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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第48話

「ふぅっ……」


これは行方不明事件ではなく、生物災害バイオハザード

故に姿を消した人たちは恐らく、合成獣キメラに……


処分した合成獣キメラの死骸を運び出した上で、そう住人に説明し謝罪。

それから避難先を手配し、住人達に避難を促し終えた光一は、駐在する契約者達の宿舎にて休息をとる事に。


「お疲れ」


先にそこへと案内された宇佐美は、光一にジュースの差し入れを。


「……(すりすり)」


足元では、秀頼がすり寄り始める。


「すまないな、いきなりこんな」

「仕事見せてって言ったのあたしだよ? 平気平気」

「……なら良いけど」


強がりだとわかるが、水を差すのも悪いな。

そう思い、光一はそれ以上は何も言わない。


「この後、どうするの?」

「住人の避難が終わったら、行方不明者の最後の目撃情報と照らし合わせて、あの合成獣キメラの行動範囲の予測。その範囲を調査、かな?」

「そっか……一体どうしてこんな?」

「それをこれから調査するんだ。ただし他にあの大蛇や、夜行性の合成獣キメラが居ないとも限らないから、明るくなってからの調査になるけどね」


本来人とは知恵を武器にし獣を狩り、文明を築き上げてきた存在。

契約者といえど人であり、獣の常識を超えた合成獣キメラ相手に不利な状況で対峙すれば、勝算は低い。


「久遠さん。行方不明者の目撃情報、纏め終わりました」

「ああっ、じゃあ見せて。避難はどう?」

「入院患者、老人等の移送に手間取っておりますが、6割がた」

「わかった」


光一は地図を受け取り、それを開く。


「……成程、この山を取り囲むように、か。ここって確か」

「ええ、近々ビオトープの設営が計画されていた山です」

「……確か、この話を持ちかけたのはこの山の地主で、交渉自体も2つ返事で了承されてた筈。その地主はまだ残ってるか? 少し話がしたい」

「では、探してきます」


契約者社会であるこの時代では、契約者が関わっていると言うだけで世間からの注目を浴び、莫大な金が動く。

その頂点の大罪、あるいは美徳ともなると、その成果で得られる利益は並大抵の物ではなく、提携したがる企業も多く存在する

それ故に契約者の活動も、援助できる者もある程度限られていた。


ビオトープを始めとする開発施設を設営する為の土地は、資産家からの提供のみ。

そして商売提携先、あるいは契約者のみで活動する場合は、有限会社でなければならない。

更に言えばその技術の使用も制限されており、大罪や美徳程の大規模な組織ならナワバリ限定だったり、小規模なら組織内限定。


基本的に契約者の活動に、商売理由での株式会社の関与は禁止されている。

これは世のバランスを崩さないための配慮であり、世を動す存在の契約者が株市場に絡めばそれだけで混乱に陥り、最悪市場が成り立たなくなる故である


「色々と面倒ですがね」

「文句言うな。強い力を持てば、その分の責任は生じる。マナーの悪さを注意されたって理由で、その店の従業員皆殺しにした奴と同類になりたいか?」

「……流石にそれは」



その少し後


「このような状況での急な呼び出し、申し訳ありません」


所は、宿舎の応接室


光一が相対しているのは、土地の有力者であり問題の山の地主でもある、小太りの口髭を蓄えた宙年位の男性。

早い話が、まるで絵にかいたような裕福そうなおじさん、と言うイメージな人物である。


「上級系譜の方がどういったご用件で? 討伐の為の融資ならば、避難先でもそれなりの金額を」

「いえ、そちらではありません。例の合成獣キメラですが、ビオトープ建設予定となっている山をナワバリとし、活動していたようでして」

「え……? そんなっ!? まっ、待ってください。ワシにそんな事をして得をする理由がありません! どうか調査をお願いします、ワシは無実です!!」


一瞬で顔を蒼白にした中年男性は、必死の形相で光一に弁解。

契約者を、それもその頂点を敵にする事は、一般人にとってこれ以上の恐怖がない故に。


「勘違いしないでください。ただ契約者を動かせるほどの人物で、貴方に恨みを持つ者。あるいはこの土地で何かがあったかに、心当たりはないかを聞きたいだけで」

「そうでしたか……すみません、早とちりをしてしまって」

「いえ、構いません。こちらも聞き方が悪かったですので……それで」

「そうですね……」


男性は顎に手を当て、思い返し始める。

そしてふと……


「……関係あるかどうかはわかりません。ですが」

「構いません。今はどんな情報でも欲しい位でして」

「あの山には、ワシの祖先が別荘として使っていた洋館があるのです」

「洋館?」

「はい。かつてワシの兄が、病気の姪の療養のためそこで生活していたのですが……2年前に姪共々に失踪してしまい」

「……その洋館がどこにあるか、教えていただけますか?」


洋館の場所を聞き、地図にメモをすると……


「ありがとうございました、此度の礼は後ほど。避難先へは、こちらの方でお送りさせていただきます」

「……あの」

「はい。なにか?」

「申し訳ありませんが、洋館にはワシも同行させてください」

「それは許可できません。何があるかがわからない以上、一般の方を同行させる訳には」

「お願いします」


テーブルに手をつき、まるでこすりつけるように頭を下げる男性に……


「……行動はこちらに従ってください。決して勝手な行動をとらないよう」

「……ありがとうございます」

「おい、客室に案内して差し上げろ」

「了解です。さ、こちらへどうぞ」


脇に控えていた部下に指示と同時に目配せをし、その部下が頷く。

男性が契約者に案内され、部屋を出て行くと……。


「……俺だ。ここ数年、この付近で何かを搬送していた情報はないかどうか、確認を取れ」


携帯を取り出し、部下に指示。


「……ねえ光一、まさか疑ってるの?」

「……あのおっさんも、資産家ってだけで可能性は十分ある」

「可能性?」

合成獣キメラの生体培養設備は、造るだけでも莫大な金が動く。あのおっさんの蓄えなら十分可能だが……どの道、調査して証拠を掴まない事には話にならない」

「調査にはあたしも行くからね」

「……わかった。それとブレイカーのある機能について説明するから、そこ座って」

「? うん、わかった」



次の日。


「よく眠れたか? それじゃ、行くぞ」


避難終了し、がらんとした周辺。


そんな中で、現地統括する下級系譜とその選りすぐりの部下2名。

そして動向を希望した山の地主と……。


「――どうしたんです久遠さん、その頬?」

「……不慮の事故だ、気にするな」

「きゅ~ん(ぺろぺろ)」

「――ふんっ!」


右の頬に真っ赤な紅葉を咲かせた光一と、その頬をなめる秀頼

こちらは顔を赤くして光一からそっぽを向く宇佐美。

と言う面々で、一路問題の洋館を目指す事に。


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