第53話
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「ぎぃぃいぃっ!!」
「ごぉぉおあおああああっ!!」
笛の音が響きわたり、合成獣達が一斉に狂った様に咆哮。
「……どこから響いてる?」
光一は周囲を見回す。
まず、機動力のあるサルとゴリラが前に。
そして中衛には、虎縞のクマが岩や木を武器に構え、後ろにはカメレオン蛇が。
既にシンクロを起動させた光一と宇佐美は、シンクロによる機械的なテレパシーで会話。
『ちょっと、どうなってるの? コレ、完全に陣形じゃない?』
『笛の音が聞こえるだろ? 合成獣使いが居るんだよ』
合成獣使い。
その名の通り、合成獣を扱う為に必要な能力。
当然レベルは存在するが、限界が合成獣開発の水準に比例する為、最高水準を誇る暴食でも良くて下級系譜しか存在しない。
そんな一見地味に見える能力だが、基本的に合成獣は取り扱いが難しい物が多い為、戦闘用ともなると手に負えない事が多い。
元々愛玩用の動物をベースにした場合、一般人でも飼い方に注意すれば普通の動物とさして変わらず、食用の場合はそんな気にするほどでもない。
しかし戦闘用ともなると、凶暴性も武器になる故に省く訳にもいかず、上記のように普通では手に負えない。
更に言えば、合成獣を手懐けるか操るかで、能力の扱いも変わってくる。
手懐ける場合は精神感応等、意思疎通を主眼に置いての運用。
時間がかかる為に数を操る事は出来ないが、その分戦闘における指示を必要とせず、自立的に合成獣が補佐したり自律行動をとったりと言うメリットがある。
操る場合は催眠能力等、運用に主眼を置く。
時間も手間もかからず、数を操れると言うメリットはあるが、合成獣に楽器など道具を介して一々指示を送らねばならず、指令する手段を失えば致命的と言うリスクがある。
『……笛の音色、物量。明らかに後者よね?』
『相手が1人だったらな?』
『……あっ、そっか。複数なら前者も交じってるかも知れないし、笛の音色だってニセモノって可能性もあるね』
『推測は大事だけど、それを前提に据えちゃダメ。契約者の戦いはルールの違う者同士なんだから、先入観を植え付けてって手段は基本だ』
『了解』
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「「「キーっ! キーっ!」」」
急に笛の音の音程が変わり、サルたちが一斉に飛びかかる。
宇佐美が構え、一歩踏み出すと……
「邪魔だ」
パチンっ! ボンッ!
パチンっ! ボンッ!
パチンっ! ボンッ!
「「「キーっ!!?」
遮る様に光一が前に立ち、指をはじくとサルたちの前で小規模な爆発
いきなりの事にサルたちは驚き、たたみかける様に何度も起こる爆発で総崩れに。
『まだまだこんなもんか』
『……元素操作で酸素濃度を上げて、電気で着火、爆発させたのね?』
『正解。と言ってもまだまだ研究中で、威嚇程度しか出来ないがな……距離が離れてると、やっぱ精度も落ちるか』
そう言って光一は右手に電気を纏わせ、爆発で一か所にまとめられたサルたち向けて突き出し……。
「「「ギキーっ!!」」」
放電し、一掃。
『数に個で相対してたら日が暮れる。事は手早く最低限で、だ』
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「ごぉぉオオッ!!」
次はゴリラが、光一めがけて飛びかかる。
「任せて!」
それを宇佐美が迎撃。
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「シャアアアアッ!」
すると同時に急に笛の音の音程が変わり、宇佐美のすぐ横に突如カメレオン蛇が現れ、宇佐美に噛みつこうとする
ドンっ! ガっ!
「ぐうっ!!」
「ぎぃぃいぃいいいっ!!」
「……っ!」
宇佐美の眼に飛び込んできた物。
それは光一の左腕が大蛇に噛まれ、その大蛇の眉間に光一の炭素硬化した腕が突き刺さっている光景
「ぐっ……ぐへっ!」
光一が大蛇の牙から腕を抜くと、血を吐き膝をつく
更に頭を押さえ、だらだらと汗が溢れる様に出始めていた。
「こっ、光一!?」
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それを好機とみたのか、笛の音色が音程を変える。
周囲のクマやゴリラが、持って来たらしい岩石や大木を光一向けてブン投げ始めた。
「くっ!」
それを迎撃する宇佐美だが、物量に対応は流石にできず……。
「きゃあっ!」
体勢を崩した所を岩石が投げつけられ、かわしきれず吹っ飛ばされ、宿舎の壁にたたきつけられた。
そのまま宇佐美は、うめき声をあげて気絶。
光一がいた個所は大木と岩石が山を作っており、完全に埋もれてしまっていた。
――所変わって。
「……死んだ、のか?」
宿舎の2階位ある倉庫の、天井に積まれた資材。
そこに潜み、大木と岩石の山向けて目を凝らす、笛を持った1人の男が。
「……はっ……ははっ……はははははっ……やった。まさか上級系譜を、しかもあの凶王久遠を討ち取っただなんて。あいつの首さえあれば、どこだろうと優遇は確実。贅の限りがつくせるんだ!」
予想だにしなかった結果に、欲望が駄々漏れになるほど喜んでいた。
実際頂点に最も近い上級系譜を討ち取ったともなれば、契約者社会では大きな財産である。
バヂバヂっ!
「っ!」
そんな中ガレキの山から、ハッキリと電気が流れた。
男は急いで笛を構え、合成獣達に取り囲む様に指示を出す。
「…………」
男はじっとがれきを見つめる。
そのまま5分が経過。
「……こうしちゃいられねえ。早くあいつの首とって三村先生の遺産、合成獣人間を確保して構造を解析しないと。それに勇気のブレイカーも手に入るし、宇佐美ちゃんも……」
そこでがれきの山から眼を離し……
「あれ?」
宇佐美がいる筈の地点に目を向けると……。
「!? どこいった!?」
「ここよ」
「え?」
バシッ! バキッ!
「がふっ!」
男が振り向いた先には、スニーカー。
――正確には宇佐美の蹴りが笛を持つ手を蹴りあげ、その勢いを利用して回し蹴りを男の顔面にたたき込む瞬間。
男は吹き飛ばされ、屋上の枠を飛び越え……
ドボーンッ!
池に落ちた。
パシッと笛を受け止め、宇佐美は池にブチ込まれ気絶し、プカーッと浮かぶ男を見届け……。
『倒したわよ?』
『ああっ……道具は?』
『笛なら確保してる。それより大丈夫なの?』
『毒以外は何とか。毒は今分解してる所……流石に頭痛い』
『……もうっ、咄嗟の策とはいえ、無茶しないでよ!』
『……悪かったよ』




