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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第51話

「くんくん」


合成獣キメラの死骸を片付け、外の探索開始。

元々行方不明事件だった為、同伴させた秀頼に日記のにおいをかがせて現在追尾中。


「もう少し、大きな子連れてこれなかったの?」

「ソルジャードッグも、数がそういる訳じゃないんだ。心配しなくても直接戦闘じゃあるまいし、人探しなら十分戦力になる」

「そう……ホント光一、場馴れしてるわね。あたしとそんな年変わらないのに」

「そりゃあね。7年前の第三次世界大戦のころからだから」


第三次世界大戦

核兵器が飛び交い多くの死者を出し、それでもなお止まることのなく続く世界の戦争。

それに終止符を打った、14人の少年少女。


後の世で大罪、美徳と呼ばれる者たちであり、世の復興への多大な貢献による急激な変化を成し、契約者社会の始まりとなった子供たち。


「その子供たちも、戦時中のどさくさに誘拐した子供を実験に使っての成功例なんだけどね。思えばそれがユウや宇宙さんとの出会いで、月に惚れられたんだっけな。懐かしい」

「避難する際に兄さんだけが逸れて、漸く会った時には世界の戦いを止めた英雄の1人……どこの漫画? って思ったのは覚えてるけど」

「まあその戦争でブレイカーを開発した組織は壊滅し、終戦後自由の身になった俺達は契約者社会構築に勤しんでたんだ。元々孤児が多かったからね」

「光一は孤児だったの?」

「いや。ただ元々が親に見放されて育った身だから、これを機に1人で生きて行こうって決めたんだ」


色々とあったけどね、と光一は呟く。


「……ユウや月、怜奈さんが年の割にしっかりしてるのって、そう言う部分がやっぱり大きいのかな?」

「今更怖気づいた?」

「今更怖気づいても、何か変わる訳じゃないでしょ」


「わんっ!」


秀頼の鳴き声で、話は中断。

光一たちが見た先には、濁った水で満たされた噴水があった。


「ここからか?」

「わんっ!」

「よしよし、よくやった。さて……」


光一は地面、あるいは噴水の表面をツタをはぎ取りつつ、調べ始める。

噴水の表面にスイッチはなく、地面には……


「よし、こっちから押してくれクエイク」

『Yes! My master!』


クエイクに命じ、ずらした個所がある方の反対から……


ズズズズズズズッ!


噴水を押すと、そこには鉄製の扉が。


「……クエイク、見張り頼む!」

『Yes! My master!』

「うーん……お前らも残れ」

「「「了解です」」」


クエイクと部下3人に指示を出し、光一と宇佐美、地主は……


「……一体、何があるのかしら?」

「この中に、兄が?」

「さあ……? 行けば分かるだろ」


扉を開き、地下へ。


「……え?」


光一たちの眼前には、培養液で満たされたビーカー。

その中には……


「……人?」」


全て人が、しかも15、6位の女性が一糸まとわぬ姿で入っていた。

それも全員が同じ顔の。


「っ! あっ……あっ……」

「? どうかされましたか?」

「葵……ちゃん」

「葵……? まさか、これ全部?」

「はい……間違い、ありません」


そんな中で、光一は動じることなくモニターを

そして周囲を見回す。


「……これ全部失敗作だな。生命反応が出てない」

「予想は、出来てたの?」

「ああっ……あの日記の“いやだ”の羅列が、ほんの数ページで終わりってところで途絶えたんだ。だから葵さんを創ろうって考えて、実行に移したんじゃないかってのは予想出来てた」

「じゃあ、兄もここに……」

「いや、居ない……正確には、この世にな」


光一が指を刺した先に……


「っ!」

「……これって」


1つのビーカーに縋りつく様に横たわる、ブレイカーをつけた白骨死体。

状況から判断して……


「そんな……」

「精神状態がまともじゃなかったんだ。恐らく飲まず食わずで研究を続けて、結果絶命したんだろうな……だが」


光一がそのビーカーに歩み寄り、その近くの端末を操作。

その直後、ビーカーの中の培養液が抜かれて行き、ビーカーが開かれ……


「……?」


ゆっくりと、ビーカーの中の女性が目を覚ました。

光一は先ほどの屋敷から持ってきた毛布を取り出し、女性に巻いてやる


「なんでそんなの持ってきたの?」

「こんな事もあるかなーって思って」

「……葵ちゃん、かな?」

「……?」


地主が恐る恐る、少女に問いかける。

しかし一体何のことかわからないのか、首を傾げる一方。


「この子は恐らくクローンです。だから……」

「……葵ちゃんであって、そうではないと?」

「ええ。残念ですが……」

「……そうですか」



そして外へ出て、再び調査を行うも……。


「結局、この噴水の研究施設以外は、ありませんでしたね」

「だな……可能性があるとしたら、地主さんの兄と接触したって言う契約者だけど。ちと調べてみるか」


そう言って、光一は地主とその近くで毛布にくるまれてる少女を見て……


「今日の所は一旦退き上げよう。保護対象が増えた以上、安全確保の為にもな」

「賛成。もう日が暮れるころだし、危ないからね」

「そう言う事。クエイク」

『Yes! My master!』

「……思った以上に、時間がかかりそうな案件になっちまったな」



「……まさか上級系譜が出張っての捜査とは。仕方ない、あの子は諦めよう」


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