第64話
希望との戦争が始まって一週間が経過。
未だ決着はつかず、ただ悪戯に互いの敵を屠り屠られの繰り返し。
しかしそれもまた、未だ続く乱世の一部でしかない。
「……余所の状況は?」
愛用する刀の手入れを行い、状況の説明を促す組織のボス。
憤怒の契約者、朝霧裕樹
「どこも最悪だ。正側のナワバリの街が1つ、血の海になったって」
血の跡の目立つ格好のまま、試作兵器ガンサイズの刃の血を拭き取り、ショットガン部分をバラし手入れを行いつつ、説明する細身の男。
残虐の契約者、久遠光一。
「昨日、負側の街が1つそうなったばかりなのに……」
金属の棒を抱くように持ちながら、憂鬱そうにそう呟く少女。
冷血の契約者、桐生ナツメ。
彼等は現在、ナワバリ防衛戦線に敷いた陣営で、現状把握を行っていた。
「血が血を呼び寄せるってところだな」
「……殺される前にってのは、至極当然だ。死ねと言われて死ねるわけがない」
世は日々人が死に続けていた。
契約者社会において、その庇護下にない街は最早存在せず、それ故に必ずやどこかで虐殺が起こり、街が潰れるという事態が続く事となっていた。
故に世の営みは完全に滞るどころか、誰一人として外を出歩く事すらままならなくなっていて、情報自体が出回る事もなくなっていた。
いつ終わるかわからない乱世に怯え、眠れない日々を過ごしつつ。
「食料は?」
「……もって後1ヶ月。ビオトープを始めとする各施設を急がせてでな」
「ナワバリの状況は?」
「思わしくない。いつ攻め入られるかで皆怯えきってる」
「宇佐美と怜奈たちは?」
「一応、マンションからユウの家に移って貰ったが……不満は募る一方だぞこれじゃ。さっき聞いたけど、難民キャンプじゃ自殺未遂が出たらしいし」
「わかってるよ」
情報は自分で手に入れるしかない。
故に現状、最新の情報を仕入れられているのは、大罪や美徳の組織のみ。
しかし情報を仕入れれば仕入れる程、虐殺し虐殺されの阿鼻叫喚なシロモノばかり故に明かす訳にはいかず、人は情報が入らず不安が募るの悪循環。
「他の大罪や美徳の動きは?」
「“知識”と“暴食”、“強欲”と“誠実”は順当。“怠惰”が“友情”とぶつかってて、“嫉妬”と“正義”は、防衛線を破られて“嫉妬”のナワバリで血の海が出来始めてるらしい」
「詠がそう簡単に負ける訳もない以上……例の新兵器か?」
「そうらしいな。“憎悪”と“狂気”はまだ健在らしいから、恐らく上級系譜クラスのシロモノだ。このままいけば、“嫉妬”は干上がっちまう」
契約者の戦争といえど、内容によって勝利条件も大きく変わる。
当然最強の勝敗が全てを決すると言う前提は変わらないが、それでもナワバリ等の防衛線では防衛線が破られれば敗北。
戦争である以上、条件な加わればただ1人が強ければいいと言う物でもない。
「……傲慢は、まだ動きはないのか?」
「ん? ああ、あそこは未だに動きなしだ。正側の侵略はあったらしいけど、防衛線に特に目立った被害もない」
「……流石、大罪最強の組織だけあるか。わかった、そろそろ仮眠とろう」
「はーい。ウチバイクの整備やってから寝るね」
「俺はシャワーでも浴びるか。流石に血塗れで寝る気になれねえ」
ナツメと光一が出て行くと、ユウは備え付けの寝台に横になる。
「……勝負は、大神が正義と接触するかどうか、か」
その翌日
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!」」」
戦場に高らかに声が響き渡る。
「うおらああああああっ!!」
「正面突破だ! 行くぞぉぉぉぉおおおおっ!!」
「燃えるぜ燃えるぜ燃えるぜ燃えるぜ燃えるぜええぇぇぇええええええ!!」
疲労の気配を微塵も感じさせない声を上げ、すぐさま熱血騎馬軍が突撃。
「一対一を心掛けて! この防衛線の行く末は、ウチらにかかってるんだから!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
負けじと排気音を響かせ、暴走騎兵隊突撃。
防衛線の行く末は、暴走騎兵VS熱血騎馬の勝敗にかかっている故に、どちらも負けじとバイク、あるいはメガホースを駆使し、戦闘を開始。
「ユウ、ナワバリから連絡だ。あれが完成したらしい」
「本当か!?」」
「ああっ。今クエイクと、その量産型達が数体がかりで運んでる」
「よし!」
「なら俺はちと出てくるな?」
「ああっ、後は任せろ」
光一が駆けだし、その先に1騎の騎馬が突進。
「久遠光一、覚悟おぉおおおっ!!」
「うるさい!」
突き出されたやりを身体を捻って交わし、そのまま回転する様に大鎌を振るい、騎手の首を狩りそれを蹴落とし、メガホースにまたがる。
「はいよーっ!」
『ヒヒィーンッ!』。
手綱をとり、光一はメガホースを駆り駆けだす。
その先は……
「っ! まさか、ワシらのナワバリに!? すぐに追え」
「させるか。“巨人の剛腕”」
王牙の指示を受けた騎馬達が、溶岩の腕で薙ぎ払われた。
「勝負と行こうぜ。ナワバリをどっちが占拠するか」
「言ってくれる! “獣王の構え”!」
斧を地面に突き立て、両手の銀の爪を模した小手を重ね、獣の口を身立てる様に構える。
爪の間から微かに、爆発のエネルギーが漏れ出す程、高密度でエネルギーが充満していき……。
「……すーっ……はーっ……」
それを見たユウは、だらりと両手をおろし、静かに目を閉じる。
イメージするは、活火山
暴れまわる溶岩を内包し、それを噴き出すその時を今か今かと耐え、ひたすらに待つ。
「「…………」」
ドサッ!
「“獣王拳”」
「“爆火斬”」
爆発のエネルギーを両手に集中させ、噛みつくかのように両手を広げ突進する王牙。
それを迎え討つかのように、ユウが一歩踏み出し圧縮したマグマをまとった腕で抜刀。
刀と小手がぶつかり……
「ぐおおおおおっ!!」
「うあああああっ!!」
爆発が生じ、2人は勢いに押され吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。
「でやああああああああああああああっ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
勢いが治まらぬうちに、2人はそれい逆らう様に駆けだす。
ユウは再度抜刀の構えをとり、王牙がつきたてた大斧を抜き……。
頂点はただひたすらに、ぶつかり合い続ける。




