第50話
「くんくん」
「わかるか、秀頼?」
「くしゅんっ! ……きゅ~ん」
「こう埃っぽいと、無理もないか。仕方ない」
前衛に光一、しんがりに下級系譜を据えて、一同は洋館を調査。
しかし……
「……ありませんね」
結局、日記以外は地主の言う通りで、最新鋭設備のさの字も出ないありさま。
それどころか合成獣の影も形もなく、住処としている形跡もなく。
隠し部屋も疑ったが、何かを動かした痕跡もなし。
「これで、全部ですか?」
「はい」
「うーん……そうだ。素人考えだけど、お決まりの地下室とかはないんですか? ワインとか、そう言うのを貯蔵するための」
「いえ、そのような話はありません。お恥ずかしい話ですが、ワシの血筋は下戸でして」
「そうですか……」
「いや、良い着眼点だ宇佐美。ないなら造ればいい。契約者と繋がりがあったんなら、穴掘りの能力を持つ奴位いてもおかしくない……が、ちっとばっかし気付くの遅かったか」
「え?」
『ガァアアッ!!』
『Interception start!』
そっと外を見ると、虎の様な縞模様のクマがクエイクに襲いかかっている光景。
その周囲を見ると、どう見ても獰猛な肉食獣としか思えない合成獣達が、屋敷を取り囲もうとしていた
「え……? え……?」
「もしかして、囲まれてる?」
それを見た地主が腰を抜かし、宇佐美もかすかに震え始める。
「……罠だったか」
「そんな……おい!」
「ひっ!」
「待て」
掴みかかろうとした契約者を、光一が制止する。
「状況がおかし過ぎる。一般人が策とは言え、合成獣に囲まれて平然と出来る訳がないだろ」
「しっ、しかし……」
「どの道今は保留だ。今はとにかく、あいつら蹴散らして外を調べないと」
「外って……久遠さん、まさか」
「なあに、すぐ終わる」
バキィッ!
『ギャアっ!』
クエイクのパンチが顔面に突き刺さり、牙が抜け血へどを吐きながらクマが倒れ伏す。
運搬用に開発されたロボットだけに、その分馬力はけた外れでヘタな重機よりもパワーがある。
『『『ぎぃいぃぃぃっ!!』』』
『!?』
クマが倒された瞬間、一斉に4本腕のサルの集団がクエイクめがけて襲いかかり、四肢や胴体、顔にしがみつき始める。
『ゴァアアアアッ!!』
ゴギイッ!
『!』
クエイクの視界が遮られ、その次の瞬間4本の腕のゴリラがクエイクの胴体に岩で殴り、一歩退かせる。
サルを振り払おうとしたが、ゴリラが2本の腕で羽交い絞めにし、更にもう2本の腕でクエイクの腕を掴み、脇にかかえこむ形で抑える。
『ヴヴヴヴァアアアアっ!!』
先ほどのクマがよろよろと起き上がり、近くにあった木を引っこ抜き……
ガシャアアッ!!
クエイクの頭上に振り下ろした。
『……5% of injury rates』
『ゴァアアアアッ!』
『Counterattack start!』
クエイクが両方の腕を力任せに振りほどき、振り向いてゴリラの顔面を掴む。
そして腹を殴る様に突きあげ、ゴリラを持ちあげ……
『『っ!!?』』
クマに向けて投げ飛ばした。
その次にまとわりつくサルは、力任せに振りほどき、あるいは引き剥がす。
『ゴァアアアアッ!』
『ヴヴヴヴヴヴッ!』
それが終えた時、クマとゴリラが一斉に突進。
クエイクが腰を落とし、それを受け止める。
ギィッ!
『『『ギッ!』』』
「宇佐美、お前は下がってろよ」
「いや。大体光一だって、こうなる事位予測してあの機能教えたんでしょ?」
「違う。命綱のつもりで教えたんだ……が、まあ良いか。合成獣相手なら良い練習になるのは確か。言っとくけど、情けはかけるなよ? 喰うか食われるか、で考えて相手しないと、死ぬぞ」
「……自信ないけど、大丈夫だと思う」
「無理だと判断したら下がらせるからな?」
そこで館の扉が開き、2人が姿を現す。
黒いジャケットにスラックス、そして両手には自動拳銃を持った光一。
そして短パンにレギンス、そしてTシャツの上にベストを羽織り、手にはオープンフィンガーグローブをつけた、宇佐美。
『『『ぐるるるる』』』
周囲が獲物発見と言わんばかりに、唸り声を上げ始めた。
「で、覚悟は?」
「大丈夫……今度こそ、妙な事にならないと思う」
「思うかよ……まあいい、行くぞ。せーの」
「「シンクロ!」」
光一と宇佐美がキーワードを紡ぐ。
その次の瞬間、光の糸が伸びて2つのブレイカーをつなぎ、消えた。
「ききーっ!!」
光一達を獲物と見定め、サルの群れが一斉に襲い掛かる。
まずは……
「やあっ!」
宇佐美が一体目に蹴りをブチ込み、ふっとばす。
その後ろに控えていたサルが、飛びかかろうと……
ドンっ!
「ぎぃっ!」
した所を、光一の銃弾が命中。
それに続く様に宇佐美が駆けだし……
「やあっ!」
風を引き起こし、サルたちを上空に巻き上げた。
「すぅぅぅぅっ……」
光一が息を吸い込み、サルたちに狙い定め銃を連射。
巻き上げられなかったサルたちが、光一に襲いかかろうと……
「はっ!」
したが、宇佐美に阻まれる。
一匹残らず撃ち落とした光一が、カートリッジを交換。
その次の瞬間……
「ごあああああああっ!」
先ほどクエイクにかかっていたゴリラが、光一と宇佐美に襲いかかる。
腕1本を振りおろすと同時に、光一が右足を撃ち、宇佐美が左足を鎌鼬で斬るを同時に行い、ゴリラは膝をつく。
「やあっ!」
その次に、宇佐美が飛びあがり、足に風を纏わせゴリラの首を蹴る。
そのゴリラは光一向けて倒れ、光一は右手を炭素硬化し、人差し指をのこして手を握りしめると……
ドスっ!
『ごぁあああああっ!!』
ゴリラの眉間に突き刺し、そのまま頭をえぐり出しゴリラは絶命。
サルたちが逃げ出そうとしたのを、クマを仕留めたクエイクが阻み、結果全部処分
「ちょっと、可愛そうな気が……」
「仕方ないだろ。合成獣が野放しになってるなんて、お世辞にも良い話にならない」
「……そう、よね」
宇佐美はどこか、やるせない顔で合成獣達の死骸を眺めていた。
「初シンクロの戦闘、上出来だった」
「光一の指示があったからよ」
「それじゃ、解除するぞ」
「うん」
「「リリース」」
シンクロ。
ブレイカーは感情を経由して人の脳にリンクし、超人的な力を齎す演算装置。
それを利用し、機械的な以心伝心を可能にする機能。
それ故に、慣れない間は考えた事が駄々漏れになるリスクがある。
「……リスクの方を先に言って欲しかった」
「それは悪かったよ。なんか理不尽な気もするけど」




