表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
66/130

第60話

「ああそうかい、ご苦労さん」


ただそれだけ言って、光一はそっぽを向きその場を後に。

――しようとしたが、ひなたに腕を掴まれる。


「待って。確かに恨まれて当然なのは……」

「過去の事はどうでも良い。俺は契約者として新しく生きるって決めた時、過去は大神の名前と一緒に全部捨てた」

「……光一」

「大神光一は第三次世界大戦で死んだんだ。だから無駄な努力ご苦労さん、追い出しはしないが、事が落ちついたらさっさと帰ってくれ」


それだけ言って、その場を去ろうとする。

……が、掴まれた腕は未だ離されない。


「いい加減離して貰えませんか?」

「……だったらもう殺してくれない?」

「……?」

「もう疲れたのよ――お父さんを白夜に殺されてからと言う物、1人で必死に今まで生きてきたけど、ここ最近の動乱でもう限界なの。だからお願い」


その懇願に光一は……


「死にたいなら勝手に死んでくれ。死体の処理が面倒だから余所でな」

「……」


腕を振りほどき突き放して、その場を後にした。



それから3日後。


「……ZZZ」


避難も終わり、難民キャンプの物資も問題なし。

治安も特に問題はなく、落ちつきを見せ始めていると報告を受け、光一は久しぶりの自室のベッドで熟睡していた。



『これで、戦争もおしまいか』

『なあ光一、お前これからどうするんだ? 帰るんなら、連絡先を……』

『……帰らないよ。家族なんて、俺には居ない』

『え? でもお前、傲慢の……』

『名前は捨てる。これからの事なら、俺達を保護したいって人たちの所へ行く』



「んっ……ふぁあっ……」


時計を見ると昼ちょっと前。

しかし携帯には着信がない所を見ると、特に問題もないかとのそっと起き上る。


シャワーを浴びて服を着て、クエイクを呼び軽く食べて外へ。

そしてクエイクに乗り、一路ユウの家へと直行。


「よう」

「ああ、ご苦労さん」


自分と同様、あちこち駆け回っていたユウだが、光一ほど疲れは見せていなかった。

流石は武闘派系大罪、と内心感心しつつ、光一は事の報告。


「キャンプの事だが、母親がいたそうじゃないか?」

「……みられてたか」

「どうするんだ?」

「知ってるだろ? 契約者以前の過去はもう捨てた。今更あの頃の事を蒸し返す事に意味なんてあるかよ」

「……なら良いが、あれから飯食ってないらしいぞ?」

「どうでも良い。死にたいって言うなら、死なせりゃ良いさ」

「気にならないのか光一?」

「ならない」


きっぱりと言い放った。


「捨てたって言っただろ。そもそも気にしてたら、見つけた瞬間に殺してる」

「勘弁してくれ。今そんなことされたら、間違いなく世に多大な影響が出ちまう」

「だったらもう二度と口にするな。それより正義だが、負の契約者どころか住人も平然と皆殺しにする事に対して、誠実が同盟を破棄したらしいが、よっぽど新兵器に自身があるのか活動事態は活発になってる」

「となれば、このままいけばこっちに攻め入ってくるのも時間の問題、か……」

「動きは常に確認してある。ナワバリが被害に遭わない距離で迎え討てる様に、準備はしておくよ」

「頼む。それで、宇佐美はどうなんだ?」

「今怜奈さんがつきっきり。ただ、こればっかりは急がせる訳にはいかんだろ」

「……わかってるさ」


Pipipipipipi!


「はい……何!? わかった、すぐ行く」

「どうした?」

「難民キャンプにスパイがいたらしい。避難民人質にして仮設住宅にたてこもってるって話だから、ちといって来る」

「出来る限り事を荒立てるなよ? 今は何がどう作用するかわからん状況なんだから」

「出来る限りな」


所変わって……


「……ここかよ」


やってきたのは、ひなたがいる難民キャンプ。

光一は周囲を見回し、人だかりが出来ている仮設住宅へと歩を進める。


「あっ、久遠さん! すみません、態々」

「謝罪はいいからさっさと状況説明。相手と人質の人数と、相手の目的はわかってるか?」

「はい。敵と人質はそれぞれ1人で……こちらへ」


キャンプを担当する下級系譜が、人気のない所へ光一を誘導。

そして周囲を見回し、光一に1つのビニールに包まれた粉の様な物を差し出す。


「これ……まさか“バーサーカー”?」


差し出されたのは、契約者の技術で開発された物でも、最も危険と評される麻薬。

人の本能を刺激し理性を抑え、歯止めの壊れた極度の興奮状態に陥らせる物で、疲労と不安が渦巻く難民キャンプの避難民が服用すれば……


「……危なかったな。食料庫は大丈夫なのか?」

「はい。食料庫や飲み水は、調査しましたが大丈夫です」

「発見した奴には謝礼を渡すとして、人質の安否は?」

「それが、避難して来てからと言う物、何も食べていない方だそうで……」

「……まさか」


そして現場に戻り……


「おーい、顔見せろー! 俺は憤怒の系譜、残虐の契約者久遠光一だ!」


立てこもってる仮設住宅に声をかけると……


「こりゃ、随分と大物が出たな」


髭を生やした、武骨な印象を持つ男が出てきた。

……やつれてぐったりとしたひなたの腕を掴み、首にナイフをつきつけた状態で。


「……やっぱり」

「?」

「いや、こっちの話。それで、ここで混乱起こして何する気だった?」

「言うと思ったか?」

「そんな今にも死にそうな……いや、死んだか?」

「え!?」


上級系譜を前に、人質なしで無事でいられるわけがない。

その恐怖から、男はぐったりとしてるひなたに目を向け……


パチンっ!


「へっ?」


ボンッ!


「ごへっ!?」


威嚇用の小爆発が男の顔面の直前で起こり、のけぞった。

それと同時に銃声が響き、男の足が撃ち抜かれる。


「ぐあああっ!!」


足を抑えてのた打ち回るのを、周囲の契約者達が飛びかかり確保。

その場に倒れるひなたには、キャンプの責任者が駆け寄る。


「大丈夫ですか?」

「…………ええっ」

「んじゃ、後は任せる」


そう言って、光一はひなたの方を見向きもせず、その場から立ち去って行った。


「え? はっ、はぁっ……」

「…………こう……いち」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ