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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第50話

「くんくん」

「わかるか、秀頼?」

「くしゅんっ! ……きゅ~ん」

「こう埃っぽいと、無理もないか。仕方ない」


前衛に光一、しんがりに下級系譜を据えて、一同は洋館を調査。

しかし……


「……ありませんね」


結局、日記以外は地主の言う通りで、最新鋭設備のさの字も出ないありさま。

それどころか合成獣キメラの影も形もなく、住処としている形跡もなく。


隠し部屋も疑ったが、何かを動かした痕跡もなし。


「これで、全部ですか?」

「はい」

「うーん……そうだ。素人考えだけど、お決まりの地下室とかはないんですか? ワインとか、そう言うのを貯蔵するための」

「いえ、そのような話はありません。お恥ずかしい話ですが、ワシの血筋は下戸でして」

「そうですか……」

「いや、良い着眼点だ宇佐美。ないなら造ればいい。契約者と繋がりがあったんなら、穴掘りの能力を持つ奴位いてもおかしくない……が、ちっとばっかし気付くの遅かったか」

「え?」


『ガァアアッ!!』

『Interception start!』


そっと外を見ると、虎の様な縞模様のクマがクエイクに襲いかかっている光景。

その周囲を見ると、どう見ても獰猛な肉食獣としか思えない合成獣キメラ達が、屋敷を取り囲もうとしていた


「え……? え……?」

「もしかして、囲まれてる?」


それを見た地主が腰を抜かし、宇佐美もかすかに震え始める。


「……罠だったか」

「そんな……おい!」

「ひっ!」

「待て」


掴みかかろうとした契約者を、光一が制止する。


「状況がおかし過ぎる。一般人が策とは言え、合成獣キメラに囲まれて平然と出来る訳がないだろ」

「しっ、しかし……」

「どの道今は保留だ。今はとにかく、あいつら蹴散らして外を調べないと」

「外って……久遠さん、まさか」

「なあに、すぐ終わる」



バキィッ!


『ギャアっ!』


クエイクのパンチが顔面に突き刺さり、牙が抜け血へどを吐きながらクマが倒れ伏す。

運搬用に開発されたロボットだけに、その分馬力はけた外れでヘタな重機よりもパワーがある。


『『『ぎぃいぃぃぃっ!!』』』

『!?』


クマが倒された瞬間、一斉に4本腕のサルの集団がクエイクめがけて襲いかかり、四肢や胴体、顔にしがみつき始める。


『ゴァアアアアッ!!』


ゴギイッ!


『!』


クエイクの視界が遮られ、その次の瞬間4本の腕のゴリラがクエイクの胴体に岩で殴り、一歩退かせる。

サルを振り払おうとしたが、ゴリラが2本の腕で羽交い絞めにし、更にもう2本の腕でクエイクの腕を掴み、脇にかかえこむ形で抑える。


『ヴヴヴヴァアアアアっ!!』


先ほどのクマがよろよろと起き上がり、近くにあった木を引っこ抜き……


ガシャアアッ!!


クエイクの頭上に振り下ろした。


『……5% of injury rates』

『ゴァアアアアッ!』

『Counterattack start!』


クエイクが両方の腕を力任せに振りほどき、振り向いてゴリラの顔面を掴む。

そして腹を殴る様に突きあげ、ゴリラを持ちあげ……


『『っ!!?』』


クマに向けて投げ飛ばした。

その次にまとわりつくサルは、力任せに振りほどき、あるいは引き剥がす。


『ゴァアアアアッ!』

『ヴヴヴヴヴヴッ!』


それが終えた時、クマとゴリラが一斉に突進。

クエイクが腰を落とし、それを受け止める。


ギィッ!


『『『ギッ!』』』


「宇佐美、お前は下がってろよ」

「いや。大体光一だって、こうなる事位予測してあの機能教えたんでしょ?」

「違う。命綱のつもりで教えたんだ……が、まあ良いか。合成獣キメラ相手なら良い練習になるのは確か。言っとくけど、情けはかけるなよ? 喰うか食われるか、で考えて相手しないと、死ぬぞ」

「……自信ないけど、大丈夫だと思う」

「無理だと判断したら下がらせるからな?」


そこで館の扉が開き、2人が姿を現す。


黒いジャケットにスラックス、そして両手には自動拳銃を持った光一。

そして短パンにレギンス、そしてTシャツの上にベストを羽織り、手にはオープンフィンガーグローブをつけた、宇佐美。


『『『ぐるるるる』』』


周囲が獲物発見と言わんばかりに、唸り声を上げ始めた。


「で、覚悟は?」

「大丈夫……今度こそ、妙な事にならないと思う」

「思うかよ……まあいい、行くぞ。せーの」

「「シンクロ!」」


光一と宇佐美がキーワードを紡ぐ。

その次の瞬間、光の糸が伸びて2つのブレイカーをつなぎ、消えた。


「ききーっ!!」


光一達を獲物と見定め、サルの群れが一斉に襲い掛かる。

まずは……


「やあっ!」


宇佐美が一体目に蹴りをブチ込み、ふっとばす。

その後ろに控えていたサルが、飛びかかろうと……


ドンっ!


「ぎぃっ!」


した所を、光一の銃弾が命中。

それに続く様に宇佐美が駆けだし……


「やあっ!」


風を引き起こし、サルたちを上空に巻き上げた。


「すぅぅぅぅっ……」


光一が息を吸い込み、サルたちに狙い定め銃を連射。

巻き上げられなかったサルたちが、光一に襲いかかろうと……


「はっ!」


したが、宇佐美に阻まれる。


一匹残らず撃ち落とした光一が、カートリッジを交換。

その次の瞬間……


「ごあああああああっ!」


先ほどクエイクにかかっていたゴリラが、光一と宇佐美に襲いかかる。

腕1本を振りおろすと同時に、光一が右足を撃ち、宇佐美が左足を鎌鼬で斬るを同時に行い、ゴリラは膝をつく。


「やあっ!」


その次に、宇佐美が飛びあがり、足に風を纏わせゴリラの首を蹴る。

そのゴリラは光一向けて倒れ、光一は右手を炭素硬化し、人差し指をのこして手を握りしめると……


ドスっ!


『ごぁあああああっ!!』


ゴリラの眉間に突き刺し、そのまま頭をえぐり出しゴリラは絶命。

サルたちが逃げ出そうとしたのを、クマを仕留めたクエイクが阻み、結果全部処分


「ちょっと、可愛そうな気が……」

「仕方ないだろ。合成獣が野放しになってるなんて、お世辞にも良い話にならない」

「……そう、よね」


宇佐美はどこか、やるせない顔で合成獣キメラ達の死骸を眺めていた。


「初シンクロの戦闘、上出来だった」

「光一の指示があったからよ」

「それじゃ、解除するぞ」

「うん」

「「リリース」」


シンクロ。

ブレイカーは感情を経由して人の脳にリンクし、超人的な力を齎す演算装置。

それを利用し、機械的な以心伝心を可能にする機能。


それ故に、慣れない間は考えた事が駄々漏れになるリスクがある。


「……リスクの方を先に言って欲しかった」

「それは悪かったよ。なんか理不尽な気もするけど」




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