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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第54話

「さて……」


所は、宿舎の尋問室。

合成獣キメラ達は、ビオトープ設立の際配置する予定だった合成獣キメラ使い達に預け、光一は襲撃犯を尋問していた。


……後ろに宇佐美を控えさせて。


「何故ここを襲撃した? ここが誰の支配下か、わからないって事もないだろ?」

「……」

「……黙ってるのなら仕方ないな。その頭開いて、脳に直接」

「っ!? わっ、わかったよ……三村先生の遺産だ」


三村とは、地主の名前である。

ここで先生とつけ、遺産と言う事は間違いなく……。


「三村先生って、地主の方? それとも医者の方?」

「医者だよ。父さんの知り合いで、俺も何度か世話になったから」

「じゃああの日記に書いてあった契約者ってのは、お前か? 合成獣キメラを造って渡したって」

「日記? へえっ、そんなのあったんだ。ああっ、ほかならぬ三村先生の頼みだったし、葵ちゃんとは何度か会ったからね。以前いたチームに手伝って貰ってプレゼントしたんだ」

「? なんだと?」

「だから、俺がプレゼントしたんだ。それ以来会ってないけど、最近になって三村先生が合成獣キメラ人間の開発を手掛けてたって話を聞いて来たんだ。流石に廃墟になってるのは驚いたけど」


日記の事を知らない?


では、あの合成獣キメラ達は?

色々と辻褄が合わなくなり、光一は一旦制止する。


「じゃあ、お前じゃないのか?」

「え? 何が?」

「一週間前、洋館にある筈のない日記が机の上にぽつんとあったり、俺達が来るのを見越してた様に合成獣の群れが現れたり」

「は? ……よくわかんないけど、アンタが言ってるのは、俺が妙なロボットに攻撃命令を出したときの事? 俺、あの洋館に一歩も入ってないよ?」


では、あの日記は?

合成獣の襲撃は偶然……にしては、あまりにも出来過ぎている。


「……じゃああの蛇はなんだよ?」

「あいつがどうかした?」

「ここ最近、この周辺で人が行方不明になってんだよ。つい最近になって、あの蛇に襲われたからってわかったんだ」

「え……? いや、俺じゃないよ! 俺がここに来たの、先週だぜ? それもまっすぐに洋館目指したんだ。あの蛇は、先生の研究の事を教えてくれた奴に貰ったんだ」

「……まさか――一体どんな奴だった?」

「えーっとおごっ!?」

「! どうした!?」


ビクンと身体を震わせ、合成獣キメラ使いは硬直。

その次の瞬間、眼、鼻、口、耳と、頭部のあらゆる個所から血を噴き出し……。


ドシャアっ!


「! ……くそっ、ナノマシンを注入されてたか!」


崩れ落ち、床に倒れ伏した。


「! 大丈夫か、宇佐美?」

「…………」

「……黒幕は別にいるってことか?」


初めて人の死を目の当たりにし、顔を青ざめさせへたりこむ宇佐美。

それに駆け寄りつつ、物言わぬ死体と化した合成獣使いを見て、光一は思考を張り巡らせていた。



その次の日。


「それじゃ、補充の手配は終わってるから、引き続き調査を頼む。ただ、事が事だから系譜も補充する事になるから、面白くはないだろうが」

「はい。ボスや久遠さんの手を煩わせはしません」

「ならいい。さて……」

「……どうか、よろしくお願いします」

「はい。俺が責任もって」


結局、事の真相はわからずじまい。

しかし合成獣キメラ人間を知っている者の存在がわかった以上、一刻も早い安全の確保が急務。


そう考えた光一は、合成獣少女三村葵の保護を急ぐ事に。

地主の懇願もあり、光一の秘書として直接の管理下に。


「それじゃ、行くよ」

「……うん」


一応、オリジナルの記憶も微かながらある事は、一週間の間でわかった事。

それ故に山奥とはいえ、元々暮らしていた場所を離れる事に、少女は抵抗感を感じていた。


「……葵ちゃん、元気でね。帰る場所は、叔父さんが守ってあげるからね」

「……うん」


結局、あの山でのビオトープ開発計画は中止。

その代わりとして、第2候補として考えていた山を提供するとの事で、急きょ計画は練り直しとなった。


洋館はこれから清掃し、葵の帰る場所としていつでも準備するとの事。


「じゃあ、長期の休暇が取れたら、連絡します」

「はい。その時は、精いっぱいのおもてなしをいたします」

「楽しみにしておきます」


光一と、それに促された葵は、クエイクの背に捕まる。

そして宙に浮きあがり、そのまま空へと飛び去って行った。



そのさらに次の日。


「よっ」


所は、テレビ局。

番組の収録を終えた宇佐美達に、葵を伴いアタッシュケースを持った光一が声をかける


「あっ、光一。どうしたの?」

「報酬を渡しに来た」

「報酬って……?」

「事情はどうあれ、憤怒の手掛けるべき仕事で手を借りた以上、報酬を支払う義務があるんだよ。傘下でも特別手当の申請位やるしね」

「……そう言うつもりでやったんじゃないんだけど」

「事情はどうあれって言ったろ?」

「じゃあ遠慮なく……ってちょっと待って」

「ん?」


光一がアタッシュケースをそのまま手渡そうとするのを、宇佐美は止める。


「報酬ってそれ?」

「うん、コレ」


と言って光一はアタッシュケースを開き、中にぎっしり詰められた札束を見せる。

その光景に、宇佐美はもちろん一緒に話を聞いてた歩美たちや、周囲のテレビスタッフすら唖然としていた。


「ドラマじゃあるまいし、こんな大金がぽんと出る物なの!?」

「上級系譜が手掛ける仕事となればね。といっても、俺の報酬の半分だけど」

「半分!? ……流石に恐縮しちゃうんだけど」

「別に今すぐ使う必要もないだろ? 使いきれないなら貯金しても良いんだし、銀行なら提携先でよかったら紹介するから」

「……そうね。じゃあ折角の臨時収入もある事だし、皆でご飯食べにいこっか。と言っても、こんな大金でぱーっとなんて出来る所知らないけど」

「なら案内しよっか? 提携先の高級ホテルのレストランから、ユウの仕事つながりの高級料亭まで、要望ならいくらでもこたえられるけど?」

「「「「…………」」」」

「? どうかした?」

「ねえ光一、勇気の系譜になる気ない? 是非あたしの補佐やって欲しいんだけど」

「ありがたい話だけど、ごめん」


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