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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第4話 改訂済

身長は2mを越した大男で、まるで岩を荒削りしたかのような身体。

しかし、もう夕方だと言うのに起きぬけの様な様相で、ぼさぼさの頭にニキビ等が目立つ顔で、見る人が皆“ものぐさ”と言う言葉を思い浮かべるだろう。


――その手に持つ鎖が、その男を一回り大きくした位の鉄球に繋がっていなければ。


「改めて、久しぶりだな。荒川公人……いや、“怠惰”と呼んだ方が良いか?」


そんな中で、ユウがおんぶしてた裕香を降ろし、周囲を制してその男の前に。


「うっ……」


……立つと同時に顔をしかめた。


「相変わらずくせえし汚えな、また面倒だからって着替えも風呂も怠けてんな?」

「……めんどくせえ」


いきなりの罵倒だと言うのに、公人と呼ばれた大男は堂々とあくびをしながら、ボリボリとフケをまきちらすように、頭を掻き始める。

ユウが更に顔をしかめるが、お構いなし……と言うか、構う事自体がめんどくさそうな様子。


「いっそ大型の洗濯機にでも入れよ」

「……めんどくせえ。それ、いいかも」

「待て。本気で考えるな!」

「……めんどくせえ。考えるの、めんどく……あれ? 何めんどくさがってたんだ? …………思い出すのも、めんどくせえ」


「……あの、久遠君って呼ばせて貰って良い?」

「呼びたかったら光一でも良い。俺も宇佐美って呼ばせて貰うから」

「わかったわ光一。それで、何なのあの人?」

「ユウと同じ、負の契約者の頂点“大罪シリーズ”の1人“怠惰”の契約者」

「「「「……」」」」


契約内容自体は、あっさり納得が出来た。

……が、下位ですら驚異的な“契約者”の頂点に君臨する、正と負合わせて14人しかいない内の1人である事だけは、容易に受け入れられず


「なんだかー、あのユウさんってひととはぜんぜんちがいますねー」

「そうだね。なんだかあのユウって人の憤怒はそれっぽいし、納得できる位強いけど」

「あの人は確かに体格的にすごそうですが、あまり強そうに見えま……」


ドゴォォオオオン!!


いきなりの轟音に、会話は強制中断となる。

ふと見ると、その先では公人の鉄球が先ほどまでユウが立っていた場所にめり込んでいた。


――まるで、隕石の落下地点の様に陥没させながら。


「「「「…………え?」」」」

「3人とも、そういうのは契約者に通用しないどころか、致命傷だ。ブレイカーは特定の感情を経由して、人を超えた能力を与える演算装置だから」

「……あっ、そう言う事? その感情が強ければ強いほど、ブレイカーはより強い力を発揮する、と?」

「それだけじゃないんだけど、概ね正解ですよ島津さやかさん。それに大罪、美徳は何かしらで契約者最強の能力を持ってるから、そんな見方は致命傷だよ。あれだって全然本気じゃないし」

「……とんでもない領域ね」


ぞくりと背を震わせる宇佐美を余所に、ユウと公人と呼ばれた男の対峙は続く


「……めんどくせえ。よけるな、早く済ませて……喋るのも、めんどくせえ」

「やる気かよ? だったらめんどくさくなくブチ殺してやろうか?」

「……めんどくせえ。同じ大罪と戦うの、超めんどくせえ」


じゃらじゃらと鎖がぶつかる音のすぐ後、ブンと鉄球が振り回され、玩具を扱う様に鉄球を自分の手で捕る。

かなりの勢いがあったと言うのに、軽々と……。


ガキンッ!!


その鉄球で、ユウの抜刀による一閃を防いだ。


「……癪に障ってんじゃねえぞクソが!」

「めんどくせえ……超めんどくせえ事になった」

「くっせえ息かけんじゃねえ!」


ブンっと音が鳴る程の勢いで、鉄球を持っていない左手で薙ぎ払うのを、後ろ飛びで回避。

刀を納め、間合いを取りユウが相手の様子を伺い始める。


「大罪同士がぶつかり合うっつーのも、久しぶりだな」

「…………超めんどくせえ」

「じゃあさっさと決めてやるよ。丁度テメエにいらついてんでな!」



その様子を見ていた光一が、周囲を見回すと……


「……俺だ。確保には成功して、今“怠惰”と交戦中」


携帯を取り出し、どこかしらに連絡。

通話を切ると……。


「さて……」


光一が自動拳銃を取り出し……


「ひっ!」


抜き打ちで一発、歩美に向けて撃ちだした


「ちょっ!? いきなり何を!」


いきなりの事で戸惑い、さやかたちが歩美をかばい光一から距離をとる。

しかし光一は、そちらに目を向けず……


「けっ、気付いてやがったカ」

「え?」


先ほどまで歩美がいた場所の少し後ろに立っている、1人の男に目を向けていた。。

血走った目にドレッドロックス、アロハシャツに短パンにサンダルと言う様相で、その手にはアーミーナイフが握られている。


「当たり前だ。怠惰の系譜“狡猾”の契約者、毒島彰」

「相変わらズ、頭が切れるナ」

「お前に言われても嬉しくねえよ……っと」


光一めがけて、ナイフが振るわれる。

光一は回避するも……


「んっ……」

「いっ!」


その隙を狙い毒島がぷくっと頬を膨らませ、光一めがけて緑色の液を吐きだした。


「相変わらず汚え攻撃だな! 蛇のキメラ人間が!」

「違ウ! 体内で毒を生成する能力だっつってんだロ!!」

「どうでも良いが口から出すな!」

「ええいうるさイ!」


ナイフを咥え、両手を先ほど吐きだした緑の液溜まりにかざす。

それが盛り上がり、大きさこそ大小異なれど人の形を形成し始めた。


毒傀儡ポイズンマリオネット毒人形ポイズンパペット……お前もちっとは頭ひねれよ」

「うるせえ!」


契約者の能力は、1つとは限らない。

演算処理を分割することで、契約者は1人が複数の能力を持つことが可能であり、それを組み合わせての独自の能力を持つ者も多く存在する。


ただし、複数の能力を持つと当然演算プロセスが増え、処理に手間がかかり1つ1つの精度が落ちると言う欠点がある


「でも別に本体叩けば良いだけだから、どうでも良いがな!」


光一が2丁の自動拳銃で、毒島に攻撃。


「甘イ!」


ぷくっと先ほどと同じように頬を膨らませ、今度は赤い液を吐きだす。

手で受け止めゼリーの様に固まると、それで銃弾を受け止め――その銃弾を腐食させていく。


「学習しねーワケねーだロ」

「だったら出す場所考慮できねえのかよ?」


光一が2丁の自動拳銃を納め、一丁のリボルバーを取り出した。

狙いは、毒傀儡ポイズンマリオネット毒人形ポイズンパペット


「こんな風にとか」


リボルバーを持つ手から、パリパリと音が鳴る。

それがリボルバーをもつつみ、引き金が引かれ……。


音もなくオレンジ色の光が空に向かって描かれ、衝撃波とともに毒の人形達を薙ぎ払った。


「特注品のリボルバーに、俺の能力を組み合わせて放つ“超電磁砲レールガン”みたいにさ」

「……能力の使い方でハ、系譜の契約者1と言われるだけあるナ」

「そりゃどうも。んじゃ……」


リボルバーに弾を込め、それを構えたままで左手をすっと上げる。

それ徐々に黒くなっていき、肘まで黒に包まれると掌をグーパーし始める。


「……超電磁砲レールガンで薙ぎ払われるのと、このダイヤモンドの硬度を持った炭素でコーティングされた左手でその顔殴られるの、どっちがいいかな?」

「発電能力をメインにシ、サブの元素操作を使って戦略攻撃を得意とする死神サマらしいナ……踏み倒ス!」

「え? 両方? いいぜ、やってやろうじゃねえか!」


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