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大罪と美徳  作者: 秋雨
第3章 勇気の一歩、試練の始まり
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第47話

所は埠頭。

憤怒のナワバリ限定とはいえ、歩美たちもアイドル活動再開。


その一歩として、まずは撮影。


「もぐもぐ……」

「ナツメさ~ん。サボってないで、きちんとごえいしてください~」

「護衛してるよ~、京の姉さん(笑)。たこ焼き食べながら」

「もうっ、久遠さんが居ないからって」

「仕事はしてるんだからいーじゃん、歩美ちゃん。口うるさい久遠の兄さんが居ないんだから、少しくらい……」


『『『うぅ~っ!』』』


ふと唸り声が聞こえ、ナツメに京、歩美はふと視線を向ける。

その先には、3匹の犬を連れたさやかが。


「犬? なんでこんなところに?」

「光一君から預かったの。“ナツメは絶対サボるから、そのお目付けに”って」

「お目付けにって……どう見ても柴犬ですよね?」


歩美の言う通り、さやかの足もとに居るのは成人した大きさの柴犬が3匹。


「うん。信長、秀吉、家康って言うんだって」

「なんか納得いかない! ワンちゃん3匹をこのナツメさんのお目付け役にするなんて!」

「そうやっておこらせるためかもしれませんよー?」

「成程、だったら別に……」


『『『う~っ! わんっ! わんっ!』』』


「えっ? ちょっ、何これ!?」

「憤怒のビオトープで開発した合成獣キメラ、“ソルジャードッグ”だってさ。柴犬ベースにしてるけど、集団だったら下級系譜1人対処できるって」

「それ早く言ってー! ぎゃーーーっ!!」



――所変わって。


「きゅ~ん(ぺろぺろ)」

「あははっ、くすぐったいよ秀頼」

「可愛いね~。ホントに合成獣キメラなのこの子?」

「ああっ。柴犬ベースのソルジャードッグ第2世代、秀頼。親は秀吉って言うんだけど」

「その子メスよね? なのに秀頼って……」


憤怒で開発された自律ロボット、クエイク。

鉄の塊を繋げ人型にした様なフォルムのロボットは、光一と宇佐美を背に乗せ空を飛ぶ。


「最初は怖かったけど、なれると良い物ね。クエイクに乗って空を飛ぶの」

「ウチにテレポート使えるの居ないからって、開発されたのがクエイクだからね。それだけじゃ勿体ないって事で、色々と装備させてるけど」

「あの時のロケットパンチとか、レーザーとか?」

「あれは憤怒で造った兵器の試作品。あの後欠陥が発覚して、もう一度研究のし直しになった。今は別の装備になってるよ」

「へえっ」


男の子が好きそうだな、と思いつつどんな装備なのか。

と、内心興味を持つ宇佐美だった。


「ところで光一、これから行くところはどんな所?」

「憤怒のナワバリでも、割と田舎。そこで最近行方不明者が相次いでるって」

「行方不明? 契約者のナワバリで?」

「それ位なら普通下級契約者でも解決できるけど、何かがあったんだろ。基本的に上級系譜が出張るのは、下級系譜じゃ手に負えない案件のみだからね」


ナワバリ統括と言っても、遠方においては下級系譜を派遣し、彼らを起点にナワバリ統括を行っている。

彼らの報告を受け、方針と対策を立てるのが光一やユウの役目。

ただ、下級系譜に対処できない様な事態が起こった場合は上級系譜が、内容によっては頂点が直々に出向く事がある。


余談だが、極秘調査で現地を統括する契約者が乱暴行為を行った事が発覚した場合、ユウ直々に制裁を下す


「そう言えば、系譜のランクってどう違うの? 上級と下級があるけど」

「そうだな……上級は戦術兵器クラス、下級は戦闘機とか戦車とかの主力兵器クラスってところかな? もちろん単純な破壊力で、の話だけど」

「戦闘機に戦車って……」

「ナワバリ奪還戦じゃ、纏めてユウにあっさり倒されてたから実感はないだろうけど、本来はあれ1人でそれ位の働きは出来るんだよ」

「…………(すりすり)」


光一の首筋に顔をこすりつける秀頼にぽわーっとしつつ、宇佐美は改めて契約者のすごさを思い知る。


「ホント、すごい世界ね。早くあたしも、自分だけの力欲しいな」

「そうなったら管理には気をつけろよ? 美徳程のオリジナルの運用法なんて、欲しがる奴はいくらでもいるんだから」

「? 運用法まで、価値があるの?」

「当然。契約者にとっては新しい力の足がかりに。一般人でも、俺達の様な属性系の能力のノウハウなら、エネルギー運用の参考になるからね。下級系譜の能力運用法でも、100億の値がつく」

「へえっ、100お……く……? 100億!? 万じゃなくて?」

「億。さっきも言ったけど、下級系譜は主力兵器クラスの力を出せるんだから」

「……桁が違うわね」


じゃあ自分だと、一体どれくらいの価値があるのだろうか?

考える事も怖くなってる宇佐美だった。


「けど能力のノウハウは、契約者にとっての生命線。ヘタに暴こうとすると攻撃とみなされるから、間違っても聞かない様に」

「うっ……うん、わかった。じゃあ光一も、ユウや月の能力のノウハウは知らないの?」

「知らないし、俺も教えてない。聞いても絶対に教えないし、教えてもらえない」

「そっか。それに考えてみたら、使える使えないは別にしても、ユウ達ほどの能力を劣化させたとはいえ、悪用されたらとんでもない事になるからね」

「そう言う事。それに取引にしたって、扱う金額が金額だけにニセモノも多く出回ってるし、真偽なんて確認しようがないから逆に商売として成り立たないんだよ。宇佐美も横着しないで、自分で考えて自分だけの能力を創りなさい」

「はーい」



――時は過ぎ、夕暮れになり到着。

周囲は都会から離れた場所らしい、田んぼや森が目につく田舎らしい場所。


「わあっ……」

「ん? 珍しい?」

「うん。あたしって都会育ちだから、実はこういう所初めて」

「そっか……よう、出迎えご苦労さん」

「お久しぶりです、久遠さん」

「アイサツより、現状報告。それと……」

「宇佐美ちゃん、サインお願いできるかな?」

「ファンなんです。握手してください」

「できれば、記念撮影を……」

「後にしろ!」


クエイクが指定位置に着地するや否や、現地担当の下級系譜が部下を引き連れ出迎え。

部下の数名が荷物を受け取り、下級系譜が光一に事の報告をしている最中……。


「……こういう所見ると、光一ってやっぱり憤怒の中でも偉いって言うのわかるわね」

「う~っ……」


抱かれるのが嫌なのか、唸ってる秀頼を抱えつつ宇佐美は光一の様子を見て、面喰っていた。

普段は何気なく会話できる間柄とはなっていても、やはりこういう時では違うと実感しつつ、田舎らしい森に面した路を――。


ガササっ!


「?」


歩いている間に、宇佐美は何か違和感を感じた。

光一や、そのほかの契約者も感じたのか、それぞれ周囲を警戒。


「……人間の気配じゃないな。この辺り、クマとか出るのか?」

「まさか。この辺りでクマなんて出た事はありません」

「だったら何が……!」


光一が何かを察知したのか、自動拳銃を取り出し林に向けて撃ちだす。


「うっ、うわあああっ!」

「なっ! しまった!」

「くっ、久遠さん! 助け、助けえぇああぁぁああああっ!!」


その刹那、森から人の腕くらいの太さの舌の様な物が伸び、契約者を1人捕まえ森に引き込んでしまう。


「くそっ、待てコラ!!」

「久遠さん!」

「お前らはそこで待ってろ! 宇佐美のガードを頼む!!」


光一は指示を出すと急いで森に駆け込み、その後を追っていく。


「……何、今の?」


それを茫然と、宇佐美は見送るしかなかった。



ビチャビチャビチャ……。


「……くっそおっ!」


目の前の惨劇に、食いしばり拳を握りしめる光一。


「――行方不明事件じゃないって事か? だが、どうなってる? なんで今まで、こんな危ないのが誰にも目撃されてないんだ?」


ガサっ……!


「っ!」


リボルバーを構え、光一は振り向く。

その先には……


「……?」


何もいなかった。


「……ああっ、そう言う事か」


ヒュっ! パシッ!


「……こりゃ行方不明事件じゃない。生物災害バイオハザードだ」


自分に突如襲いかかる人の腕くらいはある舌を、光一は炭素硬化した腕でキャッチ。

リボルバーをしまい、もう片方で……


『ぎいいいいいぃいぃぃいいいっ!』


その舌に指を突き立て、切り離すす。


「成程。カメレオンをベースに、蛇を組み合わせて造った合成獣キメラか」


まるで空間に溶けだす様に、ドラム缶くらいはありそうな胴の太さの。

ただし表面が蛇の鱗ではなく、カメレオンのような黄緑色の皮の大蛇が姿を現した。


「だがおかしいな。この周辺にビオトープはないし、戦争もなかった筈……調査するか」


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