暴れ回ってくれ」


ドゴォンッ!!


白夜と正輝の拳がぶつかり、人と人との拳の相殺音とは思えない轟音が響く。


「……ほおっ」

「我が新兵器に感け、遊んでいたとでも思ったか?」


北郷正輝はあらゆる物に圧力、振動、衝撃をかける能力を持つ。

それは空間だろうと例外ではなく、彼に物理干渉できない物は存在しない。


契約者最強の攻撃力を誇るその能力をもって、正輝は正の契約者最強として君臨し、白夜の空間破壊を相殺する事が出来る。


「思っていない。私とて、貴様の意思の強さと正義に対する姿勢は認めている。その正義が無用に血生臭過ぎる事を除けばな」

「罵倒のつもりだろうが、貴様ら負の契約者と言う悪の殲滅を掲げる身にとっては、褒め言葉だ」

「別に我ら負の契約者が悪である事も、貴様の正義も否定をした覚えはない」

「それで、何をしに来た? その様子では戦いに来た、と言う訳ではないようだが」

「何、ちょっとした頼みだ――早急に武装解除し、降伏せよ」

「――流石は傲慢の契約者、人の見下し方が一味違う」

「見下す?」


正輝が両腕を広げ、抱きかかえる様に両手を合わせ、ぐっと右手を握りしめる。


「これが答えだ。“衝撃インパクト”!」


白夜に向けて右拳を突き出し、手を開く。

能力によって圧縮された大気が解放され、轟音と共に白夜を起点に広範囲を吹き飛ばした。


「……見下しているのはお前だろう?」

「何!?」

「――人は変わらない物だと決めつけている」


――にもかかわらず、白夜は無傷でその場に立ち、何気なく服についた埃を払い始める。


「バカな――我に、空間破壊の盾は通用は」

「そしてその決めつけこそが、貴様の限界も表している――成長の余地なき者に用はない。消えろ、“凶座相グランドクロス”」


両腕を突き出し、ぐっとにぎりしめ空間を引き裂く。

その引き裂かれた空間の中で、太陽系の惑星を現したかのような球体が十字にならぶと同時に、その球体を繋げるように光の線が走り――。


その光が破られた空間から光があふれる。


「っ!? くっ、“大地震アースクエイク”!」


その直前、正輝が地面に腕を突き立て、能力を使い地震を引き起こす。


正義の陣営が吹き飛ばされ、それを中心に地震が引き起こされ……。

狙いがわずかにブレ、“凶座相グランドクロス”の攻撃は空へと逸れて行った。


「なんだ?」

「まさか、北郷様の身に何かが?」

「今だ!」


その攻撃で戦場がざわめき、嫉妬の軍勢は未だと猛撃。

一気に戦況は変化を見せ始めていた。


「――? どういう事だ!?」

「あれが私の能力の全てだと誰が言った?」

「我相手に、手の内を隠していたと言うのか!?」


つまらない。


絶世の美男子の呼び名に相応しい美形に似合わぬ、鉄仮面の様な冷たい無表情。

その無表情に今、その一言だけが現れていた。


「それが貴様の限界であり、付け入る隙だ。さて――」


ゆっくりと白夜は歩み寄り、そっと手を差し伸べる。


「今ならまだ間に合う。我が軍門に下り、共に強者の時代を――」

「ふざけるな!!」


その手は無情にも打ち払われた。


「我が正義は、必要とされている……貴様らの悪行で親を奪われた子供たち、貴様らに家族を奪われた者達は、我が折れれば一体どうなると言う!?」

「弱者が死ぬ……ただそれだけの話だ」

「我が正義は不滅だ! ビッグ……」


ザンッ!


「! ぐああああああああああああああああっ!」

「たかが美徳の一角が、不滅などと口にする物じゃない」


空間を壊し、そこから引き出した大剣が、正輝の右腕を斬り飛ばす。

正義のブレイカーが着けられたその腕は宙を舞い……白夜に掴み取られた。


「……さあ、始めよう」


白夜はある物――白い結晶のペンダントの様な物を取り出し、首にかけ……。


そして、今に至る


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