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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第52話

調査を開始して一週間が経過。


「がつがつがつがつ」

「おいしい?」

「わんっ!」


秀頼にご飯をあげてる宇佐美の横で……。


「……どうなってんだか?」


光一は頭を抱えていた。


クローン少女を保護してからと言う物、収穫は全くのゼロ。

山狩りをしても、合成獣キメラの姿は影も形もなしで、もちろんその研究施設が隠されている形跡も、発見できず。


更に言えば、地主の兄が勤めていた病院においても、接触していた契約者はどうやら個人的なつながりだったらしく、手がかりはなし。

当時の生活を洗い出し、それらしい者を調査しても全てシロ。


クローン少女が狙いか?

とも考えたが襲撃の気配などなく、地主にも妙な気配はなしで調査でも妙な物は出てこずで、契約者との繋がりも自分たち“憤怒”以外はない為、現状はシロ。


「……ただ単純に、ビオトープ建設の妨害が目的なのか?」


ビオトープを始めとする契約者の事業には、莫大な金が動く。

建設費然り、研究費然り、設備然り。

もちろん事業が実現すれば、契約者社会ではほぼ間違いなく莫大な利益が転がり込む。


ただ、当然資金も無限と言う訳ではなく、事業が増えれば増えるほど割り当てられる資金も減り、規模も小さくなる。

故に他の事業の設立を妨害し、その分を自分の関与する事業に割り当てる様に工作する資産家も、決して少なくはない。


無論そう言った獅子身中の虫は、発覚され次第契約者の組織において、ブラックリスト入りとなる。


「……それにしては、おかしな点があり過ぎるしなあ」


あの館におかれていた、見落とす事も見逃される事もあり得ない日記。

そして野生とは思えない、統率された動きをする合成獣の襲撃。


自分がいる所為か?

とも光一は考えるが、上級系譜が相手とはいえ、すんなりと諦め過ぎている気がする。


コンコンッ!


「どうぞー」

「失礼します!」


入ってきたのは、憤怒の医療班の人員。

保護したクローン少女の診察を任せていた、メンバーの1人。


「で、診察の結果は?」

「……結論から言えば、あの子の身体は人間じゃありません」


周囲を見回し、盗み聞きしている者がないかどうかを確認しつつ、そう告げる。


「……それってどういう事だ?」

「……細胞組織が、合成獣キメラと同じなんです。ですからあの子は単純なクローンではなく、合成獣キメラ人間という事になります。それも生身でレベル4に匹敵するほどの」

「二度と失わないよう、強い身体に……か。わかってると思うが」

「はい。他言無用で、ですね」

「すまんな、後で特別手当を申請しとく」


医療班が出て行くと、光一はハァッとため息をつく。


「……責める訳じゃないけど、とんでもない事してくれたな。ちょっと地主に会ってくる」

「あっ、うん」



所変わって、宿舎の応接室。


「引き取りは許可できない……? どういう事ですか!?」

「それが、葵さんはただのクローンではない事が発覚しまして。申し訳ありませんが、彼女はこちらで保護し、厳重な管理下に置かせていただきます」

「どうにかなりませんか? 如何にクローンとはいえ、漸く見つけた兄の形見であり、姪なのです。そうだ、金を。ワシ個人の蓄えすべてを……」


光一は首を振り、それを遮った。


「申し訳ありませんが、金で済む問題ではないんです。事が露見すれば、彼女は間違いなくあちこちの組織から狙われる程の価値があります。ですから、簡単に手だしが出来ない“憤怒”で保護しなければ、非人道的な研究に使われる可能性も」

「そんな……ならばせめて、面会の許可だけでも!」

「……そちらも申し訳ありませんが、現状では確約が出来ません」


タッタッタッタッタッ! バンっ!


「大変です!」

「どうした?」

合成獣キメラの群れに、この宿舎が包囲されました。現在クエイクと下級契約者が迎撃に当たってます」

「何だと!? そんなになるまで、どうして誰も気付けなかった!?」

「それが、監視機器があのカメレオン蛇に破壊されたらしく……」

「ちっ……全員下がらせ、クローン少女と地主の護衛にあたれ。合成獣キメラは俺と宇佐美で排除する」

「了解です。こちらへ」


報告に来た男が、地主を支え外に。


「……これが終わり次第、出来る限りの配慮は致します。ですからどうか、今だけでも」

「……お願いします。お願いします」



所変わって、宿舎の外。


「ギーっ!! ギーっ!!」

「ゴアァァァアアアッ!!」

「シャアアアアアアッ!!」


4本腕のサルにゴリラ、虎縞の模様のクマ、カメレオン皮のヘビ。

その群れが咆哮し、駐留契約者の宿舎を取り囲むなか……


『Interception start!』


クエイクはただ一機、奮闘していた。

元々圧倒していた、と言う事もあり事は優位に……


~~♪ ~~♪


「ゴアアァァァアアアアッ!!」

「シャアアアアアアアアッ!!」


進まなかった。


『!?』


笛の音がどこからか響くと、合成獣達が狂ったように咆哮を上げ、凶暴化。

カメレオン蛇が岩を咥え、クエイクの顔面に突進。

それに続く様に虎縞のクマがタックルし、4本腕のゴリラ達が四肢にとりつく。


クエイクが力任せに振りほどこうとすると……


~♪ ~~~~♪


急に響く笛の音の音程が変わり、合成獣キメラ達が一斉に離れる。


~~♪ ~~♪


また笛の音色が元の音程に戻ると、再度合成獣キメラ達が咆哮を上げ飛びかかる。


ドンっ! ドンっ! ドガっ!


「ぎぃっ!?」


「なんなの、この笛の音色?」

「……やっぱ契約者、それも合成獣キメラ使いが絡んでやがったか」



「……気まぐれなんだよね。ヤッパリ諦めらんね」


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